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ギリシア神話

ギリシア神話と星空のイメージ ギリシア神話は、古代ギリシア時代の民族が、様々な逸話などと組み合わせて創りあげた神々の物語です。 どのような形で神話が伝わったのかははっきりと伝えられていませんが、紀元前9世紀頃になってから、 伝承という形で広まったのではないかと考えられています。

私は子供の頃から星座に興味があったので、ギリシア神話に関する絵本や本、 果ては演劇のようなものまで、読んだり見たりしてきました。 自然とギリシア神話についての知識は増え、ゼウスが最大の神であること、 怪力ヘラクレスの12の冒険の話、地獄には番犬ケルベロスがいる・・・ というように、星空の知識と共にギリシア神話の物語が蓄積されていきました。

大人になってから改めてギリシア神話に触れてみると、 ギリシア神話の中の世界というのは、とんでもない世界だということに気付きました。 大神ゼウスは、たくさんの女性と関係を持っている非道徳的な神です。 またその妻ヘラは、凄まじいほどのヤキモチ焼きで、多くの人間や勇者を動物に変えています。 このような所行を平然と語っているのが、ギリシア神話の魅力の一つなのかもしれません。

しかし、これらを知っても、ギリシア神話のことを「酷い話だ」「とんでもない世界だ」と憤慨することはありませんし、 勇者ヘラクレスやゼウスになってみたいとも思いません。 全く理屈通りにいかない世界ですから、ギリシア神話の伝記を読んでも、感動することもありません。 神話とはこういうものなのだろう、と思うようになりました。

とはいっても、古くから語られ伝えられた神話の世界には、何かしら不思議な魅力があるのも事実です。 ちょっと遠く離れたところから・・・例えば天上界にいるゼウスのような気持ちになって、 古代ギリシアの星空を想像しながら、ギリシア神話を読んでみると楽しいのではないでしょうか。


ギリシア神話の登場人物と名前

ギリシア神話には数多くの人物が登場しますが、同じ人物でもギリシア神話での名称の他に、 ラテン語名、英語名などがあります。 これは古代ローマの人々が、ギリシア神話の神々をローマの神々として取り入れたり、 自分建ちの神々とギリシア神話の神を同化させたためです。

さらにルネサンス期以降は、ギリシア神話が英語圏に広まり、英語読みが一般的になりました。 日本には英語圏からギリシア神話が伝えられたので、今でも英語読みの方が馴染みがある名前も多いと思います。 以下に主要な登場人物の名前の一覧を掲載しました。

ギリシア神話での名称 ラテン語名 英語名
ゼウス ユピテル ジュピター
ヘラ ユノ ジュノー
ポセイドン ネプトゥヌス ネプチューン
アプロディテ ウェヌス ヴィーナス
エロス クピド or アモス キューピッド
アレス マルス マーズ
アテナ ミネルヴァ ミナーヴァ
アポロン アポロ アポロ
ヘルメス メルクリウス マーキュリー
クロノス サトゥルヌス サターン
ヘラクレス ヘルクレス ハーキュリーズ

一覧表で比較してみると、金星の別名ヴィーナスがギリシア神話のアプロディテ、 火星マーズはアレス神のことであることがわかり、興味深いです。


オリンポス山と十二の神々

天地創造の戦いの後、オリンポス山に神の都が作られて天地が支配されることになりました。 入口には女神が守る大きな門が建てられており、 神々が地上に降りたり、戻ってきたりする度にこの門は開かれるようになっていました。 オリンポスの神々の血の中には、不老不死の液体が巡っていました。 神々の中には、鎧甲を着けているものもいれば、美しい織物を身につけている女神もいました。

神々と人間の父である大神ゼウスは、天地一切の支配者ですから、何事も成し遂げる力を持っていました。 自然界に秩序を作り、人間達の正義や幸福というものを守ってくれる神です。 ゼウスは神の雷や、盾を持っていましたが、それらはゼウスの力を示すものでした。

ゼウスの妻はヘラです。ヘラはゼウスの姉妹で、女神のうちでも最高の神として崇められています。 ゼウスは多くの女神や人間と関係を持つ多情な神でしたから、嫉妬深いヘラはたいそう怒りました。 ヘラが、そのゼウスの相手を懲らしめた物語は沢山あります。

アテナは軍神と言われますが、元々は平和を好む知恵の女神として知られています。 技芸や農業を愛する神です。 太陽神アポロンは、ゼウスとレトーの子で、音楽や詩をはじめとした芸術に長けていたので、 多くの恋物語が残っています。 ギリシア神話の中でも、一二を争う美男として描かれています。 軍神アレスは、ゼウスとヘラの間の子で、恐怖や戦慄があるところに現れる神です。 よく禿鷹や山犬を連れた姿で描かれます。

火の神ヘパイストスは、姿が醜い神として描かれていますが、鍛冶屋の神です。 オリンポスの宮殿や神々の武器まで、全て彼が作ったものです。 彼の妻アフロディテは、美の女神として知られています。 美と愛の女神ですから、動物や人間の繁殖までもつかさどり、女性の魅力はこの女神が支配しています。 彼女は白鳥や薔薇、菩提樹などを愛しました。

オリンポス山には、その他にも愛の神エロスや、炉の女神ヘスティア、 大地と穀物の神デメテールをはじめとした人々が住んでいました。 オリンポス山にはいつも雪が積もり、その頂上は雲に覆われて雷がほとばしっていました。


オリオンと七人の娘

オリオンという美男の狩人がいました。彼は体が大きく、狩りの腕は世界一とまで言われました。 オリオンはサソリに刺されて死んだことで有名ですが、生前に夢中になっていた七人の娘がいます。 アトラスの娘達の七人姉妹です。

この七人姉妹は、月の綺麗な夜になると森の中でその光が差し込む広場で舞を踊りました。 それは本当に美しい踊りなので、その姿を一目見たオリオンはその娘達の虜になります。 オリオンは、彼女たちを近くで見ようと近寄ります。驚いた姉妹達は、森の中を走って追いかけます。 まるで狩りをしているかのように、オリオンは血走った目で追いかけるのです。

もう一息で追いつかれると思ったとき、七人姉妹は月の神アルテミスに救いを求めます。 その願いを聞き入れたアルテミスは、七人姉妹を七羽の白い鳩に変えてしまいます。 彼女たちは天高く飛び、やがて天空に上げられて星になります。 これがセブンスター、日本では「すばる」と呼ばれている星の集まりです。

オリオンも後に天空に上げられオリオン座として輝いていますが、 その棍棒の先にはセブンスターが輝いています。 天空に上っても、彼女たちをオリオンは追いかけ続けているのかもしれません。


ヘラクレスの十二の難業

怪力ヘラクレスは、大神ゼウスとアルクメネの子として生まれます。 子供の頃から怪力を誇り、大神ゼウスの妻ヘラが差し向けた蛇を握りつぶすほどでした。

18歳になったヘラクレスは、並ぶもののない程の力持ちになります。 早速その怪力を生かして、キタイロンに住む獅子狩りを行います。 キタイロンの獅子が王の牛を荒らして仕方がなかったからです。 50日間宮殿に泊まって獅子退治を成し遂げて以来、 ヘラクレスは獅子の頭を兜にしてその革をまとうようになりました。

彼はケンタウロスのケイロンから教育されたおかげか、正しい道を歩み続けます。 オリンポスの神々もたいそう彼を気に入って、鎧や剣をヘラクレスの与えるほどでした。

やがて彼の住むデバイ国が独立すると、またもやヘラの魔の手がヘラクレスに忍び寄ります。 ヘラは彼を狂気の人間に変えてしまい、自分の子を炎に投げ入れて殺してしまいます。 正気に戻った彼は驚き、アポロンの神託を仰ぎます。 この時受けた神託が、エウリュステウスの命令で与えられる十二の難業をするということでした。 これ以来、彼はこの難業を成し遂げようと全身全霊で取り組みます。