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ペンタックス100SDUFIIのレビュー

ペンタックスの100SDUFシリーズは、旭光学工業株式会社(現:リコーイメージング株式会社)が、 PENTAXブランド名で製造販売していた天体望遠鏡です。 100SDUFシリーズは、天体写真撮影に特化したF値の明るい屈折望遠鏡で、「ツチノコ」という愛称で天体写真ファンに親しまれていました。

私が所有していたペンタックス100SDUFUは、SDUFシリーズの3代目であり、1代目は100EDUF、2代目は100SDUFでした。 ユーザーの要求に合わせて、少しずつ改良されてきた撮影専用の望遠鏡です。

下画像は、私が所有していたペンタックス100SDUFUの鏡筒の写真です。 私は100SDUFIIを淡く広がる散光星雲や星団の撮影用機材として愛用していました。 鏡筒本体は、ペンタックスらしい造りの良さで、綺麗なパールホワイトの鏡筒色とスムーズな直進ヘリコイド装置に感動したのを覚えています。

ペンタックス100SDUFII

ハレー彗星と一緒にやってきた望遠鏡

初代のペンタックス100EDUFは、ハレー彗星が地球に接近した時に発売されました。 当時は、明るさF4という天体望遠鏡は皆無だったので、 10センチの屈折で明るさがF4というハイスピードなスペックに皆驚き、爆発的にヒットしたのを覚えています。

ハレー彗星が接近した頃は、まだ、赤道儀の追尾状況を監視するオートガイダーは一般的ではなく、 高感度銀塩フィルムを使って露出時間を極力短くし、人間の手でガイド修正しながら撮影するのが当たり前の時代でした。 その中で速写性の高いペンタックス100EDUFが発売されたのですから、 大ヒット商品になったのもわかる気がします。

大ヒットしたペンタックス100EDUFですが、銀塩フィルムでの撮影でも輝星に青ハロが発生し、周辺減光も目立ちました。 それが味わいという天体写真ファンもいましたが、色収差の改善を望む声が高まり、100SDUFへと改良されます。

2代目のペンタックス100SDUFになって青ハロはほとんどなくなり、周辺減光もかなり減っています。 3代目のペンタックス100SDUFIIでは、レンズの曲率とコーティングを見直され、ゴースト等の発生も少なくなりました。

ペンタックス100SDUFUとペンタックス67

ペンタックス100SDUFIIは、一応天体観望にも使用できますが、天体写真撮影専用の鏡筒です。 そのため、実際に使用するときには、ペンタックス67を接眼部に 取り付けて使用していました。

望遠鏡のレンズ構成は下のようなペッツファールタイプで、現在のタカハシFSQ-106EDなどと同じような構造をしています。

ペンタックス100SDUFII

私自身、ペンタックス100SDUFIIを観望用に使ったことはほとんどありません。 望遠鏡の取り扱い説明書にも「写真専用設計のため、眼視では色収差や像の甘さが出る」等と記載がありました。 しかし、明るい広視野を得やすいので、彗星探索に使用されていた方はいたようです。

前モデルと比べると周辺減光が改善された100SDUFIIですが、ラージフォーマットのカメラで撮影すると目立つことがありました。 そこで、鏡筒に絞りを入れて、F5まで絞って撮影する方が多かった記憶があります。

絞りを追加すると明るさは犠牲になりますが、中判カメラの隅までフラットに近い光量になりますので、画像処理がしやすくなりました。 ただ現在はデジタル画像処理が簡単にできるので、絞りを入れるよりも、フラット補正で周辺減光を補正した方がやりやすいでしょう。

デジタル一眼レフカメラとペンタックス100SDUFU

ペンタックス100SDUFIIとデジタル一眼レフカメラと組み合わせて撮影すると、輝星に青ハロが発生します。 100SDUFIIは、SDレンズを使った優秀な光学系ですが、デジタルでは色収差などがシビアに反映されてしまいます。

しかし星像自体は望遠レンズよりもシャープですから、 青ハロがそれほど気にならなければ十分にデジタルでも使用できると思います。

ブロードバンド撮影だけでなく、その明るさを活かして、 冷却CCDカメラや冷却改造デジタル一眼レフカメラを使ったHαナローバンド撮影に使うのにも面白いかもしれません。 最近では、青ハロを低減するフィルターなども販売されていますので、そのようなフィルターを有効に使って撮影を楽しむのも良さそうです。

スムーズなヘリコイドとしっかりした作り

ペンタックス天体望遠鏡の最高峰と言えばSDPシリーズでしたが、 100SDUFIIでも、その最高機種と同様の使い心地と造りの良さを味わえます。 この天体望遠鏡の使用感はすばらしく、丁寧な造りと美しい塗装は持つ喜びを感じられる製品だと思います。

日頃のメンテナンスについては、屈折望遠鏡ですからほとんどメンテナンスフリーで大丈夫です。 アルミトランクケースも標準で付属しているので、持ち運びにも便利です。 デジタル機材に移行してからは人気がなくなりましたが、程度のよい中古品を購入できればお買い得感が得られることでしょう。 旭光学株式会社は、天体望遠鏡業界から撤退してしまいましたが、これだけの高品質の望遠鏡は他社には作れないでしょう。

ビクセンで蘇ったペンタックス魂

ビクセンVSD100F3.8 ペンタックスが天体望遠鏡界から撤退した後、ビクセンがペンタックスと鏡筒に関する特許権などの譲渡契約を結んだと発表しました。

その後、ペンタックスの技術を取り入れて製作されたのが、ビクセンのSDP版とも言える「 V−SDP125」です。 残念ながら市販される予定はないようですが、カメラの祭典CP+の会場で注目を集めていました。

そして、アイソン彗星が近づく2013年に発表され、秋に実際に発売開始されたのが、 ビクセンVSD100F3.8です。 まさにペンタックス100SDUFIIの後継機とも言える仕様で、 デジタル機材に合わせたレンズ構成になって登場しました。 スムーズなヘリコイドもそのままで、ペンタックス天体望遠鏡ファンにとっては注目の一台でしょう。

予想していたよりも価格が高く、市場の反応はもう一歩のようですが、 ビクセンVSD100F3.8が市場に受け入れられれば、SDPシリーズの復活もあり得るかもしれません。 ペンタックスが築き上げた技術が受け継がれて、 より魅力的な天体望遠鏡が発売されるのを心待ちにしています。

※撮影機材のページに追加した、ビクセンVSD100 F3.8レビューのページもご覧ください。

ペンタックス100SDUFIIのスペック

名称 ペンタックス100SDUFII
有効径 100mm
焦点距離、F値 400mm、F4
レンズ構成 4群4枚(SDレンズ1枚)
集光力、分解能 肉眼の204倍、1.16秒
イメージサークル φ88mm(67サイズをカバー)
大きさ、重さ 外径115mm、長さ497mm、4.2キロ
付属品 専用アルミトランクケース
希望小売価格 ¥330,000(税別)※2008年当時

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