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Hα写真の撮影方法

モノクロ冷却CCDカメラとHαフィルターを組み合わせた、天体のモノクロ撮影方法を紹介しています。 このページの内容は、Hαモノクロ撮影の続きになります。 モノクロ撮影方法の各ページには、左の実践編「モノクロ天体写真撮影」の中のリンクからアクセスして下さい。

なお、このHαモノクロ撮影方法のページは、天体写真撮影の経験がある程度ある方向けに記載しています。 初めての方向けには、天体写真撮影の方法ページを設けていますので、そちらもご覧下さい。


天体写真の撮影だ!

前置きが長かったですが、やっと撮影です。各自撮影してください。

撮影中・・・説明省略?・・・

ε160望遠鏡 撮影については、それほど気になることはないと思います。 今までに何度か天体写真を撮影されたことがあれば、赤道儀の設置→極軸合わせ→ピント出し、 そして撮影天体の視野導入を経て、スムーズに撮影に移れることと思います。

気になることは、都会で撮影する場合(郊外でも散光星雲は見えませんが)、導入時の目安となる星が見えないということです。 赤道儀に自動導入機能があれば問題ありませんが、古い赤道儀をお使いの場合もあるでしょう。 その場合は星図片手に探す必要があります。 昔ながらに目盛環で探す方法もありますが、勘と気合いで探す方が早かったりします。 私もMS5赤道儀を使う時は、未だにファインダー目視で探すことが多いです。

冷却CCDカメラでは、撮影画像をすぐにパソコン画面で確認することができます。 Hαフィルター画像だとある程度露光しないと星雲は写ってきませんが、 最初はRedフィルターにしておいて、3×3ビニングモードで数秒露光すると、 うっすら星雲が写ってくるので、写野に星雲が入っているかどうかが確認できます。 構図決定するときには、こうして確認されみてはいかがでしょうか。


シビアなピント合わせ

さぁ撮影してみてどうですか?うまくいきましたか?

冷却CCDカメラを使った撮影でミスしやすいこととして

「CCD冷却温度の下げ忘れ(私だけ?)」
「CCDビニングモードの変え忘れ」
「ピント合わせが不十分」
「ガイド流れ」

ピントゲージなどが上げられます。 最初の二つは注意不足ですから、気を付けるようにすれば直るだけのことですからよいとして、 ピント合わせとガイド流れは気になりますよね。 ピント合わせって、どうしたらいいのでしょう。

デジタル機材を使うようになって、ピント出しがよりシビアになってきました。 銀塩時代からも天体写真は点光源ですので、一般風景撮影とは次元の違うピント出しが必要でしたが、 デジタルになってよりその傾向が強まった気がします。 風景写真で「これはもうちょっと絞り込んで、パンフォーカスにしないとねぇ」なんてことは天体写真ではできません。 ピント合わせは時間をかけてじっくり行いましょう。

幸い冷却CCDカメラの場合は、撮影した画像をリアルタイムに近い速度でパソコンに表示してくれます。 それと同時に写野内で最も明るい星の輝度値も表示されますので、それを目安に合わされるのがよいでしょう。 制御ソフトウェアによっては、もっと便利なピント合わせツールもあるようですので、 興味がある方はそういうソフトを使われるのもよいでしょう。 どちらにしても「ピント合わせは面倒くさいけど、これで作品全体の質が変わるのだから、じっくり時間をかけてやろう!」という気持ちが大切だと思います。

良いピントを得る上で、他に重要なことが気流の善し悪しです。 惑星が望遠鏡でピタッと見えるほどのよい気流なら、星もほとんど瞬かずにピントのピークもわかりやすいでしょう。 それに比べて、真冬の目で見ても惑星が揺らいでいるときは、ピントのピーク位置がどんどん変わり、 いらいらしてしまうこと請け合いです。 そういうときは撮影を諦めるか、あまりピントに時間をかけず「ここでいいや!」ぐらいの気持ちで撮影されたらいいんじゃないでしょうか。 でも、それが遠方に撮影に出かけているときだったら・・・意地でもジャスピンつかみたいですよね。 がんばりましょう(笑)。

PS:最近ではロボフォーカスをはじめとした、オートフォーカス対応の機器が登場しています。 当初は使い勝手がややこしかったり、ソフトウェアやマニュアルが英語表記しかないなどの問題がありましたが、 望遠鏡メーカー純正の装置も販売され始め、使い勝手がよくなってきています。 もしピント合わせが面倒に感じられるなら、こういう機器の助けを借りるのもよい方法だと思います。 また、バーティノフマスクのようなピント支援ツールも便利ですので、積極的に使用してみましょう。


セルフオートガイドはややこしい?

さて次に問題になるのが、ガイドが上手くいかないときです。 別途オートガイダーを利用している場合は撓みなどの影響もあり複雑ですが、 セルフガイドがうまくいかないという話もチラホラ伺います。ちょっと原因を探ってみましょう。

セルフガイドのまず第一の関門は、ずばりキャリブレーションの成功でしょう。 このページを読んでられる方に「キャリブレーションって何だ?」という方は少ない思いますが、 ちょっと簡単にご説明を・・・・

オートガイド装置にとって、オートガイドを成功させるためには「こちらにこれだけの信号を送れば、望遠鏡がどの方向にどれだけ動くか」 ということを知ることは、とても重要なことです。 それを学習させるのが「キャリブレーション」というわけです。 英語やカタカナで書くとなんだか難しそうですが、単純簡単なことですよね

で、このキャリブレーション。なぜか私はラッキーにも失敗することは少ないのですが、案外失敗してしまうことも多いようです。 ちょっと肝心要な部分を列記してみましょう。

1.接眼部へのCCD取り付け角度は大丈夫?
2.赤道儀の修正速度は恒星時以下になってる?
3.オートガイドチップの写野に明るい星入ってる?

思いつくのはこんなところでしょうか。

まず1については、CCD取り付け角度はなるべく赤緯、赤経方向に合わせた方がよいと思います。 別に30度くらい傾いていても問題なくキャリブレーションは成功し、オートガイドできますが、 作品の南北を合わせる上でもこうしておいた方がよいでしょう。 とわ言っても、ガイド星が他に見当たらない場合は仕方ありません。

2については、恒星時以上の修正量を与えてしまうと、赤道儀のバックラッシュによって正確なガイドができなくなってしまいます。 特に赤経側は恒星時以下にしておく必要があります。 キャリブレーションはOKなのに、いつもガイドに失敗してしまう方はこの辺りも注意してみましょう。

3は当たり前のことですが、チップの上に星が載っていないとキャリブレーションしようがありません。 キャリブレーション時はHαフィルタ越しでなくてもよいので、IRカットフィルタなどで光量を稼ぎ、実行してみましょう。 また、明るい星が写野の端にあるときもキャリブレーションミスが起こりやすいです。 なるべく中央に明るい星、それも同じような明るさの星が写野内に存在しないようにして、キャリブレーションを行いましょう。

<ちょっと一言>
天体写真は、暗闇で作業する上に行程が多岐にわたっている写真撮影分野です。 その行程の複雑さは、他に類をみないほどです。 ですので「最初から完璧にやろう」と気負わず、慣れて行かれるのが上達への早道です。 また、撮影前(シャッターを切る前)にやるべきことを順序立てて覚えておけば、 遠征に行ってもミスがなくなり、思い出に残る写真を撮れることと思います。 気長に、気楽に、天体撮影を楽しみましょう。


よし!撮れたぞ!

撮影は上手く行きましたか?

「完璧だ」
「とりあえず撮れたけど、星がちょっと流れて線になっている」
「なんだか薄くしか写っていない」
「ノイズが一杯で汚いなぁ」
「ピンぼけで星が大きな円になっている」
「端っこの星が丸くない」

といろいろあるとは思いますが、とりあえずお疲れ様でした。

完璧の方は申し分ないでしょう。

星が流れている方は追尾エラーが原因でしょう。極軸の設定も見直した方がよいかもしれません。

薄くしか写っていないのは、ただ画面のレベル表示範囲が狭いだけで、画像処理すれば出てくるかもしれません。また、なるべく露出は1コマ10分以上はかけたいものです。

ノイズ一杯の人は、冷却温度は忘れずに下げましたか?下げすぎてカメラの電気回路に負荷がかかりすぎるのもよくありません。 また、淡い星雲だとどうしてもノイズ感が出てきてしまいます。できるだけ多くの枚数を撮影し、後でコンポジットして滑らかにしてやりましょう

ピンぼけの場合は、ピント合わせをしっかりやるしかありません。また気流が悪かったのかも知れません。それに気づく上でも撮影時は気流のチェックを行いましょう。 ほんとにピンぼけだったら・・・再トライしかないですね。

端っこの星だけが丸くなっていないのは、コマ収差や非点収差などの影響です。また場合によっては光軸がずれている可能性もあります。その辺 りをチェックしてみてください。


これからどうするんだ?

さてせっかく撮ったのですから、撮れた画像を画像処理して綺麗に見栄えするようにしてみましょう。 画像処理と言うと、

「あぁ、オレは画像処理嫌いなんだよなぁ。」
「やっぱりポジ原版でないとな。画像処理なんて邪道だよ。」

なんて声も聞こえてきそうですが、 デジタル機材で撮影した天体画像の場合、画像処理なくしてよい写真作りはできません。 撮影を3としたら画像処理は7ぐらいのウェイトがあるのがデジタル天体写真です。

また、銀塩写真でもデジタル画像処理は避けて通れないのが今の天体写真の世界です。 モノクロームの現像・焼き付け処理もある種のアナログ画像処理です。 今ある技術でよりよい写真が得られるのですから、どーんとやってみましょう。 きっとあなたの写真はより美しくなります。 モノクロのHα画像でしたら簡単ですし、気楽にトライしてみましょう。

続きはこちら→画像処理Hα編