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タカハシ Mewlon-250CRS レビュー

タカハシ Mewlon-250CRS(ミューロン250CRS)は、天体望遠鏡メーカーの高橋製作所が製造している天体望遠鏡で、 2010年12月に発売開始されました。

Mewlon-250CRSは、それまで製造されていたミューロン250に、補正レンズとセミオートフォーカス機構を追加し、 より天体撮影に適した仕様に変更したモデルです。

このページでは、Mewlon-250CRSとデジタルカメラを使って撮影した写真をご紹介しながら、 Mewlon-250CRSを天体撮影に使用した際の使い勝手と、光学性能についてレビューしています。

ミューロン250用補正レンズとMewlon-250CRSの登場

タカハシ Mewlon-250CRS Mewlon-250CRSの前機種「μ-250(ミューロン250)」に採用されていたドール・カーカム光学系は、 中心星像は極めてシャープですが、 視野周辺部にコマ収差と湾曲収差が発生する弱点がありました。

そのため、ミューロン250/300用として、タカハシからコマ収差を低減する補正レンズ(レデューサー)が発売されていましたが、 この補正レンズを使っても収差は補正しきれず、APS-Cの構図内でも周辺の星は流れて写ってしまいました。

当時、リッチー・クレチャンと比べて、ドール・カーカム光学系は天体撮影には不向きと考えられていましたが、 PlaneWave社が、コレクテッド・ドール・カーカム望遠鏡「CDK 12.5 inch」を発表した頃から、 ドール・カーカムの天体写真適正が見直されるようになりました。

それを受けてか、2009年12月、タカハシはミューロン250、ミューロン300用の補正レンズ「CRユニット」を発売開始します。 翌年2月には、タカハシの天体望遠鏡用のセミオートフォーカサー「β-SGR」が販売開始され、 ついに2010年12月、補正レンズとセミオートフォーカサーを組み込んだ、Mewlon-250CRSが登場しました。

Mewlon-250CRSの概要

Mewlon-250CRSは、口径25センチの天体望遠鏡です。 Mewlon-250CRSには、ドール・カーカム光学系に補正レンズを追加した光学系(下概略図参照)が採用され、 従来のミューロン250と比べて、周辺星像がシャープになりました。

タカハシ Mewlon-250CRS光路図

Mewlon-250CRSには、副鏡をモーターで前後させて、ピントを合わせる方式が採用されています。 この方式は、シュミカセのように主鏡を動かす必要がないため、ミラーシフトが発生しない利点があります。 また、接眼部が鏡筒に固定されているため、重いカメラを取り付けてもたわむ心配がありません。

副鏡の電動モーターは、ミューロン250では、DCモーターが使用されていましたが、 Mewlon-250CRSではセミオートフォーカス化されると共に、ステッピングモーターに変更されています。 ハンドコントローラーとパソコンをUSBケーブルで繋げば、 パソコン上のアプリ「Focus Infinity」でピント合わせが可能です。

鏡筒の接眼部側には、主鏡の温度順応を早めるためのファンが3つ取り付けられています。 ファンのオンオフは、ハンドコントローラーで行います。

また、Mewlon-250CRSには、焦点距離を短くしてF値を明るくする「レデューサーCR0.73×」と、 焦点距離を伸ばす「エクステンダーCR1.5×」がオプションで用意されています。

惑星観望から系外銀河撮影まで楽しめる

高橋製作所のミューロンシリーズの魅力は、中心像のシャープさです。 Mewlon-250CRSも例にもれず、中心像はシャープで色収差は感じられません。 この中心像の良さを生かした惑星観望や撮影が、まずはこの天体望遠鏡の魅力でしょう。

さらに、補正レンズが組み込まれたMewlon-250CRSでは、星像の均質さも魅力です。 広視野アイピースを接眼部に取り付けて星空を観望すると、視野周辺まで鋭い星像が広がります。 デジタル一眼レフカメラを取り付ければ、写野の端まで鋭い星像を結びますので、 長焦点を生かした系外銀河の撮影も楽しむことができます。

タカハシ Mewlon-250CRSで撮影した木星

タカハシ Mewlon-250CRSで撮影した木星

また、光学系のF値が10、レデューサーを用いてもF7.3と暗いため、淡い星雲の撮影には時間がかかりますが、 オリオン大星雲のような明るい星雲や星団なら、比較的短い時間で滑らかな画像を得ることが出来ます。

惑星や月から系外銀河まで、観望も撮影も楽しめるMewlon-250CRSは、 多目的に使える優れた鏡筒だと思います。

Mewlon-250CRSの光軸と調整について

系外銀河や星雲の撮影のため、Mewlon-250CRSを郊外まで車で運んで撮影していますが、 今のところ光軸ズレは発生していません。 上位機種のμ-300は、運搬のたびに副鏡の調整が必要ですが、 Mewlon-250CRSは副鏡が小さいため、光軸がずれにくいのかもしれません。

光軸の確認は、星像を確認するのが最も確実ですが、 撮影時はカメラをすぐに取り付けたいため、レーザーコリメーターを使って確認しています。 具体的な方法は、カセグレンの光軸調整ページの「レーザーコリメーターを使った光軸調整」の項目をご参照ください。

Mewlon-250CRSのフォーカス機能と冷却ファンについて

Mewlon-250CRSのピント合わせは、ハンドコントローラーのボタン操作で行います。 また、ハンドコントローラーとパソコンをUSBケーブルで接続すれば、 付属のコントロールアプリケーション「Focus Infinity」を使った、セミオートフォカースも可能です。

ただし、Focus Infinityのセミオートフォーカス機能を使用するには、 カメラをパソコンとUSBケーブルで繋ぎ、カメラ制御ソフトがFocus Infinityに対応している必要があります。

タカハシ Mewlon-250CRSで撮影した木星

Mewlon-250CRSのハンドコントローラー

Mewlon-250CRSの主鏡セルキャップには、主鏡を強制冷却するための電動ファンが3個設置されています。 ハンドコントローラーでファンをオンにすると、 設定した温度条件に応じて吸気ファンのON、OFFが制御されます。

主鏡の温度順応を早めてくれる電動ファンは大変便利ですが、 ファンの部分に光が当たると、鏡筒内に迷光が入る場合があります。 その対策として、撮影中はパーマセルテープでファン部分を覆い、迷光の侵入を防止しています。

Mewlon-250CRSの星像

Mewlon-250CRSの魅力は、写野全面に広がるシャープな星像です。 APS-HサイズのKAF-16200センサーを用いたモノクロ冷却CCDカメラを使って撮影した画像をご紹介しながら、 Mewlon-250CRSの周辺星像について確認していきましょう。

まずは、直焦点(2500mm)で撮影したM81の画像です。 メーカーによれば、直焦点時のイメージサークルは40mmです。 35ミリフルサイズセンサーの対角長は43.2mmですので、それには少し足りませんが、 KAF-16200センサー(対角長約35mm)は、イメージサークル内に入る大きさです。

タカハシ Mewlon-250CRSで撮影したM81銀河

タカハシ Mewlon-250CRSで撮影したM81銀河拡大

実際にKAF-16200センサーで撮影した画像を確認すると、四隅の星の形が収差で少し崩れているものの、 目立つほどではなく、満足できるレベルの星像を維持していると思います。

次に、レデューサーCR0.73×を取り付けて、冷却CCDカメラでM81銀河を撮影しました。 直焦点の写真と比べると、写っているM81銀河の大きさが小さくなっていることがわかります。

タカハシ Mewlon-250CRSとレデューサーで撮影したM81銀河

タカハシ Mewlon-250CRSとレデューサー撮影したM81銀河拡大

レデューサーレンズを装着したときのイメージサークルは35mmです。 フルサイズには少々狭いですが、ちょうどKAF-16200センサーがぴったり納まるサイズのイメージサークルです。

拡大画像の星像を確認すると、四隅の星の形が僅かにいびつになっていますが、 直焦点時と同等に感じられます。

レデューサーレンズを使うと、中心部の約60%の光量が得られるイメージサークルは狭くなりますが、 星像の面では、ほぼ同等の性能が得られると感じました。

オフアキシスガイダーとMewlon-250CRS

Mewlon-250CRSの焦点距離は2,500mmもあるため、 ガイド鏡を使用したオートガイド撮影より、オフアキシスガイダーを使用する方がガイドの成功率が高くなります。

幸い、Mewlon-250CRSのバックフォーカスは148mmもあるので、 市販されている、大抵のオフアキシスガイダーを使用することができます。 一方、レデューサーレンズを取り付けると、バックフォーカスが72.2mmと短くなるので、 光路長が短いオフアキシスガイダーが必要になります。

私は、三ツ星製のオフアキシスガイダーOG-8を使って、天体撮影を楽しんでいます。 三ツ星のOG-8は、元々、APS-Cセンサーを用いたキヤノン製のデジタル一眼レフカメラを、 タカハシのレデューサーシステムに取り付けるために開発されたオフアキススガイダーですが、 オリジナルの接続パーツを介して、Moravian Instruments製の冷却CCDカメラにも使えるように工夫しています。

タカハシ Mewlon-250CRSのオフアキシステム

オフアキシスガイダーOG-8を取り付けた様子

ガイド状況を監視するオートガイダーには、ソニーの高感度CMOSセンサー「IMX174LLJ」を用いた「ZWO ASI174MM-Cool」を使用しています。 ごくまれにガイド星が見つからないことがありますが、ほとんどの場合、ガイド星に困ったことはありません。

QHY CCD社からも、同じセンサーを用いたオートガイダーが発売されています。 なお、私は撮影用カメラをガイド用に流用しているので、冷却タイプを使用していますが、 ガイド中は冷却機能は使用していません。 ガイド用としての用途だけなら、コンパクトで軽量な非冷却モデルをお勧めします。

Mewlon-250CRSを使って気づいた点

タカハシ Mewlon-250CRSのオフアキシステム Mewlon-250CRSを天体撮影に使っていて気付いた中で、 以上の項目で触れなかった点を以下に列挙します。

鏡筒は純正の鏡筒バンドを使用していますが、 バンドを強く締めても、子午線付近で追尾エラーが発生して星が流れて写ってしまいます。 それを防ぐため、バンドにクランピングスクリュー(特殊材質完全ボールが埋め込まれた固定用ネジ)を追加し、 鏡筒がグラつかないように4点で支持しています。

主鏡冷却ファンが装備されていますが、冬場、主鏡が外気に十分馴染むには、かなりの時間がかかり、 ピント位置が大きく移動します。 撮影開始後、しばらくしたら、ピントを再チェックするように心がけています。

口径25センチの天体望遠鏡ですが、重さは12キロと見た目よりも軽く、鏡筒長もMT-200などと比べると短いので、 遠征撮影にも使いやすいと感じています。

観望用途なら、タカハシEM-200赤道儀にも搭載することができますが、 撮影時は、タカハシEM-400やNJP、ビクセンAXD赤道儀クラスを使った方が、オートガイドの成功率が高まると思います。

まとめと雑感

ドールカーカム光学系を用いたタカハシのミューロンシリーズと言えば、 惑星の撮影専用機で、銀河や星雲の撮影には使いにくいというイメージがありましたが、 補正レンズを組み込むことによって、惑星から銀河の撮影まで楽しめる万能機に生まれ変わりました。

私は、系外銀河の撮影には、ニュートン反射望遠鏡のMT-200を使用してきましたが、 Mewlon-250CRSを購入してからは、もっぱらこの鏡筒で撮影しています。

中心像だけを比べると、Mewlon-250CRSよりMT-200の方が若干シャープに感じますが、 周辺像はMewlon-250CRSの方が良好です。 また、Mewlon-250CRSの接眼部は固定式なため、重いカメラやオフアキシスガイダーを取り付けても、 たわみが発生せず、安心して撮影できるのもメリットです。

Mewlon-250CRSは、大きさと集光力のバランスという点でも優れていると思います。 これ以上のクラスになると、鏡筒の重さは20キロ前後となり、筒も大きくなるので持ち運びが大変です。 口径25センチ程度が、遠征に使用できる、ギリギリの大きさではないでしょうか。

今後も、集光力のあるMewlon-250CRSを使って、 遠く離れた宇宙で輝く天体の撮影を、楽しみたいと思います。

タカハシ Mewlon-250 CRS のスペック

名称 タカハシ Mewlon-250 CRS
口径、焦点距離 250mm、2500mm
光学形式 コレクテッド ドール・カーカム式
口径比 f/10.0
イメージサークル 40mm
分解能、極限等級、集光力 0.46"、13.8等、1276倍
鏡筒径、全長 280mm、945mm
重さ 12kg
価格(2018年1月) ¥720,000
名称 レデューサーCR0.73×
焦点距離、口径比 1825mm、f/7.3
イメージサークル 35mm
価格(2018年1月) ¥60,000
名称 エクステンダーCR1.5×
焦点距離、口径比 3780mm、f/15.1
イメージサークル 44mm
価格(2018年1月) ¥39,500

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