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オートガイドの方法

本格的な天体写真の世界では、オートガイダーと呼ばれる星の追尾状態を監視する機器がよく用いられています。 そうしたオートガイダーを使った撮影をオートガイド撮影と呼び、手動ガイド撮影と区別しています このページでは、そうしたオートガイド撮影の方法や内容をまとめています。

なお、オートガイドの細かい操作方法は、使用するオートガイダーやソフトウェアによって大きく変わってきます。 全てを網羅できませんので、一般的な内容に付いて記載しています。


オートガイダーとは

SBIG ST-iオートガイダー 星を追尾する赤道儀を使っても、拡大して撮影していると星が徐々にずれてきてしまいます。 その補正を行うためにガイドを行うわけですが、これを人間が作業する代わりに電子的にやってくれるのが、 オートガイダーです。

オートガイダーは、星のズレを監視するためのカメラと制御ソフトで構成されているのが一般的で、 CCDカメラの部分だけをオートガイダーと呼ぶこともあります。 右上はSBIG社から発売されているST-iオートガイダー(赤色部分)で、接眼レンズほどの大きさです。

オートガイドの原理は、それほど難しいものではありません。 CCDカメラで星を撮影し、そのズレの量を検知します。 そしてその量を制御ソフトで計算して、必要な分だけ修正信号を赤道儀に送るという一連の動作です。 たいていの場合は、CCDカメラと制御ソフトを合わせて、オートガイダー一式として販売されています。 なお、オートガイダーの制御ソフトによっては、いろいろなCCDカメラを使用できるものがあります。 この中で最も有名なのが、PHD Guidingと呼ばれるフリーの汎用ソフトウェアです。

また、オートガイダーには、パソコンが必要なものとそうでないものがあります。 パソコン無しで動くオートガイダーは、スタンドアローン型と呼ばれています。 パソコンが必要なタイプは、パソコン上で制御ソフトを動かして、そこからCCDカメラをコントロールするという形を取っています。


オートガイダーの接続と赤道儀

赤道儀のオートガイド端子 オートガイダーを使用するためには、まず赤道儀とオートガイダーを繋がなければなりません。 オートガイダーの信号が赤道儀を動かすのですから、ここの接続がなければ話になりません。 「繋げればいいだけだ。」と思ってしまいがちですが、ここでいくつかの問題があります。

まず、オートガイダーは、赤道儀のモーターを動かすための機械ですから、赤道儀が電動化されていなければなりません。 赤道儀に電動モーターが付いていて、コントローラーがあることが必須になります。

次に、自動導入機能がまだなかった頃(1990年代以前)の赤道儀をお使いの場合、 コントローラーや本体にオートガイダー端子が設けられていないことがあります。 この場合は、新たにオートガイド端子をコントローラーに設ける加工をしなければなりません。 それほど難しくないので、電子工作に詳しければ自作も可能でしょう。 また、天文ショップに依頼して設けてもらうこともできます。この場合、 一般的なST-4互換の端子を依頼するとよいでしょう。

オートガイダー端子が設けられた最近の赤道儀の場合でも注意が必要です。 赤道儀のメーカーによって、端子の形状が異なっていることがあり、それに接続するための専用ケーブルを用意する必要があります。 例えば、私が使っているタカハシTemma2シリーズには、miniDIN6pinというコネクタが使われています。 オートガイダーの端子はRJ12のことが多いので、この変換ケーブルが必要になります。 この他にもいろいろな形状の端子がありますので、オートガイダー購入時にお店で聞いてみるとよいでしょう。


赤道儀との接続

オートガイダーリレーボックス ケーブルの用意ができれば、後はオートガイダーと赤道儀をケーブルで接続するだけです。 ただし、古い赤道儀によっては、オートガイダーと赤道儀の間にリレーボックスが必要な場合があります。

リレーボックスは右上の写真のようなもので、オートガイダーと赤道儀を電気的に遮断するためのものです。 オートガイド撮影を始めると、オートガイダーから修正信号が微弱な電気信号となって送られます。 それが場合によっては、赤道儀のモーター故障に繋がることがあるので、こうしたリレー機器を間に挿入します。 必要かどうかは、赤道儀のメーカーに問い合わせてみればよいでしょう。

参考までに、私はタカハシTemma2シリーズやビクセンSXD赤道儀では、直接接続してガイド撮影を行っています。 ペンタックスMS5を使う場合は、右上の自作のリレーボックスを間に挿入しています。


ガイド鏡との接続

オートガイダーをガイド鏡に接続してみましょう。 ガイド鏡の接眼部に、オートガイダーのCCDカメラを取り付けるだけですが、少し気をつけた方がよいことがあります。

まず、できるだけオートガイダーのXY軸が、赤道儀の赤経・赤緯軸と平行になるように取り付けましょう。 こうしておくと、信号を送ったときに赤道儀が赤経・赤緯方向に沿って素直に動いてくれますので有利です。 カメラを斜めに取り付けても問題ありませんが、なるべくなら平行に取り付けましょう。

次にオートガイダーがグラグラしないように取り付けましょう。 ガイド撮影の失敗と対策にも記載していますが、 オートガイダーやガイド鏡がグラグラしては、せっかくのガイド撮影が無駄になってしまいます。 そういう意味でも、ガイド鏡は接眼部のしっかりした製品を選びましょう。


オートガイダーのピント合わせ

赤道儀とオートガイダーの接続が終了したら、オートガイダーのピントを合わせる必要があります。 オートガイダーはガイド鏡に取り付けらているはずですので、ガイド鏡のドロチューブを動かしてピントを合わせます。

パソコンが必要なタイプは、星の画像を画面で見ながらピントが合ったかどうかを確認できますが、 SBIG社のST-4のようなスタンドアローンタイプの場合は、オートガイダー本体に表示される数値を見て最適なピントを探る必要があります。 初めてだとなかなかわかりづらいですので、自宅などでテストを行って、ピント位置を事前に確認しておくことをお勧めします。


キャリブレーション

キャリブレーション画面 ピント合わせが終了したら、いよいよオートガイド撮影に入ります。 オートガイドするに当たって、まず初めにしなければならないのは、キャリブレーションと呼ばれる確認作業です。 キャリブレーションという名前だけ聞くとなんだか難しそうですが、オートガイダーが自動でやってくれますので心配ご無用です。

キャリブレーション(Calibration)とは、日本語で較正作業と言われるとおり、オートガイダーから信号を送ったら 赤道儀がどの方向にどのくらい動くか、ということをオートガイダーに覚えさせるための作業です。

具体的には、星をオートガイダーの視野に入れた後、キャリブレーションを何秒間行うかという数値をオートガイダーに入力します。 それからキャリブレーションの実行ボタンを押すと、オートガイダーの信号が赤道儀に送られ、赤道儀が僅かずつ動いていきます。 これがXY軸の±方向、計4回繰り返された後、キャリブレーション終了となります。 パソコンでオートガイダーの撮影画面を見れる機種の場合には、その星の動きを画面で確認することができるでしょう。


キャリブレーションの失敗

簡単と書いたキャリブレーションですが、はじめてですと失敗することも多く、私もはじめたばかりの頃は悩んだことがあります。 これがオートガイダーを使ったの最初の難関ともいえるでしょう。以下によく起こる事例をご紹介します。

まずよくあるのが、オートガイドケーブルの不良です。 キャリブレーションを行ってみて、ある一方向だけ、例えばX軸のプラス方向だけ動かないときは、この信号ケーブルの不良を疑ってみましょう。 特に自作された場合は要注意です。もう一度配線を見直してみるとよいでしょう。

キャリブレーションに使う星が暗すぎる場合にも、よくエラーが起こります。 できるだけ明るい星を使ってキャリブレーションを行いましょう。と言っても2等星以上の星は明るすぎますので、オートガイドに不向きです。 また、オートガイドソフトによっては、よく似た明るさの星が画面に同時に映っていると、エラーを頻発してしまうことがあります。 こうしたときは、明るい星が一つだけになるようにガイド鏡の方向を変えてやりましょう。

キャリブレーションの時間によってもエラーが起こることがあります。 キャリブレーション時間があまりに短すぎると、赤道儀の動きがオートガイダーで認識できず、エラーを起こしてしまいます。 できるだけ長めにキャリブレーション時間は設定しましょう。 特に短いガイド鏡を使っている場合は、こうした点に注意しましょう。

使っている赤道儀によっては、キャリブレーションに何度も失敗することがあります。 これはたいていの場合は赤道儀の赤緯、赤経方向の移動速度が大きく異なるためです。 オートガイダーの制御ソフトによっては、赤経赤緯を独立して速度調整できるものもありますが、その機能がない場合には、 赤道儀のコントローラー側で移動速度を調整してみましょう。

キャリブレーションの結果を見ると、赤緯・赤経の軸が直交していない場合があります。 これは赤道儀の赤緯軸と赤経軸が、直交から若干ずれているためで、古い赤道儀によくある事象です。 不安になってしまいますが、それほど気にすることはありません。 気にせずにオートガイド撮影を楽しみましょう。


オートガイド開始

キャリブレーションが上手くいったら、いよいよオートガイド撮影開始なのですが、いくつかチェックしたい項目があります。

まず、撮影用望遠鏡の構図を今一度確認しましょう。 キャリブレーションすると、赤道儀が動いて構図がずれてしまいますので、オートガイド開始前には必ずチェックしましょう。

オートガイド開始直後は、オートガイドが安定せず、追尾エラーが大きく出てしまうことがあります。 少しの間待ってエラーが安定してから、デジタル一眼レフカメラのシャッターを切るようにしましょう。

撮影を開始したら、望遠鏡から離れて休憩したいところですが、最初のうちはオートガイドの状況を見守るようにしましょう。 こうしておけば、もし追尾不良が起こってもすぐに対処することができます。 最初の1コマが上手くいけば、あとは大丈夫でしょう。休憩したり、天文仲間と交流を深めましょう。


オートガイドの高度な使い方

オートガイドのパラメーター設定画面 オートガイダーにはいろいろなパラメーターが用意されています。 初めのうちは、こうしたものは気にせずに使って慣れた方がよいと思いますが、いくつかのパラメーターはガイド撮影において重要な役目を 担っているものがありますので、下に紹介してみました。

反応係数の設定

大抵のオートガイダーには、Agressivenessと呼ばれる反応係数を設定できるパラメーターがあります。 これは、オートガイダーから赤道儀に送る信号を、どれだけ強く送るかを設定する画面で、値を10(ソフトによっては1や100)にすると オートガイダーが「動け」という信号を出した分だけ、赤道儀は反応することになります。

赤道儀によっては、モーターの反応が悪かったり、良かったりします。 オートガイダーのエラー値を見て、「反応が弱すぎるな」もしくは「悪すぎる」と思われた場合は、 この反応係数を変えてやるとよいでしょう。

移動量のしきい値の設定

オートガイダーのソフトウェアによっては、最大移動量・最小移動量となっている場合もあります。 最小移動量の設定を変えると、これ以下のエラー値の場合には赤道儀に修正信号を送らなくなります。 逆に最大移動量の場合は、どんなにエラーが大きくても、これ以上の修正信号は送りません。

日本は大陸の東側に位置しているので、上空の気流が悪いことが多く、 最小移動量を小さくしすぎていると、星の瞬きをオートガイダーが追ってしまうことがあります。 それを避けるためにも、ある程度の大きさの値を入れておいた方がよいでしょう。

バックラッシュ補正値の設定

バックラッシュ補正の設定ができるオートガイドソフトウェアもあります。 バックラッシュとは、信号が送られてから、実際に赤道儀が動くまでのタイムラグのことです。 いつも回転してギアがかみ合っている赤経軸は問題ありませんが、赤緯軸によく生じる問題です。

バックラッシュが大きい赤道儀を使う場合には、魅力的なパラメーターですが、 このパラメーターを変えても上手くいくことは少ないようです。 実際に私も何度か使ってみましたが、逆にエラーが増えることが多く、それよりはガイド星の露出時間を調整したり、 赤緯軸の追尾を切ってしまった方がエラーが収束しました。


オートガイドについて

オートガイド撮影が一般的になったのは、SBIG社のST-4スタートラッカーが登場してからです。 それまでは、人間がガイド鏡を常に監視し、コントローラーのスイッチを手で押す必要がありました。 真冬の眼視ガイドは大変辛く、初めてオートガイダーを手に入れたときは、 オートガイド撮影のありがたみを感じたものです。

デジタル機材の発展と共にオートガイダーは安価になり、また小型化されました。 誰もがオートガイド撮影を楽しめるようになったのです。 現在、ガイド撮影といえば、オートガイド撮影をさすようになりました。

初めての方にとっては、少々煩雑なオートガイド撮影の作業ですが、 数回練習すれば慣れてきますので、どなたでも楽しめる撮影方法だと思います。 このページや「初めてのオートガイド撮影」というページをご覧いただいて、 少しでもオートガイド撮影に興味を持っていただければ幸いです。