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ビット数とダイナミックレンジ

デジタルカメラの性能表や、銀塩フィルムをデジタル化するスキャナを見ると、 ビット数やダイナミックレンジという言葉が登場します。 このページでは、ビット数とダイナミックレンジの基本的な意味から違いについて、簡単にまとめています。


ビット数

私達が使っている銀塩フィルムは、アナログのメディアです。 ですので、フィルム上の階調は連続しており、グラデーションに段差があるわけではありません。 しかし、最近行われるようになった画像処理を行うためには、スキャナを用いてデジタル化しなければなりません。 コンピュータはデジタル機器ですので、アナログが持つ連続階調を読むことができないためです。 そこで考え出されたのが、連続階調をいくつかの段差に分けて読み取る方式です。

階調の解像度は、段差の数「ビット数(Bit Depth)」で表されます。 黒から白へのダイナミックレンジをいくつかの段差に分けるわけです。 ちなみにビットという言葉は、コンピューター用語の「Binary Digit」から来ています。

ところで、私達の手には10本の指があります。 ものを数えるときには、この10本をベースにして数えることができます。 しかしコンピュータは、トランジスタを組み合わせて作っているので、ONとOffの二通りしか判別できません。 ですので、2をベースとして考えることしかできないのです。 したがってビット数は、すべて2の乗数として表されます。

下の図は2の4乗→4ビットのグラデーションを示した図です。 4ビットですと階調のステップ数は、2を4乗した16段階あることになります。 下の図でも黒から白が16つのステップに分かれて表されています。

4ビットのステップ

一般的に使用される画像ソフトでは、8ビットで画像を処理できますので、256のステップ数があることになります。 16ビット処理がうたわれているソフトでは、65536段階のステップ数があることになります。


ダイナミックレンジとビット数

ビット数とダイナミックレンジが同意に扱われていることも多いのすが、 この二つは同じ意味ではありません。 大きなビット数が、より大きなダイナミックレンジを持っているわけではないのです。

ダイナミックレンジは、黒から白への幅のことですから、どんなビット数でも表すことができます。 ビット数が1でも黒と白の2ステップで、2ビットでも4ステップで黒から白のグラデーションを示すことができます。 得られたダイナミックレンジに対して、ビット数を変えれば、どんなステップで表現することが可能だということです。 ですから、ビット数が大きいからダイナミックレンジが広いという記述は、誤解を招く可能性があります。


ビット数とチャンネル

ビット数を考えるときにも混乱を与えることがあります。 私達が一般に話す「Photoshop7のレイヤーは8ビット処理だ」という時は、シングルカラーにおいての話です。 しかし「このテレビは24ビットフルカラーだ」という時は、 RGB3チャンネルを複合したときのビット数です。 「このテレビは、24ビット表示だからすごいのですよ」と言われると、 なんとなく高機能画像処理ソフトが扱える16ビットよりも階調数が多いんと思ってしまいがちですが、 これは誤解しているわけです。 この辺りは、メーカーの宣伝方法にも問題があるのかもしれません。

参考までに、天体写真で使われている冷却CCDは単色16ビットです。 ですからRGBカラーに換算すると48ビットもあります。 しかしモニタやプリンタは、単色8ビットですからどこかで必ず丸められます。 人間の眼で判別できるのが8ビットまでと言われていますから、これは仕方がないのかもしれませんね。

ビットとバイト

コンピュータ用語で「バイト」という言葉があります。 この「バイト」は8ビットを一括りとした用語で、コンピュータの中での処理はすべてバイト単位で行われます(最近のパソコンはよく知りませんが)。 ですので、8ビットの画像を処理するときには、1バイトにちょうど収まるのでパソコン内の処理は問題ありませんが、 デジタル一眼のRAWイメージような12ビット信号の場合は、1バイトと2バイトの中間となってしまいます。 この場合は、コンピュータ内で16ビットに足りない部分は空の信号を入れて、擬似的に2バイトにして処理を行っています。

写真には何ビットが必要か

ビット数がグラデーションを分ける訳ですから、あまり少ないビット数では段差がはっきりわかってしまいます。 特に写真は滑らかなグラデーションが必要ですから、ビット数は重要です。 しかしやみくもに大きなビット数を使っても、ファイルは重くなりますし、ハンドリングが悪くなります。

下のバーは、黒から白へのグラデーションをビット数でステップ分けしたものです。 これを見てステップの継ぎ目がわかるのはどれでしょう。 私が見た場合、6ビットは、明らかに段差がわかります。 しかし7ビットになると微妙です。 8ビットとなるとほとんどわかりません。 この辺りから写真のプリントには、7ビットから8ビットは必要ということが言えるではないでしょうか。

8ビットのプリントを仕上げるための画像処理という点を考えると、 できれば画像処理ソフトは8ビット以上で処理できることが理想です。 16ビットまではいりませんが、12ビットくらいは欲しいところです。 現在画像処理で用いられているPhotoshopCSシリーズでは、階調情報は15ビットで処理されていますから、一般的にはこれで十分でしょう。

8ビットのステップ
8ビットのステップ 7ビットのステップ
7ビットのステップ 6ビットのステップ
6ビットのステップ