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冷却CCDとデジタル一眼レフカメラの比較

天体写真撮影には、デジタル一眼レフカメラが一般的に広く用いられていますが、 より高品質の写真を求めるハイアマチュアは、天体用の冷却CCDカメラを撮影に使用しています。

デジタル一眼レフカメラから冷却CCDカメラへ乗り換える際、 気になるのがデバイスの違いによる性能や使い勝手の影響です。 このページでは、そうした冷却CCDカメラとデジタル一眼レフカメラの特徴を、項目毎に分けて比べてみました。 作者の見解や印象も多分に入っていますが、一つの意見としてご参考になれば幸いです。

なお、冷却CCDカメラを星景写真撮影に使うことは希ですので、 星雲や銀河を撮影する場合に限って比較しています。


冷却CCDカメラにはパソコン必須

デジタル一眼レフカメラ(以下「デジタル一眼」)と冷却CCDカメラを比べたとき、 最も大きく異なるのは、冷却CCDカメラを使う場合はパソコンが常時必要になるということです。

本体にバッテリーや記憶媒体(SDカードなど)が内蔵されているデジタル一眼と異なり、 冷却CCDカメラ本体には、電子回路と撮像素子程度しか入っていません。 そのため、カメラを制御するパソコンに加えて、外部電源と必要となります。 従って、冷却CCDカメラを天体撮影に使用すると、デジタル一眼に比べて撮影システム全体が大きくなります。

また、冷却CCDカメラは撮像素子を冷却するため大きな電力を消費します。 パソコンの電源に加えて、この冷却CCDカメラの電力をまかなうだけの電源が撮影時に必要になります。 自宅での撮影ならともなく、郊外に出かけて撮影する場合は容量の大きなバッテリーを用意する必要があります。


冷却CCDカメラにはファインダーがない

デジタル一眼には光学式ファインダーが付いていて、撮影対象を確認することができますが、 冷却CCDカメラには光学式ファインダーはありません。 ですので、天体望遠鏡に接続しても、目視で撮影対象を確認することは不可能です。

しかし、これが冷却CCDカメラのデメリットであるかどうかは微妙なところです。 撮影対象の星雲や銀河は淡いことが多く、デジタル一眼の光学ファインダーではまず確認できません。 逆に冷却CCDカメラなら、数秒の露出でもパソコンの画面上にその姿を捉えることができます。 実際に両方を使用している立場からすると、 慣れれば、冷却CCDカメラの方が素早くフレーミングできると思います。


冷却CCDカメラは高価

デジタル一眼と比べると、冷却CCDカメラは機能が少ない割に高価です。 ユーザーが多いデジタル一眼の場合は、 大量生産でコストを抑えることができますが、 冷却CCDカメラは元々研究用に受注生産されている製品ためでしょう。

天体撮影用に使われている冷却CCDカメラのほとんどは、アメリカやイギリスのメーカー製です。 そのため、購入価格は為替レートに影響され、円高の時は購入者が増える傾向があります。 また冷却CCDカメラは、内外価格差の大きな製品の一つで、 現地価格と国内代理店価格に大きな開きがあります。

モノクロタイプの冷却CCDカメラを購入してカラー作品を撮りたい場合には、 別途カラーフィルターと、それらのフィルターを入れるフィルターホイールが別途必要になります。 このフィルターやフィルターホイールだけでも、 最新のフルサイズデジタル一眼レフカメラを購入できるほどの価格になることがあります。


デジタル一眼はカメラマウントで接続できる

天体望遠鏡各メーカーは、天体望遠鏡とデジタル一眼を接続するためのカメラマウントを用意しています。 デジタル一眼のメーカーによってマウント形状は異なるものの、 これを利用すればデジタル一眼をメーカー所定の位置に簡単に接続できます。

それに比べて、冷却CCDカメラを使う場合には、ユーザーが接続方法を考えなければなりません。 一部のメーカーを除くと、冷却CCDカメラメーカーは元々研究用カメラとして冷却CCDカメラを製造販売しています。 そのため、利便性が考えられている製品は希で、 ユーザー側が工夫して天体望遠鏡に取り付けなければなりません。

この望遠鏡への接続は、ただ単に繋がれば良いというものではありません。 使用するコンバーションレンズによって、光学系のバックフォーカスが変わってくるので、 定められた位置にカメラを固定する必要があります。 最近では、望遠鏡販売店の方で便利な各種マウントアダプターを用意していることもありますが、 そうしたものが利用できない場合は、ユーザーが頭を悩ますことになります。


14ビットと16ビットの階調差

デジタル一眼のRAW画像は、14ビットA/D変換で保存されます。 それに比べて冷却CCDカメラの画像は、16ビットA/D変換が普通です。 一見小さな差に見えますが、これが淡い天体を撮影したときの作品の最終結果に影響を及ぼします。

まずこのビット(bit)というのは、 黒から白へのダイナミックレンジをどれだけ細かいステップで分けるかということです。 14ビットでは2の14乗ですので、16384段階のステップで分けることになります。 一方、16ビットでは、65536段階のステップがあることになります。 ステップ数にして比べてみると、4倍の差があることがよくわかります。 この差は、淡い星雲を撮影した画像を処理するときに大きな差となります。

一般写真に比べて、星雲などの天体は極めて暗く、夜空のバックグラウンドに溶け込むほどです。 その証拠に、デジタル一眼で撮影した生画像を見ても、 一部の明るい天体を除いては映っているかどうかわからないほどです。 これを画像処理のレベル補正コマンドを使って強調し、明るく見応えある写真に仕上げていきます。

例えば馬頭星雲を写した時、星雲のデーターが全体の階調の100分の1であったとします。 この100分の1の部分を引き延ばして強調するわけですので、 全体情報の100分の1の段階だけで馬頭星雲は表示されることになります。 すなわち、デジタル一眼なら163段階になり、冷却CCDカメラなら655段階のステップだけが残ります。 モニターの階調は通常256段階ですので、デジタル一眼では階調飛びが避けられなくなります。 一方、冷却CCDカメラの方はまだ余裕があるので、階調豊かな画像を表示できることになります。

上は極端な例ですが、こういった視点から考えても、 デジタル一眼と冷却CCDカメラの2ビットの階調差は大きいと言えます。 明るい天体ならそれほど大きな違いは出てきませんが、 淡い部分を階調豊かに表現しようと思うと、冷却CCDカメラが有利となります。


16ビットのデジタル一眼は発表されるか

予想の域を出ませんが、これについては難しいと思います。 一般的な写真の領域で、天体写真のような強調処理をする対象はほとんどないためです。

一般に暗いシチュエーションでの撮影と言っても、星雲の写真に比べれば十分明るいため、 適正な露出時間で撮影を行えば、現在のデジタル一眼のダイナミックレンジを十分に使えます。 14ビットRAWでも相当な画像処理の耐性がある画像が得られますので、 16ビットA/C変換を導入するメリットは少ないでしょう。

もし、16ビットA/C変換がデジタル一眼のスタンダードになれば、 階調表現という点では冷却CCDカメラに並ぶことになります。 そうなれば、ハンドリングの良さと手に入れ易さから、デジタル一眼の人気はますます向上すると思われます。 もしかしたら、冷却CCDカメラは天体撮影用に使われなくなるかもしれません。


冷却CCDとデジタル一眼の感度

デジタル一眼にはISOを設定する機能があり、ユーザーが目的合わせた感度を自由に設定することができます。 一方、冷却CCDカメラにはそういった機能はなく、いつも同じ設定で撮影することになります。

冷却CCDカメラの撮像素子にはいろいろなCCDセンサーが用いられていて、 その製造メーカーや形式によって感度が異なっています。 この感度のことを量子効率と呼んでいますが、この特性曲線はCCD製造メーカーから発表されていて、 これを参照することで、ユーザーがカメラの感度を予想することができます。

デジタル一眼の場合は量子効率特性を参照することは難しいですので、撮像素子自体の感度はわかりません。 カメラにはISO感度の設定がありますが、 このISO感度というのもカメラ内の増幅回路で信号を増幅しているに過ぎませんので、 本来の量子効率とはまた別のものです。

デジタル一眼と冷却CCDのどちらが感度がいいという議論が起こりますが、 使われている撮像素子の種類で変わってくるので一概に言えないと思います。 例えば、KAF3200(CCDの種類)のような高感度のチップの場合は、圧倒的に冷却CCDカメラの方が高感度です。 しかし、冷却CCDカメラもカラータイプになれば、モノクロタイプに比べて一気に感度が落ちてしまいます。


カラータイプの冷却CCDカメラ

冷却CCDカメラを購入する方のほとんどは、モノクロタイプのセンサーを選ぶ傾向があります。 それは、カラー撮像素子を使っているデジタル一眼では得られない解像感を得たいからでしょう。 カラー冷却CCDのメリット、デメリットとはなんでしょうか。

カラー冷却CCDカメラのメリットとしては、カラー写真を仕上げる際に別途フィルターを用意する必要がないことがあげられます。 カラー画像を仕上げるためのLRGBフィルターは、サイズが大きなものになると10万円前後もしますので、 かかるコストが大きく変わってきます。

次に、フィルターを入れるフィルターホイールを接続する必要がないので、 長いバックフォーカスが必要なくなり、 取り付ける鏡筒の自由度が広がることがあげられます これは補償光学装置(AO)などを使いたいときには特に有利になります。

カラー冷却CCDカメラのデメリットとしては、 同画素数のモノクロセンサーのカメラと比べると、写真の解像度が落ちてしまうことです。 これはRGBフィルターがセンサー上にベイヤー配列で並べられていて、 それらの情報を元にカラー画像を作り上げるため避けられないことです。

その他には、Hαフィルター等を使ったナローバンド撮影をする場合は、 フィルターを2度通すため感度が著しく悪くなることです。 モノクロタイプに比べて、量子効率の低いチップが多いことなどがあげられます。


モノクロタイプのデジタル一眼レフカメラ

市販されているデジタル一眼レフカメラには、 モノクロモードと呼ばれる撮影モードが備え付けられている製品が多くなりましたが、 これはカラーセンサーで得られた画像を画像処理エンジンでモノクロ化するだけのものであって、 モノクロセンサーが使われた冷却CCDカメラとは根本的に異なるものです。

デジタル一眼レフカメラにモノクロームセンサーが使われることはまずないだろうと思っていましたが、 2012年の夏、ライカからライカMモノクロームが発売されました。 このカメラには、1800万画素の35ミリフルサイズモノクロセンサーが用いられていて、 モノクロ撮影専用機として発売されています。 価格は80万円前後と非常に高価ですが、冷却CCDカメラと比べれば安価と言えます。

もし、今後こうしたモノクロセンサーが使われる機種が増えていけば、モノクロセンサーも安価になって、 冷却CCDカメラの価格自体も下がってくるかもしれません。 また、デジタル一眼レフカメラを使って、冷却CCDカメラのようなフィルターワークを楽しめる日も来るでしょう。 是非キヤノンやニコンからもこうしたモノクロ撮影専用機を発表して欲しいものです。

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