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ニコンD810Aの使用レビュー

ニコンD810Aは、2015年5月末に発売開始された、天体撮影用のデジタル一眼レフカメラです。 通常のニコンD810と比べて、星雲が放つHα光の感度を高めているのが特徴で、 赤い星雲をより鮮明に写し出すことができます。

以前、キヤノンから天体撮影用の機種として、EOS20Da、EOS60Daが発売されたことがありましたが、 ニコンから天体撮影用のモデルが発売されたのはD810Aが初めてです。 また、EOS20DaとEOS60DaはどちらもAPS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラでしたので、 35ミリフルサイズとしては、D810Aが初のメーカー純正天体撮影用機となりました。


ニコンD810Aの概要

ニコンD810Aボディ ニコンD810Aは、同社のデジタル一眼レフカメラD810をベースとしたモデルです。 撮像素子には、有効画素数3,635万画素の35ミリフルサイズセンサーが用いられており、 基本的な性能面はD810と変わりません。 しかし、ニコンD810Aには、Hα線に対応する専用光学フィルターが用いられているため、 D810と比べて、赤い散光星雲をより鮮明に写し出すことができます。

機能面では、ニコンD810Aには、天体撮影に便利な機能がいくつか追加されています。 長時間露光マニュアルモード(M*モード)、赤色照明の水準器、プレビュー機能などで、 これらはD810には設定のなかったものです。

また、D810のISO感度はISO64〜12800の設定でしたが、D810AではISO200〜12800に変更されています。 星空は暗いため、天体撮影ではISO800〜ISO3200がよく用いられます。 D810Aでは、より天体撮影に適したアルゴリズムに変更されたのかもしれません。


赤い星雲の写りの良さ

天体撮影ファンにとって、最も気になるのはD810Aの赤い星雲の写り具合でしょう。 ニコンD810と、赤い星雲の写り具合を比較してみました。 下は、同じ機材を使って同日の夜に撮影した比較写真の一部を拡大したものです。 こちらをご覧いただくと、D810Aの方がD810に比べて、赤い星雲の写りが良好であることがわかります。

ニコンD810AとD810の比較

次にフィルターを天文用に換装した改造デジカメと比較してみました。 実は、以前、キヤノンから発売されていたEOS20DaとEOS60Daは、天体撮影専用機という謳い文句ながら一般撮影も考慮した仕様だったため、 赤い星雲の写りが中途半端という意見も見受けられました。 実際、EOS20Daをさらにフィルター改造する天体写真ユーザーもいました。 ニコンD810Aの場合はどうなのか、比較写真を下に掲載しました。

ニコンD810Aと天体改造カメラの比較

上の写真から、D810Aの赤い星雲の写り具合は、天体撮影用に改造したEOS60Dとほぼ同じと考えられます。 実際にD810Aを使って、その他の赤い星雲も撮影しましたが、 改造デジカメと比べてHα光の感度が低いという印象は特に受けませんでした。 ただ、ホワイトバランスの関係もあると思いますが、改造カメラと比べると、 赤い星雲の色合いが、若干ピンクっぽく発色するように感じられました。


D810Aのノイズ

星雲や星団撮影の露光時間は、300秒を超えることが一般的です。 そのため、デジカメの長時間ノイズの量は、天体撮影ファンにとって大変気になる点です。 ノイズの少ないカメラを選ぶことが、良い天体写真を得るための重要なポイントになるからです。

キヤノンEOS6Dは、長時間ノイズの少ないデジカメとして知られ、天体撮影や星空撮影の分野で人気があります。 EOS6Dと比べて、D810Aのノイズの量はどうでしょうか。 キヤノンEOS6Dと、ニコンD810Aの長時間ノイズを撮り比べてみました。

以下が、その比較画像です。 モニターに表示されたままの画像では分かりにくいため、画像を同じ条件で強調し、 中央部を切り取ったトリミング画像を載せました。
※ステライメージ7のレベル補正コマンドで画像強調(約5倍に圧縮)しています。

撮影条件 ニコンD810A キヤノンEOS6D
ISO1600
600秒
外気温15℃
ニコンD810Aの長時間ノイズ キヤノンEOS6Dの長時間ノイズ
ISO3200
600秒
外気温15℃
ニコンD810Aの長時間ノイズ キヤノンEOS6Dの長時間ノイズ
ISO6400
600秒
外気温15℃
ニコンD810Aの長時間ノイズ キヤノンEOS6Dの長時間ノイズ

2020万画素のキヤノンEOS6Dと比べると、ニコンD810Aには、有効画素数3,635万画素が用いられているため、 画素ピッチが小さく、ノイズ面では不利ですが、上記の結果はそれを感じさせません。 実際に星空を撮影した画像を見てもノイズは少なく、気温が低ければダーク減算も必要ないくらいでした。


便利な長時間露光マニュアルモード

長時間露光モード 長時間露光マニュアルモード時は、30秒を超える露光時間の設定が可能です。 具体的には、60秒、120秒、180秒、240秒、300秒、600秒、900秒でシャッターを切ることができます。

他のデジカメの場合は、30秒を越える露光を実施する際には、 リモートコントローラーを使ってバルブ撮影する必要がありましたので、これは大変便利な機能です。

この機能は、特に星景写真を撮るときに便利です。 リモートコントローラーは、手ブレを防ぐこともできて便利ですが、撮影に持って行くのを忘れたり、コードが風に揺れて邪魔になることもあります。 また、この機能は、荷物を極力減らしたい海外遠征や、山岳星空写真の撮影時にも便利なのではないでしょうか。

最近のデジカメは長時間ノイズが減り、夜景撮影でも数分の露光時間を用いることができます。 是非、他の一般的なデジカメにも、30秒を超えるシャッターの制御機構を追加していただきたいと思います。


D810A独自のその他の機能

D810にも水準器表示機能は付いていますが、D810Aには赤色照明で光る水準器が用いられています。 夜間、暗順応した目には、日中は気にならないデジカメの光もまぶしく感じられます。 それを防ぐため、D810Aの水準器には赤色照明が用いられています。

星景写真撮影にとって、水準器は欠かせないアイテムです。 D810Aの水準器は、赤色照明の上、半押しタイマーがOFFになるまで赤く点灯し続けますので、大変便利です。 暗い中でも見やすく、星空撮影の水平出し時に有効に働きます。

プレビュー機能は、シャッタースピードを30秒に設定したとき相当の画像をライブビューモードで確認できる機能です。 星空は暗いため、通常のライブビューではほとんどの星は表示されず、構図合わせが難しく感じます。 それを容易にするための強化ライブビューとも呼べる機能です。

肉眼で見た時と同程度の星空がモニターに映し出されると思われるかもしれませんが、 使用するレンズのF値にもよりますが、実際にはそこまで感度が上がるわけではありません。 また、望遠鏡を使った直焦点の場合でも、 星雲がライブビューでモニターに表示されるわけではありません。 画面上のノイズが多いため、少々見づらいのも残念です。


ニコンD810Aを使用して気づいた点

ニコンD810Aで撮影したわし星雲 ニコンD810Aを星空や天体の撮影に使用して気付いた中で、 以上の項目では触れなかった点を、以下にまとめました。

天体望遠鏡を使って星雲や星団を撮影する時、光学系の種類によっては、 画像最四隅の星像にスパイダーによる回折像ようなものが出ることがありました。 ニコン用のカメラマウントの直径が、他社のデジタル一眼レフカメラの場合と比べて小さいのが原因かもしれません。 なお、カメラレンズで撮影する場合は、そのような現象は起きませんでした。

シャッターを切った際のミラーショックが小さく、シャッターのブレが発生しにくいように感じました。 ミラーアップ機能も用意されているので、長焦点で狙う場合はミラーアップ後にシャッターを切ることもできます。

フィルターを換装した改造カメラと比べると、輝星の周りに発生するゴーストが少なく、 すっきりとした仕上がりになります。 馬頭星雲やアンタレス付近など、明るい星が入る構図も積極的に狙うことができるでしょう。

3,635万画素の解像度は素晴らしく、モノクロCCDセンサーが用いられたSTL-11000M冷却CCDカメラよりも解像感があるように感じます。 ただその分、RAW画像一枚当たりのファイル容量が大きく、 私のパソコンでは、24枚以上の画像を同時に扱うと、パソコンがフリーズしてしまうことがありました。

ホワイトバランスが優れているので、JPEG撮って出しの星空写真でも、 自然な色合いで仕上がります。 また、風景や人物といった一般的な被写体の撮影にも、厳密な場面でなければ、十分使用することができます。 特にポートレートでは、肌色が少しピンクがかり、温かみが出るので個人的に好印象です。


まとめ

ニコンD810Aを使って、実際に様々な天体や星空を撮影していますが、 ノイズと解像感のバランスが優れた、使いやすい天体用デジカメだと思います。

画素数だけで言えば、キヤノンEOS5Dsの方が勝っていますが、 星空撮影用としては、ノイズの発生量も気になるところです。 現状では、ニコンD810Aが星空撮影に向いた、最も解像力の優れたカメラと言えるのではないでしょうか。

天体望遠鏡の機種によっては、周辺星像に回折像が入ることが希にありますが、 輝星のゴーストが発生しにくいのは、天体写真ファンにとってありがたい点です。 また、ホワイトバランスが優れているため、撮って出しの画像でも色合いが自然で、 初心者でも使いやすいカメラに仕上がっていると思います。

天体撮影の分野では、長らくキヤノンのデジカメが、低ノイズということで高いシェア率を誇っていましたが、 最近は、ニコン製のデジカメがノイズ面でキャノンのデジカメに追いつき、追い越しつつありました。 そこへ持って来てのニコンD810Aの登場です。 ニコンD810Aの登場は、ニコンユーザーだけではなく、 天体写真ファン全体にとって嬉しいニュースだと思います。

ニコンD810A
ニコンD810A

ニコンD810Aは、2015年5月末に発売開始されたニコン初の天体撮影専用のデジタル一眼レフカメラです。 従来のメーカー純正モデルと比べて、赤い星雲の写り具合を改造機と同等程度まで高めており、 ハイアマチュアにも満足できる天体撮影用カメラに仕上がっています。

35ミリフルサイズセンサーが用いられたニコンD810がベース機となっているため、 価格が高いのは残念ですが、画素数が3630万画素と多く解像度が高いにもかかわらず、長時間ノイズが少ないのが魅力です。 また、天体撮影に便利な長時間撮影モードなどを備えています。 モニターは固定式ですが、長く愛用できるメーカー純正の天体用カメラだと思います。

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ニコンD810Aのスペック

名称 ニコンD810A
有効画素数 3635万画素
撮像画面サイズ ニコンFXフォーマット(35.9x24mm)
記録メディア SDカード、CFカード
連続撮影枚数 最高5コマ/秒(FXモード時)
ファインダー視野率 100%(FXモード時)
常用ISO感度 ISO200〜12800
液晶モニター 3.2型,約123万ドット
動画機能 1920×1080:60p/50p/30p/25p/24p
重量 約880g(本体のみ)

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