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タカハシ ε-130D レビュー

タカハシ ε-130D タカハシ ε-130Dは、高橋製作所が製造している天体望遠鏡です。

ε-130Dは、アイソン彗星(C/2012 S1)の接近(2013年12月)に合わせて開発が進められ、 2013年8月に発売開始されました。

ε-130Dは、一般的な天体望遠鏡と異なり、天体撮影専用の望遠鏡です。 開放F値が「3.3」と望遠レンズ並みに明るいので、短時間の撮影でも淡い星雲を映し出すことが可能です。

ε-130Dは、生産が終了していた先代のε-130の性能を受け継ぎつつ、 デジタル対応の補正レンズを組み込んで、最新の撮影機材に対応したモデルです。 同社の反射式望遠鏡の現行ラインナップ中で、最も小さく、安価なモデルです。

イプシロンシリーズの復活とε-130D

高橋製作所のイプシロンシリーズは、天体撮影用に開発された望遠鏡です。 主鏡には、双曲面鏡(Hyperboloid mirror)が用いられ、 焦点面の前に補正レンズを置くことによって、平坦な像を得ます。

ε-130Dは、イプシロンシリーズの中で最も小さな望遠鏡です。 先代のε-130は1984年に発売され、 長らく生産されましたが、イメージサークルが広い高性能屈折望遠鏡に人気が集まると、 やがてイプシロンシリーズは生産が終了しました。

その後、デジタル機材が天体撮影に使われ始めると、 F値の明るいイプシロンシリーズが、再び天文ファンから注目されるようになりました。 高橋製作所は、2003年にタカハシε-160を限定再生産し、 2005年にはデジタル時代を担うイプシロン鏡筒としてε-180EDを発表しました。

限定生産 タカハシε-160

2003年に限定再生産されたε-160

ε-180EDは歴代最高のF2.8という明るさで注目を集め、多くの天体写真ファンが購入しましたが、 光軸調整や平面性の調整がシビアな鏡筒でした。 2007年にタカハシFSQ-106EDが発表されると、屈折へ乗り換えるユーザーが増え、 中古市場でε-180EDをよく見かけるようになりました。

2009年に、ε-130とε-160用のデジタル対応補正レンズが限定生産されました。 そして、2013年のアイソン彗星の接近に合わせて発表されたのが、ε-130Dです。 ε-130Dはコンパクトで軽量なため、SXクラスの赤道儀にも載せられるとあって、 今でも人気機種の一つになっています。

歴代のイプシロンシリーズのスペック表

鏡筒名 生産開始年 口径 焦点距離 口径比 重さ
ε-130 1984年 130mm 430mm 3.3 5.5kg
ε-130D 2013年 130mm 430mm 3.3 4.9kg
ε-160 1984年 160mm 530mm 3.3 7.6kg
ε-180ED 2005年 180mm 500mm 2.8 10.7kg
ε-200 1984年 200mm 800mm 4.0 13.5kg
ε-210C 1993年 210mm 628mm 3.0 10.4kg
ε-210 1996年 210mm 628mm 3.0 15.3kg
ε-250 1987年 250mm 854mm 3.4 32.0kg
ε-250C 1992年 250mm 854mm 3.4 18.9kg
ε-300 1985年 300mm 1130mm 3.8 45.0kg
ε-350 1997年 350mm 1248mm 3.6 66.0kg

タカハシε-130Dの外観と先代からの変更点

ε-130Dは、鏡筒色がイエローで、鏡筒の大きさも小さいので、 初めて見たときは、かわいらしく感じました。 しかし、高橋製作所の望遠鏡らしく、鏡筒各部の造りはとてもしっかりしています。

ε-130Dを上位機種のε-180EDと比べると、5センチの口径差以上に、小さく感じられます。 下は、ε-180EDとε-130Dの開口部からの写真です。

ε-180EDとε-130D

ε-180ED(左)とε-130D(右)

先代のε-130と外観を比較すると、ε-130Dには、 鏡筒の先に丈夫なトップリングが取り付けられ、斜鏡を固定するスパイダーは、このトップリングに固定されています。 ε-180EDにも採用されている方式ですが、ねじれや歪みに強いので、より光軸がずれにくくなっています。

ε-180EDとε-130Dの補正レンズ

ε-130D(左)とε-180EDの補正レンズ(右)

補正レンズは、4群4枚から2群2枚構成のものに変更されました。 メーカーによると、最小星像は、先代ε-130との比較で1/3以下になっているということです。 また、歪曲収差(ディストーション)も半分以下に補正されており、 モザイク合成を前提とした天体撮影にも使いやすくなっています。

なお、高橋製作所は、2009年と2013年に、ε-160/130用のデジタル対応補正レンズを限定で販売しています。 新型補正レンズを用いれば、ε-130でも現行モデルに近い性能が得られるということで、 今でも中古市場で人気の高い撮影パーツです。

鏡筒の前後バランスと鏡筒バンド

ε-130Dは主鏡が小さく軽いため、接眼部に重いデジタルカメラを取り付けると、 前後バランスを取る点が、鏡筒の前寄りになってしまいます。

ε-130Dの鏡筒バンド

ニコンD810Aを取り付けた様子

上の写真は、K-Astec製の鏡筒バンドとプレートセットを取り付けた様子です。 鏡筒の前後バランスを取るため、接眼部を上にして、そこにデジタルカメラを取り付けています。

ガイド鏡は、鏡筒バンドの斜めの位置に、細長いプレートを追加して固定します。 昔のようなスライディングプレートにガイド鏡と同架する方法もありますが、 上記の方法の方が追尾が安定するように思います。

ε-130Dの斜鏡と主鏡と補正レンズ

ε-130Dでは、天体撮影時の周辺減光を減らすため、短径63ミリの大きな斜鏡が採用されています。 また、周辺減光の偏りを減らすため、斜鏡は接眼部と反対側にオフセット(偏心取り付け)されています。

ε-130Dの偏心斜鏡

斜鏡は、45度に切断した円筒に、緩衝材のコルクを介して貼り付けられています。 外側には、迷光防止のための植毛紙が巻き付けられています。 ε-180EDの斜鏡と同じ固定方法です。

主鏡セル

主鏡は、主鏡セルに納められています。 ε-130Dの主鏡セルは、ε-160と同様、ミラーを3つの爪で抑える構造になっています。

ε-130Dの主鏡セル

左がε-180ED、右がε-130Dの主鏡セル

ε-180EDの立派な主鏡セルと比べると簡素に感じられますが、 13センチのミラーは軽いので、歪みなどの問題は発生しないという判断でしょう。 ただ、主鏡の爪がミラーに飛び出ているため、この部分で星の光が散乱し、 輝星に余計な光条が発生する場合があります。 これを防ぐには、爪を隠すリングを自作するとよいでしょう。

セルの構造はε-160と同じですが、光軸調整用ネジは、 親子ネジから押しネジ、引きネジが独立したタイプに変更されています。

ε-130Dの光軸調整機構

他のニュートン反射望遠鏡と同様に、タカハシε-130Dには、 主鏡と斜鏡の傾きと位置を調整するための光軸調整機構が取り付けられています。

ε-130Dの光軸調整装置

斜鏡の光軸調整装置には、中央に引きネジ1本、その周りに押しネジ3本が取り付けられています。 ε-180EDと異なり、ロック用のナットは付属していませんが、 押しネジには粘度の高いグリスが塗られています。

主鏡セルの光軸調整装置は、引きネジと押しネジが独立したタイプで、120度間隔で3箇所設けられています。 また、主鏡セルの側面には、ラジアル方向(光軸と垂直方向)の位置決めのためのイモネジがねじ込まれています。

鏡筒のトップリングには、斜鏡を吊るスパイダーが取り付けられています。 スパイダーは厚みのある羽形状のもので、 トップリングの外側から、ネジで引っ張り固定されています。 鏡筒内側のロックネジを緩めると、スパイダーの長さを調整することができます。

ε-130Dの光軸調整について

光軸調整は、補正レンズを外し、ニュートン反射望遠鏡と同じように光軸調整ツールを使って行います。 調整方法の詳細は省きますが、光軸が合っていると以下のように見えます。

ε-130Dの光軸

斜鏡のセンターマークと光軸調整ツールの十字線の交点が一致している
斜鏡の外側がドロチューブの側面と同心円になっている
主鏡のセンターマークと光軸調整ツールの十字線交点が重なっている
主鏡に写った斜鏡の側面が上下で同じ幅になっている(眼を上下に振って確認)

光軸調整のポイントは以下の通りです。

斜鏡のセンターマークと接眼部の中心を、できるだけ正確に合わせましょう。 光軸調整ツールを覗く眼の位置によって、 十字線とセンターマークが重なっているように見えることもあるので、注意が必要です。 斜鏡の位置がずれていると、周辺減光が偏ってしまいます。

レーザーコリメーターは便利な道具ですが、斜鏡の回転方向を判断することができません。 必ず、光軸調整ツールを使って、目視で確認することをお勧めします。

光軸調整の説明書に、スパイダーを調整する方法が書かれていることがありますが、 調整に慣れるまでは、スパイダーにはむやみに触らない方が無難です。

光軸が合っているように見えても、実際に撮影した星像が悪く、何度調整しても改善しないときは、 接眼部が傾くなど、他の原因が考えられます。 購入したばかりなら、メーカーに相談するとよいでしょう。

ε-130Dの星像

ε-130Dの結像性能を調べるため、接眼部に35ミリフルサイズのデジタル一眼レフカメラ「ニコンD810A」を取り付け、 夏の人気天体「北アメリカ星雲とペリカン星雲」を撮影してみました。

下が撮影したそのままの画像です。 全体画像の下に各部分の拡大写真を載せています。 なお、撮影にはAXD赤道儀を使用し、オートガイド撮影をおこないました。カメラの設定は、ISO1600、300秒露光です。

※販売店から届いた状態のままテスト撮影したため、 運搬時の振動等で、光軸やスケアリングが若干ずれている可能性があります。

ε-130Dで撮影した画像

ε-130Dで撮影した画像

ピクセル等倍画像もご覧ください

全体画像を見ると、中央から周辺に行くにつれて背景の明るさが暗くなり、周辺減光が発生していることがわかります。 周辺減光は上位機種のε-180EDに比べ、若干大きいように感じられます。

中心部の星像はシャープで、フルサイズ四隅でもそれほど星像は悪化していません。 また色収差も感じられず、写野全体に渡ってシャープな星像を結んでいます。

フラットフレーム

ε-130Dの周辺減光の様子を調べるため、ε-130DにニコンD810Aを取り付け、フラットフレームを撮影しました。

ε-130Dのフラットフレーム

上が今回撮影したフラットフレームの画像です。 写真を見ると、画面周辺が中央部に比べて暗くなっているのがわかります。 上下が暗くなっているのは、デジタル一眼レフカメラのミラーボックスのケラレによるものです。

今回は35ミリフルサイズのフラットフレームですが、上記の画像を見る限り、 センサーサイズがAPS-Cのデジタルカメラなら、周辺減光もそれほど気にならないように思います。 フルサイズ最周辺まで表現したい場合は、正確なフラット補正が必須となるでしょう。

参考までに、天体撮影で人気の高い屈折望遠鏡、FSQ-106EDと周辺減光の様子を比べてみました。

ε-130DとFSQ-106EDのフラットフレーム比較

上がε-130D、下がFSQ-106EDのフラットフレームです。 どちらもニコンD810Aで撮影した画像ですが、FSQ-106EDの方が周辺減光が少なく、 中央からの減光もなだらかです。

屈折望遠鏡に比べ、反射望遠鏡はフラット補正が難しいという話を耳にしますが、 フラットフレームの画像にも、その傾向が表れているようです。

周辺減光の様子

上でご紹介したε-130DとニコンD810Aで撮影したフラットフレームをステライメージ8で開き、 等光度曲線を表示させて、周辺減光の様子を調べてみました。

等光度曲線による周辺減光

上が、ステライメージ8の等光度曲線コマンドを適用した後の画像です。 少し気持ち悪く感じられる画像かもしれませんが、地図の等高線のように、線で繋がれた部分が同じ明るさを表しています。

ニコンD810Aのミラーボックスでケラレが生じているので、画像の上下は減光の勾配がきつくなっています。 一方、左右方向の減光はほぼ均等ですが、等光度曲線の左端が乱れているのは、鏡の圧迫が発生しているのでしょうか。 周辺減光から判断すると、このε-130Dの光軸は合っているようです。

軽量で高性能な写真鏡

タカハシε-130Dは、本体重量が約5キロと軽く、 タカハシのEM-11、ビクセンのSX赤道儀クラスでも搭載が可能です。 機材全体がコンパクトになり、遠征時の負担が減るのは大きなメリットです。

星の写りに関しては、35ミリフルサイズ周辺でも満足できるシャープな星像です。 また、ε-180EDに比べてF値が若干暗い分、スケアリングにも寛容で、 実用的な鏡筒であると感じました。

屈折望遠鏡ユーザーにとって、反射望遠鏡は光軸合わせが面倒でフラット補正が難しいというイメージがありますが、 ε-130Dは、天体撮影用の明るい鏡筒の中では扱いやすい機材だと思います。

ε-130Dは、発表以来、天体撮影用の人気機種となっていますが、 これからもイプシロンシリーズの入門機として、広く支持されていく望遠鏡だと感じました。

タカハシ ε-130D スペック

名称 タカハシ ε-130D
形式 ハイパーボライド・アストロカメラ
有効径 130mm
焦点距離、F値 430mm、F3.3
斜鏡短径 φ63mm
鏡筒径 166mm
イメージサークル φ44mm(35mmフルサイズをカバー)
大きさ、重さ 全長460mm、4.9キロ
希望小売価格 ¥235,000(税別)

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