天体写真の世界 > デジカメと天体写真 > 天体写真撮影用冷却CCDカメラ

冷却CCDカメラとは

性能向上が著しいデジタル一眼レフカメラのため、影が薄くなりつつある冷却CCDカメラですが、 センサーを冷却することによる低ノイズ、ダイナミックレンジの広さや16ビットの階調等、 デジタルカメラにはない魅力があります。

このページでは、これから冷却CCDカメラを購入して、天体写真撮影を始めようとしている方向けに、 購入前に知っておきたい点などをまとめています。 なお、記事の内容は、SBIG社のST-2000XM冷却CCDカメラが中心ですが、一部、他社製のカメラについても言及しています。


冷却CCDカメラについて

デジタルカメラの撮像素子に用いられているCCDは、長時間露光すると暗電流の影響で画像にノイズが発生しますが、 センサーを冷却することでノイズの発生を抑えることができます。 この特性を利用したのが冷却CCDカメラで、長時間露光が必要な天体撮影用として、天文台で広く用いられています。

冷却CCDカメラが発明された当初は、特殊で非常に高価なデジタルカメラだっため、 一般市場では販売されず、天文台でのみ利用されていました。 一般天文ファンが初めて冷却CCDカメラを購入できるようになったのは、1990年にSBIG社が「ST-4」という冷却CCDカメラを量産開始してからです。

SBIG ST-4の画素数は3万画素程度しかなく、どちらかというとオートガイダーとして製造された機器でしたが、 天体写真ファンにとっては、センセーショナルな出来事でした。 その後、1992年に天体の撮影を主目的にした「SBIG ST-6」が登場し、デジタル天体写真の幕があけました。 現在では、35ミリフルサイズよりも大きな面積の冷却CCDカメラも登場し、ユーザーの目的に合った機種を選べるようになっています。


冷却CCDカメラの外観

下の写真は、中判銀塩カメラのペンタックス67と、SBIG製の冷却CCDカメラ、ST2000XMを並べた様子です。 このSBIG製ST2000XMの撮像素子には、 約200万画素のモノクロCCDセンサーが使用されており、カラーセンサーが用いられたデジタル一眼レフカメラ「ニコンD70」などよりも、 高い解像力を発揮します。

冷却CCDカメラST2000XMを初めて手に取った時は、カメラ本体が想像よりも大きく驚いたのを覚えています。 写真でもわかりますが、ペンタックス67と同程度の大きさがあります。 カメラの重量もペンタックス67と同程度なので、天体望遠鏡に取り付ける場合は、この重さに耐えられる丈夫な接眼部が必要になります

冷却CCDカメラ外観


冷却CCDカメラのフィルターホイールについて

SBIG ST2000XMをはじめ、モノクロCCDセンサーが用いられた機種を使用して、カラー写真を最終的に得ようと思えば、 RGBフィルターを通して画像を撮影し、それらの画像をパソコン上で3色合成してカラー化しなければなりません。 この作業が手間なので、冷却CCDカメラ導入に踏み切れない方もいらっしゃるでしょう。

RGBフィルター SBIGが初めて冷却CCDカメラを発売開始した頃は、フィルター交換は手動でしたが、 現在は、複数のフィルターを取り付けて、パソコンから制御できる電動フィルターホイールが販売されています。

SBIG社のSTシリーズの場合、フィルターホイールは、冷却CCDカメラに固定できますので、取り付けると冷却CCDカメラに一体化されます。 右写真はフィルターホイールの前面フタを外した状態です。中に5枚のフィルターがセットされているのがわかります。

フィルターが取り付けられた円盤は、フィルターホイール内に設けられた小さなモーターで回ります。 実際の撮影時には、パソコンソフト上で指定フィルターをクリックすれば、希望のフィルターに変更することが出来ます。 電動フィルターホイールは、大変便利なツールですので、冷却CCDカメラ撮影にはなくてはならない存在になっています。


冷却CCDカメラのセルフガイド機能について

冷却CCDのチップ SBIG社の冷却CCDカメラには、セルフガイドと呼ばれるガイド機能が付属しています。 セルフガイドは、オフアキシスガイドの一種で、冷却CCDカメラ本体に撮影用のCCDと、 ガイド用のCCDが入っていることで実現されているガイド機能です。

右にST2000XMに使われているCCDセンサーの拡大写真を載せましたが、 上側の大きなCCDが撮影用のCCDで、下の小さなものがガイド用のCCDです。 この二つのCCDチップを利用して、撮影しながらガイドしていく構造になっています。

特に大きいセンサーが撮影専用と決まっているわけではないので、希望であれば、ソフトウェア上で逆にしたりすることも可能です。 また、大きいCCDだけ使って、デジタル一眼レフカメラで撮影する際のオートガイダーとして使用することも可能です。 セルフガイド機能は、新たにガイド鏡を載せる必要がありませんので、とても便利な機能だと思います。


冷却CCDカメラの感度

冷却CCDカメラの感度は「量子効率(QE)」という言葉で表されます。 少々難しく感じられる用語ですが、「効率がよいほど高感度である」ということに注目すればわかりやすいと思います。

下のグラフは、私の使っているST2000XMの感度表です。 光の波長によって、CCDセンサーの感度が異なることがわかります。 私の冷却CCDカメラには、コダック製のKAI-2020MというCCDセンサーが使われていますが、 量子効率グラフを見ると、長波長側は感度が低いことがわかります。 つまり、赤い散光星雲に対しては、感度が低いということがこのグラフから読み取れます。

CCDセンサーの量子効率特性は、センサーの形式や型番、製造メーカーによって著しく異なるので、 撮影対象に合う特性の製品を選べばよいと思います。 ただ、一般的に感度の高さと比例して、冷却CCDカメラの値段も上昇しますので、 予算との兼ね合いも考える必要があります。

SBIG社の製品の中では、ST-10XMは感度が非常に高く、系外銀河の撮影ファンから人気がありますが、 価格は、ST2000XMの倍程もします。 なお、ST-10XMは、ABG(アンチブルーミングゲート)という機能がないカメラです。 ABGがないカメラほど、感度が高い傾向があります。

冷却CCDの感度


冷却CCDカメラの価格

冷却CCDカメラの購入を考えた際、その決断を躊躇させるのは高い価格でしょう。 廉価版のデジタル一眼レフカメラが6万円ほどで買える時代に、冷却CCDカメラの価格は30万円以上です。 フルサイズCCDを使った冷却CCDカメラであれば、100万円程度と軽自動車並みの価格です。 数多く売れ、量産効果が得られるデジカメと比べてもいけませんが、 高い価格と天体専用という点を考えると、なかなか手を出しにくいカメラです。

また、冷却CCDカメラは、内外価格差が大きい商品の一つです。 同一商品の価格を、欧米と日本で比べると、倍以上の開きがあることも希ではありません。 こうした内外価格差が、日本国内での冷却CCDカメラの普及を妨げている可能性もないとは言えないでしょう。


冷却CCDカメラを使った撮影時に必要なもの

冷却CCDカメラの撮影時に必要なものとしては、冷却CCDカメラ本体(カラー撮影するならRGBフィルターも)、 USBケーブル、電源ケーブル、オートガイドケーブル、パソコン、電源(バッテリー)ぐらいだと思います。

今までに、SBIG製のオートガイダーST5などを使って、銀塩フィルムで天体撮影されている方でしたら、 冷却CCDカメラ以外は買い足す必要がないと思います。 実際USBや電源ケーブルは、冷却CCDカメラに付属していることがほとんどですので、 本体以外で買う必要があるものは、フィルターホイールとRGBフィルターぐらいでしょう。


冷却CCDカメラ使用の第一歩

冷却CCDカメラはUSBデバイスカメラですので、パソコンに繋いだときにパソコン側がカメラを認識する必要があります。 カメラを繋げる前に、必ず、パソコンにデバイスドライバや制御ソフトをインストールしましょう。 インストールが正常に終了して初めて、冷却CCDカメラが使えるようになります。

冷却CCDカメラが正常に動くようになったら、フィルターワーク、オートガイドなどは後回しにして、 夜になったら望遠鏡に繋いで適当に撮影してみましょう。 初めは、明るめのメシエ天体などを、モノクロで写してみるのがお勧めです。 都会の明るい星空の下でも、遠くで輝く系外銀河がパソコン画面に表れて、ビックリすることと思います。

冷却CCDカメラの購入当初は、私も初めは何もわからず怖かったですが、撮影にパソコンが必要なこと以外はそれほど複雑な機器ではないと思います。 扱いには注意しつつ、気軽に使ってみるのがよいと思います。 下の写真は冷却CCDカメラを購入して、光害の影響が著しい自宅から初めて撮ったおおぐま座の銀河です。

初めての冷却CCDカメラの写真


モノクロCCDとカラーCCDの違い

冷却CCDカメラには、モノクロセンサーのタイプと、カラーセンサーが用いられたカメラがあります。 一般撮影用のデジタルカメラは、ほとんどがカラーセンサーを用いていますが、天体用の冷却CCDではモノクロセンサーが主流です。 モノクロCCDとカラーCCDでは、どこが違うのでしょう。相違点を箇条書きにしてみました。

天体写真で多く用いらているモノクロセンサーでも、フィルターワークによってカラー画像を得ることが可能です。 研究用に使う目的でなければ、カラー写真にしたいでしょうから、ほとんどのモノクロ冷却CCDカメラユーザは、 手間と時間をかけてフィルターワークに挑戦しています。

フィルターワークを使った撮影は、同じフレーミングで、RGB画像を所得する必要があります。 一枚のセンサーでRGB画像をそれぞれ得ようと思えば、被写体が静止している必要があります。 その点、星空はガイドすれば動きませんから、天体撮影はモノクロ冷却CCDカメラ向きの撮影対象と言えます。 それに反して、人物などの一般撮影では、フィルターワークを生かして、カラー画像にすることはほとんど不可能です。 そのようなこともあり、デジタル一眼レフカメラではカラーCCDを採用しています。

カラーCCDセンサーに用いられているCCDには、CCDを構成するピクセル一つずつにカラーフィルタが取り付けられています(単板カラー式と呼ばれています)。 このカラーフィルタの配列は、ベイヤー配列というG画素が多くなった形式で、 この特殊なフィルタ配列により正確な色を再現できるようになっています。

モノクロCCDとカラーCCDを比べた場合、仮に両方のCCDサイズが同じだとしても、 カラーCCDの場合にはピクセルごとにRGBフィルタが装着されているため、1ピクセルに当たる光量が減ってしまいます。 結果として、同じSN比を得るためには、露出が長くかかってしまうことになります。

カラーCCDの良い点は、一度の撮影でカラー情報を得られることです。 自転していつも同じ面を向けていない惑星(特に自転が早い木星)の拡大撮影には、カラーセンサーが用いられた動画カメラが人気です。。 実際に惑星撮影に絶大な人気を誇った、ToUcamProもカラーCCDカメラの一つです。

モノクロCCDに比べてカラーCCDは、ナローバンド撮影は苦手です。 例えば光害地でHαフィルターを使って星雲を撮った場合、カラーCCD上ではHα光に感光するのは、Rフィルタが装着されたピクセルだけです。 その結果、G、Bフィルタ分の画像は画像補完によって処理されますから、最終的には粗い画像になってしまいます。

カラーCCDセンサーが用いられたカメラと極めてシャープな望遠鏡で星雲を撮影した場合、シンチレーションが非常に落ち着いていると、 焦点が1ピクセル上に集中してしまうことがあります。 その結果、その星の色はそのピクセルのカラーフィルタの色に依存してしまい、偽色が発生してしまいます。 これを防ぐために一般のデジタルカメラには、ローパスフィルターが付いています。 ローパスフィルターは、この焦点の集中を防ぐために像をわずかに甘くする作用があります。 それによって偽色の発生を抑えているのですが、それでも完全とは言えず、機種によっては偽色が認められることもあるようです。

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