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タカハシMT-200の使用感

タカハシ MT-200は、口径20センチのニュートン式反射望遠鏡です。 Mewlon-250CRSを手に入れるまでは、冷却CCDカメラと組み合わせて、系外銀河の撮影に使用していました。 現在は、自宅での天体観測や惑星観望用の望遠鏡として、愛用しています。

古い鏡筒ですが、純反射光学系の像は鋭く、今でも第一線で十分活躍できる性能を有した鏡筒です。 往年時代の高橋製作所が製造した、貴重な天体望遠鏡と思います。

反射望遠鏡タカハシMT-200

タカハシMT-200の概要

タカハシMT-200は、高橋製作所が製造していた反射望遠鏡シリーズ(MTシリーズ)の最大口径機として販売されていました。 MTシリーズの中で、最初に発表されたのが、タカハシMT-100です。 MT-100は、口径10センチのニュートン式反射望遠鏡で、1982年に発売開始されました。

翌年、MT-130、MT-160が順次発売開始され、最後にMT-200望遠鏡が登場しました。 当時、MTシリーズの鏡筒は、この写真のような薄い緑色(若竹色)をしていました。 発売後数年が経った後、現在のタカハシ望遠鏡の鏡筒色(クリーム色)に変更されたようです。 この若竹色は好みが分かれるところですが、個人的にはドラム缶の色のように感じる時があります。

MT-200の発売開始後、更に口径の大きな、MT-250、MT-300の受注生産がはじまりました。 MT-300は、現在でも受注で生産されているようですが、非常に高価のようです。 MTシリーズは、発売開始後もスパイダーの構造や塗装色などの小改良が加えられ、 製造された年代によって、若干仕様が異なっています。

MTシリーズの望遠鏡には、周辺像を改善するコレクターレンズが標準付属されていて、 F値を明るくするレデューサーレンズもオプションで用意されていました。 文字通り、眼視から撮影までマルチに使えるニュートン反射望遠鏡ということで、製造されていた当時、人気のあったMTシリーズです。 中でも持ち運びしやすい大きさのMT-160は、ベストセラー機の一つで、私も以前所有していました。

ニュートン式反射のシャープな星像

ニュートン式反射望遠鏡は、2枚の鏡を組み合わせて像を作り出します。 光の屈折が生じないため、色収差が発生せず、中心像が極めてシャープな光学系です。 この点は、どれほど高価な屈折望遠鏡よりも優れています。 実際に覗いてみても、色づきがないクリアな像が楽しめます。

ニュートン式反射天体望遠鏡の構造図

理論的には中心は無収差のニュートン式反射ですが、実際は、使用されているミラーの面精度に左右されます。 特に主鏡に使用されている放物面鏡は加工が難しく、この鏡の善し悪しが、望遠鏡の性能を決定づけます。

許容できる鏡面誤差の値としては、レーリー・リミットが有名です。 レイリーは、鏡面の精度が、λ/4以内(λは光の波長)であれば、理論的に十分な性能が得られると提唱しました。 現在でも、放物面鏡の製作誤差がλ/8以内(往復で誤差が2倍になるため)であれば、 理論上の分解能が得られるという目安になっています。

高橋製作所のMTシリーズは、鏡面精度の点では昔から定評がある望遠鏡です。 昔、天文ガイド誌上にて、お宝望遠鏡鑑定という連載がありましたが、MT-200はしばしばお宝に選ばれていました。

私が使用しているMT-200のミラーも、ロンキースクリーンで確認したところ、精度がよいと感じています。 また、ミラーを主鏡セルから外してみると、ミラー自体も分厚く、 最近のシンミラー(薄いミラー)とは違って、十分な重さが感じられるミラーになっています。

デジタル撮影

MT200の写野とM81銀河 シャープで色収差の発生がない反射望遠鏡は、色収差にシビアなデジタル天体写真撮影に適しています。 そこで、このタカハシMT-200に、冷却CCDカメラやデジタルカメラを取り付けて、主に系外銀河の撮影に愛用していました。

タカハシMT-200のF値は「6」です。 MTシリーズには、オプションで補正レンズ(レデューサーレンズとコレクターレンズ)が用意されていました。 星雲星団撮影用のレデューサーレンズを使用すると、F値が4.8まで明るくなり、周辺像も若干改善されるため、 撮影用に揃えておきたかったところですが、既に製造が終了しており、手に入れることができませんでした。 そこで、補正レンズなしで、冷却CCDカメラを取り付けて撮影を楽しんでいました。

MT200の焦点距離は1,200ミリで、冷却CCDカメラのST2000XMはチップサイズが小さいので、 組み合わせると、春の銀河がちょうどよい画角でした。

MT-200を譲り受けた後、試しにM81銀河を撮影してみると、 画面端はコマ収差の影響で少し星像が流れてしまうものの、 中心付近は解像度が素晴らしく、全体を見渡しても星の流れが気にならないことが分かりました。 あまりにも良く写ったので、それ以来、タカハシMT-200望遠鏡とST2000XMを使って、 様々な系外銀河を撮りまくりました。

光軸調整とカメラ取付方法

タカハシMT-200望遠鏡と冷却CCDカメラ ST-2000XMは、 スターベースで販売されていた「M54ネジM42オスアダプター」を介して、 ねじ込みで取り付けていました。

自宅では夜空が明るく星が見えないため、郊外まで望遠鏡を運ぶ必要がありますが、 大きな反射望遠鏡ということもあり、現地まで運ぶと光軸が微妙にずれてしまいます。 そこで、現地でレーザーコリメーターを使って、光軸の微調整を行っていました。

また、当初、タカハシMT-200望遠鏡は、斜鏡を固定するスパイダーが丸棒だったため、 望遠鏡の向きが変わると光軸がずれてしまって大変でした。 幸いにも在庫品を手に入れることができ、強化型羽式スパイダーに変更してからは、安定して撮影できるようになりました。

ピント合わせは、接眼部に取り付けたピントゲージを目安に合わせています。 シャープなニュートン反射は、ピントのピークが分かりやすいので、数分でピント合わせすることができます。

ミラーの洗浄

MT200の放物面鏡と主鏡セル 反射望遠鏡の反射ミラーは、定期的なメンテナンスが必要です。 普段は主鏡セルを望遠鏡から外して、ブロアーでゴミを吹き飛ばすだけで済ましていますが、 長い間使用していると、それだけでは落ちない汚れがついてきてしまいます。 そこで、2年に1度ぐらいの割合で、ミラーを主鏡セルから外して洗浄しています。

MT200の主鏡セルの構造は右上写真のようになっています。 放物面鏡は、等間隔に並んだ6つの全面押さえで支持されています。 また、この写真からは分かりづらいですが、横方向からも芋ネジで6点支持されています。

これらのネジを緩めて、ミラーを主鏡セルから外して清掃します。 ミラーの洗浄は、まず水で大きな汚れを洗い流した後、中性洗剤を含ませた水を使って手で軽く洗っています。 汚れが落ちたら、水道水でよく洗って洗剤を洗い流し、乾かします。 ところで、このミラーを乾かす時ですが、よくガイドブックなどでは鏡面を下にして壁に立てかけて乾かすと書かれています。 しかし、こうするとどうしても水垢が残ってしまいますので、私はブロアーで水を吹き飛ばしています。

MT200の放物面鏡 ミラーを洗浄した後は、主鏡セルにミラーを入れて固定します。 この時、あまり強く固定ネジを締めすぎると、鏡が歪んで星像が悪くなるので注意したいところです。 といっても、よく昔の本に書かれているように「主鏡セルを振ってカタカタ音がするように・・・」緩めて取り付けると、 撮影中にミラーが動いて星が流れて写ってしまいます。 そこで、鏡は横方向の圧力には比較的強いので、横の固定ネジを使って、鏡が必要以上に動かないように調整しています。

主鏡セルを鏡筒に取り付けた後は、タカハシから発売されている、センタリングアイピースを使って光軸調整をしています。 センタリングアイピースを使うと、レーザーコリーメーターだけでは調整しきれない部分を修正することができます。

接眼部の強化

MT200の補強 安価なニュートン反射望遠鏡と比べると、丈夫に作られているタカハシMT200ですが、 重いデジタルカメラを接眼部に取り付けて撮影すると、撮影方向によっては接眼部がたわんで光軸がずれることがありました。 そこで、接眼部にアルミ板を挟み込むことで、取り付け部分を強化することにしました。

今回変更した点は、接眼部を固定するネジを2本増やして6点止めにしたことと、 厚さ1ミリのアルミ板を使って裏打ち補強したことです。 右上がその裏打ちした部分の写真です。 素人仕事なので、開口部はぎざぎざで見栄えが悪いですが、ドロチューブ部分を持ってみると剛性が上がったことが感じられます。

上の写真は銀色ですが、最後に黒色黒板スプレーを使ってつや消し塗装しています。 これで重い補正レンズやカメラを取り付けても、光軸をずらすことなく撮影できるようになりました。

ミラーの再メッキ

反射望遠鏡に使用されている鏡(ミラー)には、アルミメッキが施されていますが、 長年使用していると、徐々にメッキが劣化して反射率が落ちてしまいます。

昔と比べると、メッキを保護するコーティング技術が発達したため、10年程度は問題なく使用できますが、 製造から年月が経過しているMT-200のミラーは、見た目にも汚れていて、反射率が落ちているように感じていました。

再メッキ後の主鏡

2020年、ジオマテック株式会社に依頼して、主鏡と斜鏡の再メッキを行いました。 上画像は、再メッキ後の主鏡です。センターマークが消えてしまいましたが、蒸着面は非常に綺麗で、新品の望遠鏡のようです。 今回は、タカハシμ-180Cにも採用されている、反射率を高めるHR多層膜コートを施しました。

ニュートン式反射望遠鏡の良いところは、再メッキを行えば、新品時の性能と鏡の輝きを取り戻せることですね。 これからも、MT-200を撮影や観望に愛用していきたいと思います。

見直したいニュートン反射の性能

MT200反射望遠鏡で撮った天体写真 タカハシMT-200反射望遠鏡を使ってみて感じたことは、シンプルな望遠鏡は、今でも使いやすいと言うことです。 構造が単純なので手を入れやすく、調整方法も理解しやすいのが美点でしょう。

メンテナンスフリーの高性能屈折望遠鏡も魅力的ですが、 手を入れながら長年使用していると、望遠鏡に対する愛着が沸いてきます。 その色と大きさから「ドラム缶」と呼んでいますが、かわいらしくも思えてきます。

最近の高橋製作所のカタログからは、ニュートン反射望遠鏡の製品がなくなり、 反射屈折光学系(カタディオプトリック)がラインナップされるようになりました。 周辺星像が改善し、写野が広いカタディオプトリックは天体撮影には魅力的な機材ですが、 ユーザーが調整しづらいのが難点です。

カタディオプトリック式と比べると、鏡筒が長く大きくなり、取り回ししづらいニュートン反射望遠鏡ですが、 現在の技術で製造されたら、また天文ファンの注目を集めるように思います。 ちょっと古めかしいニュートン反射望遠鏡ですが、今一度、その性能を見直してみてもよいかもしれませんね。

反射望遠鏡タカハシMT-200のスペック

名称 MT-200
形式 システムパラボラ光学系(ニュートン反射)
主鏡 200mm、放物面鏡
パイレックス材、モノコートアルミメッキ
斜鏡 短径63mm、平面鏡
パイレックス材、マルチコートアルミメッキ
焦点距離 1200mm
口径比 1:6
鏡筒径 253mm
鏡筒全長 1150mm
重量 14.5キロ
価格 264,000円(1996年当時)

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