こと座 Lyra

こと座の写真 こと座は夏を代表する星座の一つで、α星のベガは、夏の大三角を形作る星の一つでもあります。

こと座は小さな星座ですが、ベガを中心としてよくまとまっている星座のため、 星の並びも掴みやすく、夏の天頂付近でよく目立ちます。 夜空の明るい都会でも見つけやすい星座の一つです。

α星のベガは、七夕物語に登場する織姫(織女)にも見立てられています。 日本では、牽牛星のわし座アルタイルと共に親しみがある星ではないでしょうか。 なお、ベガは全天で5番目に明るい恒星で、都会の夜空でもよく目立ちます。

こと座はプトレマイオスの48星座の中にも登場し、星座絵では西洋のハープに似た竪琴が描かれています。 日本には琴という楽器がありますので、ハープ座と呼んだ方がしっくりくるかもしれません。


ギリシア神話でのこと座

こと座の物語は、数多いギリシア神話の中でも人気のあるストーリーの一つです。 悲しげな物語が人々の興味を引きつけるのでしょう。

こと座の神話は、竪琴の名手オルフェウスとその美しい妻エウリディケに関わる物語です。

オルフェウスは、芸術の神アポロンの息子で、ギリシア一番の琴の引き手でした。 オルフェウスが琴を鳴らすと、ライオンも猫のようにおとなしくなり、 川の水も聞きほれて、流れを止めると言われていました。

オルフェウスには、美しい妻エウリディケがいました。 二人は結婚以来幸せに暮らしていましたが、エウリディケは野原で花を摘んでいるときに毒蛇にかまれ、 死んでしまいます。 これを知ったオルフェウスは狂ったように嘆き、そして妻を取り戻そうと決心し、冥界まで下っていきます。

冥界に下ったオルフェウスは、冥界の王ハデスに妻を帰して欲しいと懇願します。 最初はかたくなに拒否していたハデスですが、オルフェウスの引く美しい竪琴の音に魅了されてしまい、 エウリディケを地上に戻すことに同意します。 ただしここで「冥土から地上に上がるまでは決して振り返ってはならない」と条件が付けられます。

喜んだオルフェウスは、地上に続く道を歩き続けますが、途中で妻が本当についてきているかどうか不安になります。 あともう少しで地上というところで、我慢しきれずに振り返ってしまい、 妻は叫び声と共に冥界に連れ戻されてしまいます。

オルフェウスは自分の犯したことを後悔し、気が狂って川に身投げしてしまいます。 その音楽の才を惜しんだゼウスが、オルフェウスの竪琴を天に上げ、こと座としたということです。

オルフェウスの悲劇は、数多くの作品のテーマに使われています。 映画では、マルセル・カミュ監督の「黒いオルフェ」があります。


七夕物語

日本でお馴染みの行事「七夕祭り」は中国の伝説を下にした行事です。 唐の時代、中国では7月7日の夕方に、織女と牽牛をまつり、女性達が針仕事や琴、 文字などが上手になるように祈りました。 この行事が奈良時代に遣唐使によって日本に伝わり、日本でも七夕祭りが行われるようになりました。

七夕物語は以下のような伝説です。

天の川の館に天帝の美しい娘が住んでいました。 彼女は他の誰にも織れない美しい布を毎日織っていたため、織女(織姫)と呼ばれていました。

天帝自慢の娘でしたが、織女には友人がいませんでした。 そこで結婚相手として目に留まったのが、天の川の西の辺に住む牽牛でした。 牽牛は真面目でよく牛の世話をする若者でしたので、天帝は二人を引き合わせます。 二人は一目でお互いのことを好きになり、結婚しました。

二人はとても幸せな結婚生活を営み始めますが、一緒になることに夢中でお互いの仕事を忘れてしまいました。 それを見た天帝は、二人を引き離し、会う事を禁止しました。

しかし、あまりに悲しむ娘を見て、天帝は一年に一度だけ会う事を許しました。 それが7月7日で、夜になるとカササギの群れが天の川に翼を並べて橋になり、 お互いがその橋を渡って会うことができるようになりました。

なお、7月7日の夜に雨が降ると、天の川の水かさが増して織女は川を渡ることができません。 日本では新暦の7月7日に七夕祭りのイベントが開催さることが多いですが、 この時期は梅雨にあたり、晴れて星が見えることは滅多にありません。 織女と牽牛がかわいそうなので、中国のように旧暦の7月7日に、 七夕祭りを開催するように変更した方がいいかもしれませんね。


こと座の主な星

ベガ

こと座のα星で0等星の非常に明るく輝く星です。 日本では織姫星としても知られていて、望遠鏡で観測すると青白い光を放っています。 公共天文台の天体観望会等でよく観望対象に上げられる星で、その美しさに魅了される人は少なくありません。 実際、「どの天体が興味深かったか?」というアンケートなどでも上位に入ってくる天体です。


双眼鏡や天体望遠鏡で見ること座

M57

リング星雲の愛称で知られている惑星状星雲です。 小さな星雲なので、双眼鏡では星と区別がつかず、ドーナツの形を見ようと思うと天体望遠鏡が必要です。 50倍強の倍率で観察すると、中央に穴が空いた星雲であることがわかります。 思ったよりも明るいため、天体望遠鏡を使えば都会でも観測することが可能です。