てんびん座 Libra

てんびん座は、おとめ座とさそり座の間で輝く星座で、春の終わりから夏にかけて見頃を迎えます。 春の星座と紹介される場合が多いですが、書籍によっては、夏の星座に分類されることもあります。

てんびん座は、ギリシア神話に登場する女神アストレアが持っている、 人の善悪を裁くための天秤をあらわしています。 プトレマイオスの48星座にも登場しているてんびん座ですが、 さそり座とおとめ座という有名星座に囲まれているため、目を向けられることの少ない星座です。

てんびん座を見つけるには、おとめ座のα星スピカとさそり座のα星アンタレスが良い目印になります。 スピカとアンタレスを中間付近を眺めると、 3つの暗めの星が、「く」の字を反対にしたような「>」の形に並んでいるのに気づくと思います。 これらは、てんびん座を構成する星々です。 てんびん座は暗い星から構成されているので、都会からは見づらく、 星空の綺麗な郊外で、星図片手に確認した方がよいでしょう。

てんびん座は、黄道12星座の一つですので、星占いの世界では「天秤宮」と呼ばれています。 9月23日から10月23日生まれの方が、天秤宮にあたるとされています。


ギリシア神話でのてんびん座

ギリシア神話の世界では、人間ははじめ「金の時代」と呼ばれる世界に暮らしていたとされています。

金の時代の気候は、一年中暖かくおだやかで、人々は何も働かなくても、穀物や果物がよく実り、 食べるものはたくさんありました。 泉からは、ぶどう酒やミルクがあふれ出て川となり、人々は好きなときに、 好きなだけ飲んだり食べたり出来たのです。

この頃の人間の心は平穏で、争いごともなく、皆は平和に仲良く暮らしていました。 神々も天界から降りてきて、人間と共に暮らし、正義の女神アストレアも人間の親しい友人でした。

やがて、クロノスの率いるティタン族が大神ゼウスに倒され、ゼウスが世界を治めるようになりました。 大神ゼウスは、世界を4つの季節に分け、人々は種まきや収穫のため、汗を流して働くようになりました。 次第に、農耕の技術の差などにより、人々の生活に格差が生まれてきます。 力の強いものが台頭し、弱いものから作物を奪っていくようになりました。 なお、この時代は「銀の時代」と呼ばれています。

人々の行いに呆れた神々は天界へと去っていきますが、アストレアは地上に残り、 人々への説得を続けました。 やがて、「銅の時代」が訪れます。 人間は銅で様々な道具を作り、富を蓄え、同時に暴力を振るうようになりました。 アストレアは天秤を使って、争いを裁こうとしましたが、人間には何が本当に正しいのかが、 わからないようになりつつありました。

そして「鉄の時代」が訪れます。 人間は鉄を使って武器を作るようになり、争いは一層激しさを増しました。 一人、地上に残って力を振るい続けたアストレアですが、 とうとう人間に愛想をつかして、天界へと戻ってしまいました。 その時、アストレアが持っていた天秤は星となり、空から地上の人間たちを見守るようになったということです。


てんびん座の主な星

ズベン・エル・ゲヌブ

ズベン・エル・ゲヌブは、てんびん座のα星で3等級の星です。 青白い色をしている星で、肉眼二重星なので、空の綺麗な場所で良く見ると、 二つの星がくっついているように見えます。

ズベン・エス・カマリ

ズベン・エス・カマリは、てんびん座のβ星です。 ズベン・エス・カマリとは「北の爪」という意味で、 α星のズベン・エル・ゲヌブとは「南の爪」という意味です。

実は、古代ギリシア時代では、てんびん座は、さそり座の一部だったといわれています。 そのため、てんびん座の二つの星に、さそりの爪の名称がつけられています。

言われてみると、現在のさそり座は、爪の部分が短くバランスが悪いような気がします。 てんびん座までサソリの爪を延ばすと、星座の迫力が一層増すような気がします。


双眼鏡や天体望遠鏡で見るてんびん座

ズベン・エル・ゲヌブ

肉眼二重星のズベン・エル・ゲヌブを双眼鏡で観望してみましょう。 肉眼では分離しづらい場合でも、双眼鏡を使えば二重星であることが容易に分かります。

天体望遠鏡を使用するときは、低倍率がお勧めです。 2.8等星と5.2等の大小の星が、約3.9分の離隔で隣り合っているのが分かると思います。