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タカハシε-250反射望遠鏡の使用レビュー

高橋製作所のイプシロン250(ε-250)反射望遠鏡は、一般的な天体望遠鏡とは異なり、天体撮影専用に作られた望遠鏡です。 撮影用の天体望遠鏡は、アストログラフと呼ばれていて、天体写真ファンに人気があります。 タカハシε-250は、私が所有しているアストログラフの中で、タカハシBRC250と並んで最大口径の機材です。 これはMさんから譲っていただいた鏡筒です。

タカハシε250望遠鏡


タカハシε250の概要

タカハシε-250は、高橋製作所が考案したイプシロン光学系を使用した反射望遠鏡です。 イプシロン光学系は、ニュートン反射と同じ構造のため、他のアストログラフと比べて使い勝手が良いのが特徴です。 現在、販売されているのは、ε-180EDとε-130Dのみですが、以前は、口径が異なる様々なε鏡筒がラインナップされていました。

タカハシε-250アストログラフは、1987年に高橋製作所から発売された製品です。 販売が開始された当初は、メタル鏡筒のモデルのみでしたが、1992年に鏡筒の材質がカーボンに変わります。 現在でもマニアに人気のあるε250カーボン鏡筒がこの時に誕生しました。

私のε-250は、メタル鏡筒時代に製造された望遠鏡で、1990年製です。 鏡筒がメタルのため、非常に重く、望遠鏡の重量は36キロ以上あります。 鏡筒径も324ミリと大きいので、我が家で最大の質量を誇る鏡筒です。


メタルとカーボン鏡筒の違い

ε250カーボン タカハシε250カーボン鏡筒は、デジタル撮影が主流になった現在、デジタル天体写真ファンに人気があります。 しかし、既に生産は終了しているので、中古市場を探さないとなりません。 当時の販売価格で100万円以上した製品ですから、所有している方が少ないのか、滅多に見かけることがない天体望遠鏡です。

メタルとカーボン鏡筒の外観上の違いは鏡筒の色です。 メタルは上の写真のようにオレンジ色の鏡筒ですが、カーボン鏡筒は右のようにブラックです(Yさんの機材です)。 また、鏡筒重量にも大きな差があります。 カーボン鏡筒のε250は18.9キロしかなく、メタル鏡筒の約半分の重量です。 この程度の重さなら、NJPクラスの赤道儀にも搭載することが可能でしょう。

光学系の大きな違いは主鏡です。 どちらの主鏡も双曲面鏡という特殊なミラーが採用されていますが、メタル鏡筒は普通の一枚のミラーなのに対し、 カーボン鏡筒には、中央をくりぬいた、厚さの薄いミラー(シンミラー)が採用されています。 このミラーの重さも、鏡筒重量の違いに現れているのでしょう。


明るさが最大の武器

ε250アストログラフの最大の武器は明るさ(F値)です。 この明るさから得られる広い写野が、デジカメを使った星雲星団の撮影に適しています。

元々67版に対応する接眼部を持っているので、広いイメージサークルを有しています。 最近、デジタル対応の補正レンズが限定発売されたので、これを使うとよりデジタル撮影に適したアストログラフに生まれ変わります。 この限定発売レンズを用いると、色収差も感じませんでした。


運ぶには重くて大きな鏡筒

星空の綺麗な郊外へ運搬するときは、ε-250鏡筒を持ち上げなければなりません。 しかし、私には36キロもある大きな物体を、一人では持ち上げられません。

そこで、主鏡セル部分にねじ穴を開けて取っ手を取り付け、主鏡と鏡筒部分を簡単に取り外せるよう加工しました。 こうすると2つの部分に分かれますので、重量的になんとか持ち運べる重さになりました。

パーツに分かれて軽くなりましたが、主鏡を外すので、現地では光軸の再調整が必要になってしまいました。 しっかりした構造なので、再現性はよいだろうと思っていたのですが、思いの外光軸がずれてしまいます。 現地で組み上げてから、レーザーコリメーターを使って光軸を合わせています。 少し手間がかかりますが、赤道儀の設置よりは楽に感じています。

また、主鏡セルを取り外すメリットもあります。 機材を組み立てている間、主鏡を外気に直接触れさせておけるので、外気温に早く順応させることができます。 このお陰で、鏡筒を組み立てからはすぐに本撮影に写れるようになりました。 通常の望遠鏡の場合、外気温の馴染ませに長い時間がかかることを考えると、 組み立てを含めても、ε-250の方が早く撮影に移れるかもしれません。


ε250の光軸調整

ε250の光軸調整機構 タカハシのε180を始めとしたイプシロンシリーズは、明るいので、光軸のズレやスケアリング不良にシビアな鏡筒です。 残念ながら、ε-250も光軸がずれていると星像が著しく悪くなります。

あまり気にしすぎても仕方がないのですが、ある程度はしっかりと光軸を合わせておきたいものです。 そこで、自宅にいるときに光軸調整ツールを使ってできるだけ正確に合わせています。 以下、ε250の光軸調整方法についてのポイントを箇条書きしています。

ε望遠鏡の光軸調整のポイント

ε250のスパイダーは鏡筒に固定されていて、ε180や他の鏡筒のように鏡筒の外側から締め付けるような構造になっていません。 そのため斜鏡のスパイダーを動かすことはできませんが、斜鏡の固定ネジ部分が動くようになっていますので、 この3つのプラスネジを緩めることで調整できます(右上写真参照)。

主鏡セルと鏡筒の隙間が大きいので、アルミ板を張ってガタを少なくし、鏡筒のほぼ中央に主鏡の中心が来るようにしています。 と言っても、遠征時に主鏡セルを毎回取り外すので、隙間を少なくしすぎると主鏡が外れなくなりますので、 若干の隙間は残しています。

ε250の斜鏡 私のε250の斜鏡は、先端部が少し欠けてしまっています。 その部分に主鏡からの光が当たると錯乱光が発生するので、その部分を黒塗りしています。 また、この斜鏡先端に光が当たらないように、斜鏡のセンタースポットを3ミリだけずらし、斜鏡全体を主鏡側に移動しています。 通常のε250の斜鏡には、中心から7.5ミリずれた点にセンターマークが打たれているはずです。

斜鏡に取り付けられた円形のプレート(スパイダーの長さ調整を担うもの)は、右下写真のような形をしています。 このプレートの中心をスパイダーの交点(鏡筒の中心)が一致するように固定すると、斜鏡の引きネジの中心が5.3ミリ接眼部と反対側にオフセットされます。 標準状態のε250では、このように固定すれば主鏡の光が漏れなく斜鏡に当たることになるはずです。 私の鏡筒の場合は斜鏡のセンターマークをずらしているので、円形プレートを接眼部と反対側に通常よりずらしています。

ε250の主鏡は大きく重いので、鏡筒を寝かしたまま光軸調整すると、鏡の自重で、鏡筒を上に向けたときに主鏡の軸が僅かにずれてしまいます。 それを避けるため、そのズレを見越して主鏡の光軸調整しています。

ε250の斜鏡調整プレート 光軸調整は、センタリングアイピースとセンタリングチューブを使って行っています。 センタリングチューブを付けた状態だと、斜鏡の回転などがわかりづらいので、接眼部に何も付けていない状態でよく確認します。 また、斜鏡が上や下に傾いていると星像が悪化するので、接眼部で上下に眼を動かして、 斜鏡の側面が同じように見えているかチェックしています。

斜鏡のセンターとセンタリングチューブの交点が合ったら、レーザーコリメーターを取り付けて、 レーザーのビームが主鏡センターマークの中央に当たるよう斜鏡の傾きを調整しています。 この調整を行うと、接眼部から斜鏡を見たときにセンターがずれることがあるので、斜鏡を回転させて両方が一致するまで繰り返します。 この作業は何度か反復する必要があることが多いです。

主鏡の調整では、主鏡のセンターマークを動かして、センターマークがセンタリングアイピースの中央に来るようにしています。 私の天体望遠鏡は古いためなのか、主鏡の光軸調整ネジの一つが固くて動きません。 そのため、その他の2つのネジを使って傾きを調整しています。

光軸調整後の試写

ε250の星像 光軸調整が終わったら試写して星像を確認しています。 写野全面にシャープな像が結ばれるのが望ましいですが、 スケアリング不良や鏡筒のたわみが発生することがあるため、そこそこの星像ならよしとしています。

光軸調整後の試写には、天の赤道付近の天体を選んでいます。 これは以下の理由からです。 ε250は鏡筒の向きによって鏡筒の撓み方や、デジタルカメラと接眼部への力の掛かり方が変わって、 光軸もしくはスケアリングに誤差ができてしまいます。 これはいくら光軸を追い込んでも解決できない問題ですので、 ε250望遠鏡を使ってよく撮影する方向でベストの結果が出るよう、この付近の星で星像チェックしています。

右上の画像はこの天体望遠鏡とフルサイズ冷却CCDカメラを組み合わせたときの星像の様子です。 クリックすると大きな画像が表示されます。 ピクセル等倍画像も表示していますので、何かの参考になれば幸いです。

タカハシε250のスペック

タカハシε250アストログラフの仕様を以下に示します。

名称 ハイパーボライドアストロカメラε-250
有効口径 250mm
焦点距離 854mm
口径比 1:3.4
イメージサークル 69mm(50mm)
鏡筒径 324mm
鏡筒全長 985mm
重量 約36kg