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タカハシミューロン300天体望遠鏡

タカハシミューロン300(μ300)望遠鏡は、私の持っている天体望遠鏡の中では、最大口径の機材です。 口径30センチ主鏡の集光力を生かして、月・惑星だけでなく、遥か遠くの系外銀河の撮影に使用しています。

タカハシμ300望遠鏡

タカハシμ300の概要

タカハシμ300は、ドール・カーカム式を使用した天体望遠鏡です。 ドールカーカム光学系は、凹楕円面主鏡と凸球面副鏡を組み合わせた光学系で、 副鏡に双曲面鏡を用いるカセグレン光学系と比べると、製造しやすい利点があります。 高橋製作所は、ミューロンシリーズを1990年頃から製造し始め、 ミューロン180〜ミューロン300までのラインナップを広げました。

ドール・カーカム光学系の特徴は、中心像が極めてシャープなことです。 反射光学系ですので色収差が発生せず、ニュートン反射望遠鏡並のシャープな中心像が得られます。 また、焦点距離が長いため、容易に高倍率を得られるのも特徴の一つです。

μ-300は大きな望遠鏡ですが、口径30センチの他の形式の天体望遠鏡と比べるとコンパクトに収まっています。 鏡筒重量も25キロほどですから、同口径のニュートン反射と比べると軽くなっています。 これなら、一人でもなんとか持ち運ぶことができる天体望遠鏡です。


シャープな見え味が最大の特徴

中心像のシャープさがこの望遠鏡の一番の魅力です。 実際に星を見ると、μ300望遠鏡の中心像が非常にシャープなことがわかります。 もちろん色収差も発生しませんので、クリアな見え味を楽しめます。 中心像に比べると、像面端の星は若干歪みますが、眼視による観望ではそれほど気になりません。

中心像のシャープさを生かした惑星観察が、この望遠鏡の一番適した用途でしょう。 鏡筒内のツヤ消し加工や迷光防止もしっかりされているので、コントラストの高い像を楽しめます。 高倍率も得やすいので、ニュートン反射望遠鏡よりも惑星観望に優れていると感じています。

μ-300のミラー精度は高く、焦点内外像やロンキースクリーンを使った像を確認したところ、優秀な結果が得られました。 他のユーザーにお聞きしても同じようなご意見でしので、 ミラーの製造のし易さが、安定した高性能望遠鏡を生み出す要因なのかもしれません。


筒内気流はカセグレン系の弱点

ニュートン反射望遠鏡と比べると、ドールカーカム光学系を代表とするカセグレン系は、筒内気流に弱い面があります。 これは、ニュートン反射望遠鏡では一度しか光が筒内を通過しないのに比べて、カセグレン系では2度筒内を光が通るためです。 カセグレン系望遠鏡を使用する際は、筒内気流が落ち着いてから、観望、もしくは撮影することが大切になってきます。

タカハシμ-300望遠鏡には、主鏡のサイド部分と後ろ部分を取り外せる機構が装備されています。 筒内気流を早く解消するための機構です。 これは非常に有効で、30センチという大きな口径の望遠鏡にもかかわらず、 1時間ほどで観望では気にならないレベルまで、筒内気流を落ち着かせることができます。


遙か遠くの系外銀河を撮影

NGC7331銀河 ミューロン望遠鏡シリーズはどれもF値が暗く、淡い星雲などの天体写真撮影には向かない光学系です。 しかし、この望遠鏡の長焦点を生かした遠くの銀河撮影は、魅力あふれるものがあります。

しかし、光学系そのままではF値は12前後と非常に暗く、写野周辺のコマ収差も盛大に出てしまいます。 そのため、ミューロン望遠鏡には、レデューサーコレクターレンズがオプションで用意されています。 これを使うとF値が9前後に明るくなり、コマ収差も改善されます。

私はレデューサーレンズと冷却CCDカメラを組み合わせて、遠くの銀河の撮影を楽しんでいます。 しかし、やはり3000mmほどの焦点距離がありますので、μ300を使っての銀河の撮影は困難を極めます。 これほどの焦点距離になると、気流の善し悪しに大きく左右されますので、 夜空の状態を見分ける確かな目と勘が必要になります。 また、赤道儀の追尾能力にも限界がありますので、AO7やAO8といった補償光学機器の導入も必要になります。

そういった様々な問題が伴う長焦点での撮影ですが、銀塩フィルム時代には大望遠鏡でもなかなか撮れなかった遠くの銀河が、 自分で撮れるのは余りある魅力があります。 はじめからは難しいですが、星雲撮影に慣れてきたら一度トライしてみてはいかがでしょう。


冷却CCDカメラの接続方法

SBIGの補償光学装置AO-7を取り付けた冷却CCDカメラと、ミューロン望遠鏡との私の接続方法をご紹介します。 少し特殊な方法かもしれませんが、参考になれば幸いです。

ミューロンにカメラを取り付けた様子 AO-7を取り付ける際に問題となるのが、光学系のバックフォーカスの長さです。 AO-7を取り付けるためには、プラス90ミリ前後のバックフォーカスが必要になります。 これに対処するため、まずはミューロンの接眼部を取り外してしまいます。 ドロチューブが伸縮式になっている部分全てです。 この部分を取り外すと、望遠鏡側は72ミリのメスネジになりますので、 タカハシの50.8アダプターが取り付けられるようになります(屈折望遠鏡などに付いている短いタイプです)。

ここの50.8アダプターにAO7を2インチスリーブで取り付けるわけですが、 レデューサーをAO7の前に入れてしまうと、バックフォーカスが足りなくなってしまいます。 そこで、AO-7と冷却CCDカメラの間にレデューサーを入れることにしました。

私のレデューサーは、両側がTネジになっているネジ込みタイプですので、片側はST2000XMカメラに そのままねじ込んで取り付けられます。 もう一方は、AO7に取り付ける必要がありますが、そのままでは取り付けられません。 そこで、右下のようなアダプターリングを特注してもらいました。最終的には、このアダプターを使って、AO7とST2000XMの間 にレデューサーレンズを入れることに成功し、右上写真のような組み合わせで撮影を行っています

特注アダプター アダプターリングについてですが、これは周囲の直径が49ミリ、内側の直径が43ミリのネジピッチのリングです。リング周囲の真 ん中が凹んでいて、SBIGカメラのD-Blockにはめ込むことができるようになっています。 市販されていないので特注する必要があります。

私はアメリカのPrecisePartsという望遠鏡加工店に注文しました。 非常に素早い対応で、アメリカでは人気のあるパーツ加工ショップです。よかったらご利用してはいかがでしょうか。 もちろん、日本の加工ショップでも説明すれば対応してくれると思います。

以下に私が注文したときの英文メールの本文部分を添付しておきます。このリングの画像と 一緒にメールを送れば、きっと理解してくれると思います。

I need an adapter that will enable me to attach a Takahashi reducer for Mewlons to a SBIG AO-7 unit. The Takahashi reducer has an external thread that is 43mm wide (with a pitch of 0.75).

The project I would like you to machine is a ring that has an external diameter of 49mm, height of 6mm and a single grove that is 1mm deep, 2mm wide running midway around the outer circumference of the ring. The interior of the ring needs a bore that will accept the Takahashi reducer for Mewlons described earlier (43mm P=0.75). This ring will be placed into a something SBIG calls a T-thread D-Block. The D-Block has three screws that will enable me to securely attach the new ring into the D-Block.


ミューロン300の電動フォーカス装置

ミューロンの電動フォーカスモーター ミューロン300のピント合わせは、手元のコントローラーを使って副鏡に付いたモーターを動かす電動式となっています。 手元でピントを調整できるので観望するときには非常に便利なのですが、 撮影時には動作のピッチが大きくて、細かいピント合わせがやりにくいのが残念な点です。

望遠鏡メーカーに問い合わせてみたところ、このミューロン300の電動フォーカス装置にはDCモーターが使われているとのことでした。 確認のため副鏡のカバーを外してみると、ドイツにあるFAULHABAR社のミニモーターが使われていました(右上写真)。 このモーターは、回転角を減らすために減速ギアが使われたモデルのようで、動きは滑らかなのですがバックラッシュが若干あるようです。

現在販売されているミューロン300では、このモーターに代えてステッピングモーターが使われているようです。 撮影中のピント合わせには、細かい動作が得意なステッピングモーターの方が適していると思いますので、 できればこのモーターをステッピングモーターに換装したいと考えています。


ミューロン300の光軸調整

ミューロン300の光軸調整には、タカハシから販売されているセンタリングスコープを使用しています。 このスコープを使用すると副鏡に写った像を拡大することができ、精度の高い光軸調整ができるようになります。

具体的な光軸調整の方法については、カセグレン式の光軸調整のページで詳しく紹介しています。 そちらも是非ご覧ください。


ミューロン300のCR化

CR化ユニット 2009年の終わり頃、高橋製作所からミューロン300と250用の高性能補正レンズ、CR化ユニットが発売開始されました。 また2011年には、この補正レンズを最初から組み込んだMewlon300CRSが発表されました。

この補正レンズはバッフルごと交換するタイプのもので、鏡筒を一度分解する必要がありますが、私もその写真性能を見るために購入して取り付けてみました。 右上写真がその補正レンズを主鏡の根元にねじ込んだ様子ですが、外観上は普通のミューロン300と全く変わりありません。 しかし、光学系の最後に補正レンズが入るため、光軸に対してシビアになってしまいました。

補正レンズを組み込むと、ドールカーカム式の最大の弱点であったコマ収差が劇的に減り、星雲などの広い写野が必要な撮影に使い易くなりました。 一方、中心像は若干甘くなったような気がします。 Mewlon300CRで木星などを観望すると、補正レンズを入れていなかった方がコントラストが高い印象があります。

ところで、このCR化ユニットと呼ばれる補正レンズが発表された頃は、海外ではドールカーカム式望遠鏡に補正レンズを組み込んだ大口径写真鏡筒が注目を集めていました。 こうした光学系は、コレクテッドドールカーカム式(Corrected Dall-Kirkham)と呼ばれ、代表的な機種にPlaneWave社のCDKシリーズがあります。 高橋製作所は、きっとこうした海外の流れに乗るためにこうしたミューロン専用の補正レンズを開発したのでしょう。 その英断が功を奏したのか、Mewlon-250CRSは、長焦点撮影を楽しむ方々の人気機種になっています。


CR化ユニットの取り付けについて

ミューロン300のバッフル μ-300にCRユニットを取り付けて以来、 35ミリフルサイズカメラで撮影した際に原因不明のゴーストが発生するのに悩まされていました。 CRユニットを購入した販売店やメーカーに相談すると、 光軸のズレが問題だろうと指摘され、鏡筒の調整に1年ほど費やしていました。

ところが1年ほど経ったある日、ふとしたきっかけでメーカーの工場の担当者に問い合わせたところ、 「μ-300とμ-300CRSではバッフルの形状が異なるため、μ-300にCR化ユニットを取り付けると迷光が入り、 設計どおりの光学性能を発揮できない」と指摘されました。 CRユニットの購入時には「CR化ユニットを取り付けるだけで、CRS鏡筒と同じ光学性能になる」と説明を受けていたので、 この説明を聞いて、驚いてしまいました。

結局、μ-300本体をメーカーに送ってバッフルを交換してもらい、 ようやく望遠鏡本来の性能が発揮できるようになりましたが、 それまでに何度か遠征にも出かけ、その度に撮影に失敗していたわけで、 光軸調整の労力と合わせて、貴重な時間と費用を浪費してしまいました。 旧製品にも使用できる補正レンズを発売してくれるのは大変嬉しいのですが、 本来の性能が旧製品でも発揮できるかを、発売前に実機を使って調査して欲しいところです。

ミューロン300のCR化については、上記のように紆余曲折はありましたが、 最終的にミューロン300の性能を発揮できるようになったのは、工場の方のご指摘と交換作業のお陰です。 ユーザーの突然の質問に快く応えてくれた担当者の方に感謝すると共に、 この一新されたミューロン300CR鏡筒を使って、印象に残る天体写真を撮っていきたいと考えています。

※μ-300を既にお持ちで、CR化ユニットをご自分で取り付けようと考えていらっしゃる方は、 この点をご注意の上、交換作業をされることをお勧めします。

タカハシμ300望遠鏡のスペック

タカハシμ300望遠鏡とMewlon300CRSの仕様を以下に示します。

名称 μ-300 Mewlon300CRS
有効口径 300mm 300mm
焦点距離 3,572mm 2,960mm
口径比 1:11.9 1:9.9
鏡筒径 324mm 324mm
鏡筒全長 1094mm 1045mm
重量 24.9kg 27kg

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