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天体写真向きの天体望遠鏡の選び方

天体写真に魅了されると欲しくなるのが、天体写真を撮るための天体望遠鏡です。 「うーん、見るのと撮るのも同じ感覚で選べばいいだろう」と思って、 天体望遠鏡を選ぶと、天体写真に使いづらい機材を買ってしまうことがあります。

このページでは、私の経験からチェックするべきポイントを書いています。 天体写真を撮るための天体望遠鏡となると結構な金額の出費になってしまいます。 いろいろ調べて、なるべく後悔の少ない買い物をしたいですね。


天体望遠鏡を載せる架台は重要です

ドイツ式赤道儀 天体望遠鏡で天体写真を撮る時に必要となるのが、星を追いかけてくれる赤道儀(「せきどうぎ」と読みます)という架台です。 この赤道儀にもいろいろな種類がありますが、日本では右写真のようなドイツ式赤道儀が一般的です。

ドイツ式赤道儀と言っても、いろいろなメーカーから販売されていますが、観望だけならたいていの赤道儀で大丈夫です。 しかし天体写真撮影となると、この赤道儀の精度の善し悪しが、写真の完成に大きな影響を与えます。

さて、ここに天体写真コンテストの撮影データーがあるとします。 この機材データー欄をよく見てみてみると、あることに気づくと思います。

例えば、掲載された写真がビクセンのR200SSという天体望遠鏡で撮影されていたとします。 それをビクセンのカタログで調べると、GP2赤道儀とのセットで販売されています。 しかし、コンテストの機材のデータ欄を見てみると、たいていはGP2よりも大きな赤道儀を使って撮影していることがわかります。

これはどういうことかと言えば、上手に天体写真を撮る人は、天体望遠鏡を載せる赤道儀に、 搭載能力に余裕があるワンランク上の架台をたいてい使っているということです。 余裕がある赤道儀なら、強度があるのでしっかりしています。 架台がしっかりしていれば、安定して星を追いかけてくれる可能性が高いからです。


三脚も重要

タカハシ製赤道儀 赤道儀を載せる三脚も重要ポイントです。 重い機材の足元を固める上でも、できるだけしっかりとした三脚を選びましょう。

赤道儀用の三脚と言えば、以前は木製のものがほとんどでした。 しかし、現在、赤道儀用として販売されている三脚のほとんどはアルミ製になりました。 アルミ製三脚は、軽くて見た目もスリムなのが美点ですが、木製三脚と比べると振動が収まりにくい欠点があります。 そのため、現在でも天体写真ファンによっては、伸縮機能のない木製直脚と呼ばれる三脚を愛用しています。 しかし、今では丈夫なアルミ製三脚が販売されているので、私を含めて多くの天文ファンがそうした三脚を用いています。

三脚を選ぶ上で重要なのは、ねじれに強いかどうかです。 赤道儀は常に動いていますので、ねじれに弱いとせっかく合わせた極軸がずれてしまいます。 また、三脚の脚を開いた時に、開き止めがしっかりしていて、ぐらぐらしないかも重要なポイントです。

天体望遠鏡のカタログをよく見てみると、一見同じように見える天体望遠鏡セットでも、 異なる三脚が用いられていることがあります。 例えば、ビクセンのGP2赤道儀用には、SXG-AL130とういう三脚と、SXG-HAL130三脚が用意されています。 写真を見ると、外見は同じように見えますが、強度はHAL130三脚の方が優れています。 天体写真を撮るなら、強度が高い三脚を選んでおいた方がよいでしょう。

赤道儀を載せる脚として、三脚の他にもピラー脚が用意されている機種もあります。 ピラー脚の利点としては、見た目がスマート、天体望遠鏡が三脚の脚に干渉しないため、天頂付近の撮影がし易い、などありますが、 どちらかといえば自宅ドームなどへの設置向きです。 ピラー脚の強度は高いですが、移動させるのは大変ですので、その点を考慮しつつ選ばれることをお勧めします。


天体望遠鏡をもう一本

ガイド鏡を載せた天体望遠鏡

天体写真を撮っていると、赤道儀を使っても僅かに星が流れることに気づかれると思います。 これは赤道儀を使っても、徐々に星の日周運動から僅かにずれてしまっていくためで、どんな赤道儀にも多かれ少なかれ存在する現象です。

最近の天体写真は、デジタル一眼レフカメラを使って短い露出で撮るためそれほど気にならないのですが、 フォトコンテストの入選を目指す方や「星が少しでも流れて丸くないのは嫌!」という完璧主義の方には問題があります。

こうなると必要になるのが、ガイド鏡と呼ばれる赤道儀の追尾状況を監視するための天体望遠鏡です。 赤道儀が正確に星を追いかけているかどうかを確認する望遠鏡なので、口径の小さなもので十分なのですが、ガイド鏡も同じ赤道儀に載せる必要があるため、 やはり機材全体の重量が増えてしまいます。 搭載能力の余裕がある赤道儀や丈夫な三脚をベテランが選ぶのはこのためでもあります。

ちなみに、こうしたガイド鏡を使って赤道儀の動きを監視しながら撮影する方法を、ガイド撮影と一般に読んでいます。 以前は人間がガイド鏡を覗いて赤道儀のコントローラーを操作していましたが、現在はオートガイダーと呼ばれる専用機器をガイド鏡に取り付けて、 ガイド撮影を行うのが主流です(オートガイド撮影と読んでいます)。


オフアキシスガイドとは

オフアキシスガイダーの例 少し内容がマニアックになりますが、ガイド鏡を載せるガイド方法の他に、オフアキシスガイドとかオフアキシスガイダーと呼ばれている、 ガイド方式もあります。 これは一本の天体望遠鏡だけで、撮影もオートガイドも行ってしまう方法です。望遠鏡の写野の隅に写った星を オートガイドに使うので、このオフアキシスという呼び名があります。

オフアキシスガイドのよい点は、ガイド鏡を用いる必要がないため、赤道儀に載せる機材を軽量化できることです。 これは大きなメリットで、1ランク小さなの赤道儀でも同じ望遠鏡で撮影が可能になるということです。 また、その他の利点としては、撮影にもガイドにも同じ望遠鏡を使うため、より正確なガイドが見込めるという点です。 どういうことかと言えば、ガイド鏡を別に取り付けた場合、取り付け時にガタなどが発生してしまい、そのブレをオートガイド装置が 追いかけてしまうことがあるからです。

しかしデメリットもあります。 まずは、オフアキシスガイダー装置を購入する必要があります。それにオフアキシスガイダーを取り付けるには、撮影望遠鏡にある程度の 光路長(いわゆるバックフォーカス)が必要です。そのため、オフアキシスガイダーを利用できる望遠鏡は限られてきます。

また、撮影用カメラとオートガイダーのピントを、同時に正確に出るように接眼部の長さを調整する必要があり、これが思った以上に大変です。 その他、ガイド星を見つけるのが大変、レデューサーなどのコンバーションレンズが使えない場合が多いなど、いろいろな面倒な点があります。

赤道儀への負担が減るなど、魅力が大きいオフアキシスガイド方式ですが、ベテラン向けの撮影方式といえます。 まずはガイド鏡を用いて撮影してみられるのがよいでしょう。 最初から、オフアキシスガイダーを使った天体撮影にチャレンジされない方がよいと思います。

参考までに、私が撮影に使っているSBIG製冷却CCDカメラには、カメラ内に撮影用とガイド用のCCDチップが埋め込まれていて、撮影と ガイドを同時に行うことができます。これもある種のオフアキシス方式とも言えます。しかしこの場合は、セルフガイド方式と一般的に呼ばれていて、今回の 話題とは別に考えた方がよいでしょう。 このセルフガイド方式は、撮影用カメラとオートガイダーのピントの調整が不要のため、オフアキシスガイドに比べて楽に撮影が行える特徴があります(※このセルフガイド方式は、SBIG社の特許となっているようです)。


赤道儀は長く使える製品を

タカハシ製赤道儀 上に書いていることと重複しますが、搭載重量に余裕があって精度のよい赤道儀を選んでおくと、 長い期間にわたって愛用することができます。 天体望遠鏡は載せ替えることができますから、望遠鏡を買い換えても赤道儀は使い続けることができます。

しっかりした赤道儀は、天体写真撮影の時のストレスを減らしてくれます。 天体望遠鏡の予算を削ってでも、赤道儀は高性能のものを選んでおかれるとよいでしょう。 本格的に天体写真をずっと撮ろうとお考えなら、赤道儀の搭載重量が実質で15キロ程度のものがお勧めです。 これぐらいあれば、たいていの撮影用望遠鏡を載せられるでしょう。

ただし、高性能な赤道儀は結構な重量がありますので、一度現物を望遠鏡販売店などで確認しておくことをお勧めします。 遠征撮影に行こうと思っても、重すぎて運び出せないようでは、もったいないですからね。


屈折式にするか反射式にするか

天体望遠鏡を載せる架台のことはある程度わかりました。次は撮影に使う天体望遠鏡を見ていきましょう。 まず大きな悩みどころとなるのが、屈折式の天体望遠鏡を買うか、反射式を購入するかということです。 それぞれの長所と短所を見ていきましょう。


色収差の問題は反射が有利

反射式

屈折式天体望遠鏡はレンズを使って光を集めるので、どうしても色収差が出てしまいます。 ですので、天体写真に屈折式を使おうと思うと、色消しレンズ(EDレンズなど)を使った高級な機種を買う必要があります。

それに比べて反射式は、色収差が全く生じません。色収差がないので星がすっきりシャープに写ります(色収差 があると青ニジミが生じてボテッと写ります)。この点では反射式が有利です。


丈夫で失敗が少ない屈折式

反射式には小さな望遠鏡は少なく、ある程度大きな口径の製品ばかりです。 口径が大きいと言うことは、開口部も大きくて横から覗くために天体望遠鏡自体が大きくなり、構造的に強度が低くなって しまっている製品が散見されます。また、図体が大きいので、風の影響も受けやすいという弱点もあります。

それに比べて屈折式は、鏡筒が細長くコンパクトなので強度が高い製品を作りやすく、また風などの影響を受けにくい 利点があります。天体望遠鏡の強度の高さは、天体写真の成功率に繋がります。その点では屈折式が有利でしょう。

なお、屈折式と反射式で同じ重量であっても、上記したように反射式は図体が大きいのでモーメントが大きく、 重量が同じでも赤道儀により高い強度が必要となってきます。 反射式を選ばれるなら、そういう面も考慮に入れてより大きめの架台を選ばれるとよいでしょう。


口径が大きい反射式

天体望遠鏡の口径が大きいと暗い星まで写ります。 そう言われると大きな口径の望遠鏡が欲しくなるもの。 口径の大きさなら反射式が圧倒的に有利です。

反射式に比べ屈折式にはあまり大きなものはありません。大きいものでも13センチぐらいです。 それに屈折式は口径が大きくなると非常に高価になってしまいます。 例えば13センチの天体望遠鏡では、反射式なら高い物でも10万円程度で手に入りますが、 屈折式でEDレンズを使った製品となると、50万円を超えてしまいます。

大きな口径の反射式の方が暗い星までよく写りますが、上の記事に書いた弱点についてもよく考えなければなりません。 それに手軽に野山に持って行くには、辛い大きさになるかもしれません。


メンテナンスフリーが嬉しい屈折式

屈折式

天体望遠鏡の選び方でも記載していますが、反射式には光軸合わせという作業が伴います。 これは構造上、どうしてもミラーがずれてしまうことがあり、時々光軸を合わせ直す必要があるためです。 観望でしたらそれほど気にしなくても良いのですが、写真を撮るとなるとある程度は合わせておきたいものです。 細かな調整が苦手な方は要注意かもしれません。

それに比べて屈折式は、ほとんどメンテナンスフリーで使えます。 光軸合わせを行う必要も、普通に使っていればないでしょう。 カメラレンズのように、使用後はブロアーでゴミを吹き飛ばして、カビ発生に注意すれば大丈夫です。

もし天体望遠鏡を郊外に持ち出して撮影をしようと考えてらっしゃるなら、この点はよく考慮しておいた方がよいでしょう。

車の中でガタゴト揺られた反射望遠鏡。現地に着いたら光軸がずれていて、撮影前に合わさないといけないかもしれません。 まわりの屈折式ユーザーは、テキパキと撮影を開始・・・私は夜中まで光軸合わせ・・・ 夜空は満天の星なのに・・・なんてことも起こりえます。


最初はED屈折式が失敗が少なくてお勧め

いろいろ記載しましたが、今思いつくのはこのぐらいでしょうか。また思いついたら追記していこうと 思います。

私の経験からすると、ED屈折式の天体望遠鏡が天体写真を初めて撮る方にも使いやすい機種だと思います。 それも8センチ〜10センチ程度の口径の製品がお勧めです。 10センチより大きな口径になると、屈折式と言えどもかなり大きくなりますし、 口径が大きいほど色収差も増えて、光学設計上無理がある製品もあります。

それに屈折式はコントラストが高く、筒内気流が発生しにくいので、月の写真も安定して綺麗に撮れます。 反射式でももちろん撮れますが、屈折式の方が簡単に上手に撮れます。 よろしければ、10センチED屈折望遠鏡で撮影した月の写真をご覧下さい。

ただ屈折式を選ぶときには注意が必要です。 というのも上の比較で記載したとおり、屈折式には色収差の問題があります。 EDレンズを使った天体望遠鏡でも、色収差が多い製品はいくつもあります。 少し高くなるかもしれませんが、天体写真に実際に使われている製品をできれば選ばれるのがよいでしょう。 レデューサーと呼ばれるF値を明るくする補正レンズを利用できるかどうかも重要なポイントです。

また、天体写真撮影では、天体望遠鏡の接眼部に重いカメラを取り付ける必要があります。 できるだけ接眼部の丈夫な製品を選ばれることをお勧めします。 天体望遠鏡の接眼部には、ドロチューブが動かないようにするロックネジが付けられています。 このロックネジを締めても簡単にドロチューブが動くようでは、デジカメを付けたらその重みでピントがずれてしまいます。 そうした点もチェックしつつ、最適な一台を選ばれてはいかがでしょうか。

どんな製品もそうですが、価格の高いものはやはりしっかりと作られていて、信頼性が高いものです。 少し奮発してそうした製品を購入しておくと、末永く間使えてよいのではないでしょうか。


手軽に撮影するという考え方

今まで書いてきた内容と少し矛盾するかもしれませんが、デジタル一眼レフカメラの性能が向上したお陰で、ISO感度を上げれば、 数分の露出時間でも星雲の写真が撮れるようになりました。 その特徴を生かして、短時間でバンバン枚数を撮って撮影を楽しもう、という考え方も素敵だと思います。

そういう方には、F値が明るくて口径が大きめのしっかりした反射望遠鏡が適しているのではないかと思います。 反射望遠鏡の集光力を生かせば、数分の露出時間でもかなりの写真が撮れる思います。

『ガイド鏡なんて載せずに、正確に星を追尾できる時間だけ露出時間をかけて星を撮る!』。 デジタルカメラの高感度特性がもっと向上すれば、誰もがそうして写す時代になるかもしれませんね。 そうなれば、もっと天体写真が身近になると思います。

天体望遠鏡の具体例

ビクセンED81S
ビクセンED81S鏡筒

天体望遠鏡メーカーのビクセンから発売されている、ビクセンED81S鏡筒です。 この鏡筒の対物レンズにはSDレンズが用いられ、色収差を良好に補正しています。 月や明るい恒星を見ても、色づきの少ないシャープな像を楽しめます。

望遠鏡自体のF値は7.7と暗いですが、レデューサーレンズと組み合わせると明るくなると共に、 周辺像が改善されるので、天体撮影に使いやすい光学系になります。 デジタル一眼レフカメラと組み合わせて、星雲や星団を写し出すのに適した望遠鏡です。 ギャラリーにこの望遠鏡で撮影したペリカン星雲の写真を載せていますので、ご覧ください。

口径は、81ミリと若干小さめですが、その分軽いので取り扱いがしやすく、小型の赤道儀に搭載することが出来ます。 ビクセンから発売されているGPD2赤道儀や、SXD2赤道儀と組み合わせるのが使いやすいのではないでしょうか。

なお、最近、ED81Sの後継機となるED81SIIが発売されましたが、光学系や望遠鏡本体には変更がありません。 変更されたのは、スライディングプレート部分だけですので、価格がこなれているED81Sがお勧めといえます。 望遠鏡販売店によっては、在庫処分セールを行っている場合もありますので、 いくつかのサイトで価格を比較してみてはいかがでしょうか。

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Kowa テレフォトレンズ/スコープ PROMINAR 500mmF5.6FL 標準キット(キヤノン用)
コーワPROMINAR 500mmF5.6FL 標準キット(キヤノン用)

コーワのテレフォトレンズPROMINAR500mmF5.6Lです。 コーワはフィールドスコープや双眼鏡でおなじみのメーカーで、最近では天体撮影の分野でも注目されているメーカーです。

このコーワPROMINAR500mmF5.6Lは、マウントアダプターと呼ばれるコンバーションレンズを交換することで、 350mm,500mm,850mmと三つの焦点距離で撮影を楽しめるテレフォトレンズです。 デジカメと組み合わせて天体撮影した際の性能はとても良く、ベテランからの評価も高い光学レンズで、 私もこの機材で撮影した天体写真をいくつかギャラリーに載せています。

また、プリズムユニットを使用すれば、フィールドスコープとしても使用できるので、 月や星空の観察にも使えるようになります。 天体撮影にも使用できるコンパクトで、マルチパーパスな一本を探している方に適した機材だと思います。
(こちらでご紹介しているのは、本体にTX10マウントアダプターが付属した標準キット(キヤノン用)となります)

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