月写真の画像処理方法

月は明るいので簡単に撮影できる天体です。しかし、月は明暗部の差が激しいので綺麗な画像を得るのは簡単ではありません。 そこでここでは、私なりの月の画像処理法について触れてみたいと思います。何かの参考になれば幸いです。

月をカメラの自動露出任せで撮影すると、たいていは明るい部分が適正露出になり、欠際が露出不足の写真になってしまいます(下左写真)。 そこで今度はマニュアル露出で、欠け際に露出を合わせると、下右写真のように欠け際以外は、白飛びしてしまいます。

真ん中の写真が適正露出なのですが、画像を細かく見ると、適正露出の月と言えども、欠け際はわずかにアンダー。明部は少 しオーバー気味になっています。微妙なグラデーション情報が大切な月の写真では改善しておきたいところです(このままでもさほど問題はな いですが、よりよくという意味で)。

1段アンダー 適正露出 1段オーバー

これはデジタルカメラには、表現できるレンジの幅があるため、必然的に起こってしまう現象です。そこで次ではこの問題を解決する方法を 考えてみましょう。

※12bitのRAWモードで撮影できる一眼レフタイプデジカメは、ダイナミックレンジが広いのでそれほど問題ではないかもしれません。

多段階露出合成法

多段階露出合成法(私が勝手に作った呼称です)とは、カメラ(特にコンパクトデジカメ)のダイナミックレンジには限界があるので、露出を 何段階か変えて撮った画像を合成し、カメラの性能を越えたダイナミックレンジを写真に持たせようという方法です。もちろんこれは 一般撮影にも使えます。輝度差が激しい被写体を撮る時等に応用できると思います。手順を以下に簡単に示します。

シャドー基準の露出、適正露出、ハイライト基準の露出で3カット撮影します。その時、後で合成することを考えて、写野を移動し たり回転させないようにしましょう(一般撮影の時は必ず絞り優先で撮ることに注意して下さい。絞りが変わると被写界深 度が変わってしまい合成できなくなります)。

フォトショップで3つの画像を開き、移動ツールを使ってシャドー露出の画像を、適正画像の上に重ねます(シフトキーを押しなが ら、ドラッグすると同じ位置に合成できると思います)。

同様にしてハイライト基準の画像をその上に重ねます(最後に問題なく重なっているか、レイヤーモードを「差の絶対値」などに してみて確認して下さい)。

レイヤーマスクを作って、不要な部分を消して行きます。ここからは画像の種類によって、方法が異なるので一概には言えま せんが、上の三つの画像を例にしますと・・・

ハイライト画像で生かしたいのは、欠け際のディテールですので、その部分をマスクします。シャドー部分は逆に月の照らされて いる側のディテールが欲しいので、その部分をマスクします。マスクからはずれた部分は、下の適正露出の月の画像が出てくるの で問題ありません(マスクするときは、ボカシフィルタなどを使って、合成感が出ないように自然な感じでマスクしましょう)。

このようにすると月のハイライトからシャドーまで、グラデーション情報を失わな い月の写真が得ることができます。

その他にも月の画像処理にはいろいろありそうです。モノクロ時代の覆い焼きに似た、選択範囲を作って、その部分を焼き込みしてし まう方法等、考えたらいろいろな手法が出てきそうです。是非いろいろな方法を試してみて下さい。月でしたら都会でも手軽に撮影 することができます。

しかしやはり一番重要なのは、元画像の良さですから、ピント、ブレなどには十分注意して撮影してください。 それが最も難しい点ですが、それをおろそかにするとよい天体写真はなかなか撮れないと思います。 月の写真ギャラリーも是非ご覧ください。