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ビクセン SDレデューサーHDキットのレビューと星像

ビクセンSDフラットナーHDとレデューサーHDは、2017年に発売開始された屈折望遠鏡用の補正レンズです。 同社のSD81S、SD103S、SD115S用として開発されましたが、これらより古い旧製品にも使用することが可能です。

今回は、ビクセンSD103Sの前モデル「ビクセンED103S」にSDフラットナーHDとレデューサーHDを取り付け、 フィールドで結像性能や周辺減光について調べてみました。

SDフラットナーHDとレデューサーHDについて

フラットナーレンズは、その名の通り、望遠鏡が作り出した像を平坦化する補正レンズです。 ビクセンED103SにSDフラットナーHDを使用すると、 天体望遠鏡の焦点距離はほとんど変わりませんが(795mm→811mm)、 像面が平らになるので、周辺星像が改善されます。

レデューサーレンズは、焦点距離を短縮し、F値を明るくするための補正レンズです。 F値が明るくなると、短い露光時間でも淡い天体を写し出せるようになります。 ED103SにレデューサーHDを使用すると、焦点距離は795mm→624mmになり、F値は7.7→6.1になります。 その他の鏡筒については、以下の通りです。

鏡筒名 焦点距離/F値 SDフラットナーHD使用時 レデューサーHD使用時
SD81S 625mm / F7.7 644mm / F7.9 496mm / F6.1
SD103S 795mm / F7.7 811mm / F7.9 624mm / F6.1
SD115S 890mm / F7.7 908mm / F7.9 699mm / F6.1
ED103S 795mm / F7.7 811mm / F7.9 624mm / F6.1

なお、ビクセンのレデューサーHDは、SDフラットナーHDと共に使用することができるように光学設計されています。 レデューサーHDを使用する時は、SDフラットナーHDの後ろにレデューサーHDをねじ込みで取り付けます。

SDレデューサーHDキット

SDフラットナーHDは、単体でも購入できますが、レデューサーHDも使用する予定なら、 2種の補正レンズと各種アダプターがセットになった「SDレデューサーHDキット」がお勧めです。

「SDレデューサーHDキット」には、上写真の通り、 SDフラットナーHD、レデューサーHD、スペーサーリングSD81、EXチューブ66が付属しています。

使用する鏡筒によってパーツの組み合わせが若干変わってくる点がややこしいですが、 付属のチャートを見ながら接続すれば、すぐに慣れるでしょう。

SDフラットナーHDとレデューサーHDの外観

補正レンズ本体と接続パーツでは、チューブ外側の手触りが若干異なるように感じますが、いずれも丁寧につや消しされた上質な塗装が施されています。 各レンズの側面には、商品名と製造番号が刻印され、高級感がある補正レンズです。

補正レンズのレンズ面には、ビクセンVSD100F3.8やコレクターPHで定評のある「ASコーティング」が全面に施されています。 ASコーティングは、1面あたりの透過率99.9%以上を謳う高性能コーティングで、 実際にレンズ面に光を当ててみてもほとんど反射が感じられず、透過率の高さがうかがえます。

SDフラットナーHD

SDフラットナーHDとレデューサーHDの先端には、52ミリのネジが切られており、市販の52ミリのフィルターをねじ込めるようになっています。 全体的に、丁寧に製造された高品質な補正レンズという印象を受けました。

ビクセンED103Sについて

今回テストに使用したビクセンED103Sは、2004年に発売開始された天体望遠鏡です。 天体撮影や天体観測用として人気の高かった望遠鏡で、 2017年6月に後継機、SD103Sが発売開始されました。

ビクセンED103Sの撮影風景

ED103SとSD103Sの光学設計は同じで、どちらも対物レンズに、特殊低分散レンズ(S-FPL53)が用いられた、 2枚玉アポクロマート屈折望遠鏡ですが、SD103Sでは、ドローチューブ内の絞りの設計が変更されました。

ドロチューブ内の設計変更のため、ED103SにSDフラットナーHDを用いると、 35ミリフルサイズ画角では、周辺減光が大きく発生してしまうとメーカーはアナウンスしています。 その対策として、メーカーではED103Sの絞りを変更する「デジタル対応SD改造サービス」を行っています。

今回のテストでは、デジタル対応SD改造後のED103S望遠鏡を用いました。 デジタル対応SD改造サービスには、\7,000(消費税別・送料別)かかりますが、 SDフラットナーHDを使ってフルサイズカメラで撮影するなら、是非改造した方がよいと思います。

SDフラットナーHDの星像と周辺減光

ビクセンED103SにSDフラットナーHDを取り付け、 天体撮影用に改造されたフルサイズデジタル一眼レフカメラ「Astro6D(キヤノンEOS6D改造モデル)」を使って、 ふたご座の散開星団M35を撮影しました。

下が、SDフラットナーHDを用いて撮影した写真の各部拡大画像です。 画像をクリックすると、ピクセル等倍画像と全体写真が開きます。

SDフラットナーHDの星像

画角中心部はもちろん、フルサイズの写野周辺部でも星像は丸く、色ずれも感じられません。

続いて、周辺減光の様子です。下は、同じ組み合わせで撮影したフラットフレーム画像です。

SDフラットナーHDの周辺減光

フラットフレーム画像を見ると、35ミリフルサイズのほぼ全面にわたって、光量は豊富です。 下は、上のフラットフレーム画像をステライメージ8で開き、明るさの傾斜を視覚化したグラフです。

SDフラットナーHDの周辺減光

ステライメージ8の解析画像から見ても、最四隅では若干光量は落ちるものの、 全体にわたってフラットで、周辺減光は少ないことが分かります。 次に、フラットフレーム画像を、レベル補正コマンドを使って約5倍に圧縮強調しました。

SDフラットナーHDの周辺減光強調後

ここまで強調すると、周辺部が中央部に比べて暗くなっている様子がよくわかります。 しかし、画面全体として減光はなだらかで、フラットフレームや周辺減光補正コマンドで補正はしやすいでしょう。 センサーサイズが小さなAPS-Cサイズのデジカメなら、フラット補正無しでも仕上げることができそうです。

レデューサーHDの星像と周辺減光

ビクセンED103SにSDフラットナーHDとレデューサーHDを取り付け、 天体撮影用に改造されたフルサイズデジタル一眼レフカメラ「Astro6D(キヤノンEOS6D改造モデル)」を使って、 たて座の散開星団M11を撮影しました。

下が、レデューサーHDを用いて撮影した写真の各部拡大画像です。 画像をクリックすると、ピクセル等倍画像と全体写真が開きます。

レデューサーHDの星像

画角中心部はもちろん、フルサイズの写野周辺部でも、星像はほぼ円形を保っています。 最周辺部で若干色ずれが感じられますが、その量は僅かです。

続いて周辺減光の様子です。 下は、同じ組み合わせで撮影したフラットフレーム画像(未処理)です。

レデューサーHDの周辺減光

フラットフレーム画像を見ると、中央部に比べて、周辺部はやや暗くなっているのがわかります。 下は、上のフラットフレーム画像をステライメージ8で開き、明るさの傾斜を視覚化したグラフです。

レデューサーHDの減光の傾き

グラフを見ると、四隅に近づくにつれ、背景の明るさがなだらかに減少しているのが分かります。 次に、フラットフレーム画像を、レベル補正コマンドを使って約5倍に圧縮強調しました。

レデューサーHDの減光の強調画像

強調すると、周辺部が中央部に比べて暗くなっている様子がよくわかります。 中央付近の明るさは平坦ですが、APS-Cサイズのセンサーの外側くらいから、徐々に減光しているようです。

SDフラットナーHDのみの場合と比べると、レデューサーHD使用時の周辺減光は多くなりますが、 勾配はそれほど急ではなく、なだらかに減光するイメージです。

SDフラットナーHDとレデューサーHDの印象

今回、ビクセンSDフラットナーHDとレデューサーHDを実際に天体撮影に使用した印象を、 以下に箇条書きでまとめました。

従来のレデューサー(レデューサーED(F7.7用))に比べ、結像性能は段違いで、周辺減光も少ない。 外観も高級感があり、鏡筒本体よりも造りがしっかりしている印象を受けた。

シャープな星像を結ぶので、光学性能を最大限に生かすには、正確なピント合わせが必要だと感じた。 標準付属のピントノブではドロチューブが大きく動いてしまうため、 減速装置が付いた「デュアルスピードフォーカサー」が欲しいと感じた。

レデューサーHD使用時、カメラのスケアリングがずれていると、左右で星像の伸び方や色ずれが異なるケースがあった。 重いカメラを取り付けるときは、ビクセンFL55SS用のK-ASTEC製TB-80/65ASのような、 補正レンズ部分を支持するバンドがあれば安心だろう。

SDフラットナーHD使用時は、周辺減光が非常に少なく、フラット補正が合いやすいと感じた。 ミラーボックスのケラレが発生しないミラーレス一眼なら、画像処理ソフトの周辺減光コマンドで補正できそうだ。

レデューサーHDは、他のレデューサーと比べて、焦点距離を短くする力が弱く(0.79倍)、F値はそれほど明るくならない。 そのため、露光時間はそれほど短縮できないが、星像は良好で周辺減光も少なく感じた。 最近のデジカメは高感度特性が優れているので、明るさよりも星像の良い補正レンズの方が、 画像処理時のストレスが少ないように感じた。

SDフラットナーHDとレデューサーHDの作例

ビクセンED103Sに、SDフラットナーHD、レデューサーHDを取り付けて撮影した作例写真です。 画像をクリックすると、ギャラリーの大きな写真が表示されます。

下は、SDフラットナーHDを取り付けて撮影した、しし座の三銀河です。 カメラは、APS-Hフォーマットセンサーの冷却CCDカメラ「G3-16200」を使いました。

SDフラットナーHDの作例

焦点距離が800ミリ以上あるので、系外銀河の暗黒帯の様子も捉えることができました。 シャープな星像はもちろん、屈折望遠鏡らしいコントラストの良さが魅力です。

レデューサーHDの作例は、夏の天体の中でも人気の高い、いて座のM8とM20の写真です。

レデューサーHDの作例

横構図にすると、M8とM20がよいバランスで収まりました。レデューサーHDは、主要な散光星雲の撮影に向いています。 この組み合わせで、北アメリカ星雲やオリオン大星雲も狙ってみたいと思います。

まとめ

ビクセン製の補正レンズの性能は、以前は、高橋製作所製に比べて今一歩という印象でしたが、 2015年8月にR200SS用の補正レンズ「コレクターPH」が発売されて一変しました。 コレクターPHは、天体写真ファンから絶賛され、その後に発売されたエクステンダーPHも高い評価を得ています。

SDフラットナーHD、レデューサーHDも、コレクターPHの流れをくむ補正レンズで、 今回、実際に使用してみて、改めてその結像性能の良さを実感しました。 以前の補正レンズに満足できなかったベテランユーザーでも、納得できる仕上がりだと思います。

元々はSDシリーズ用の補正レンズですが、旧製品にも使用できる汎用性の高さも魅力です。 接続アダプターを工夫すれば、他社製の2枚玉屈折望遠鏡にも使用できるかもしれません。

個人的にレデューサーHDの35ミリフルサイズの星像が気に入ったので、 ワンオフのアダプターを作り、タカハシFS-152に取り付けて試してみたいと思います。

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