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デジカメのノイズとは

光の回っていない暗い場所で、デジタル一眼レフカメラを使って撮影すると、 液晶モニターに出てきた画像が、なんだかざらついていたり、黒いプツプツが目立つ画像になったりすることがあります。 これらはノイズと呼ばれているものです。

以前の機種と比べると、ノイズがずいぶん減ったデジカメですが、それでも全くノイズが発生しないわけではありません。 このページでは、そんなデジカメのノイズの正体を見ていきましょう。

ノイズの正体

デジカメのCCD撮像素子 デジカメの撮像素子に用いられているCCD(またはCMOS)は、光が当たるとそこに電子を発生させます。 その蓄えられた電子が、電子回路によって信号に変換されて最終的に画像になります。

理想的には、光が撮像素子に当たったときだけ電子が発生すればよいのですが、 実際は長い間露出していると、CCDが熱せられたりして、余計な電子が発生してしまいます。 いわゆる暗電流ノイズと呼ばれているもので、右下の画像のようにプツプツした点に写ります。

また、デジカメにはたくさんの電子回路が用いられています。 そのため、信号がいろいろな回路に渡されている間に余計な信号(雑音)をもらって、画像にノイズが混じってしまうことがあります。 こうしたノイズは、「読み出しノイズ」や「バイアスノイズ」と呼ばれています。

その他にも、いろいろな要因でノイズは発生します。 電気の力で撮影しているのですから当たり前ですが、こうしたデジカメのノイズは、 長時間露光する必要がある天体写真にとって厄介な存在です。

長時間ノイズ

長時間露出時のノイズ 天体写真撮影において、長時間露出時に発生するノイズは厄介です。

一般写真の世界では、数秒の露出でも長時間露出と言われますが、 天体写真の世界では、数十秒から十数分の露出が当たり前の世界です。 一般写真とは比べものにならない、長時間ノイズとの戦いがそこには待っています。

上述した通り、長く露出していると、暗電流ノイズがどんどん出てきてしまいます。 そしてそれが、ポツポツとした明るい点になって、画像に現れてきます。 しかし、このノイズの出方には規則性があり、同じ条件(同じ温度,露出時間,ISO感度)で撮影すると、 ほぼ同じ場所にノイズが発生します。 この特性を利用したのが、デジタルカメラに搭載されているノイズリダクション機能です。

ノイズリダクション機能をオンにして撮影すると、 本撮影後にカメラが自動的にシャッター(もしくは電子シャッター)を閉じて、もう一枚画像を撮影し始めます。 そして、ちょうど同じ露出時間で撮影を止め、そのノイズ画像を撮影画像から引くことでノイズ低減を行います。

簡単に言えば、撮影画像から、ポツポツした明るい点だけ引いてしまうわけです。 ノイズリダクション後の画像は、ノイズが除去されて綺麗になります。

便利な機能ですが、撮影時間が、通常の倍かかってしまうのが厄介な点です。 10分露出で星空を撮影していたら、ノイズリダクションが完了して、次の写真を撮影できるようになるまで、20分もかかってしまいます。

高感度ノイズ

高感度撮影時のノイズ 市販されているデジタルカメラは、ISO感度をユーザーが変更できるようになっています。

ISO感度の値を大きな数字に変更すると、あたかもCCDの感度が上がったようになり、 短いシャッター速度で、暗い被写体を撮ることができるようになります。

ISO感度が上がれば、暗いところでも手持ちで撮れるようになりますので、 夢のような機能ですが、世の中はそれほど甘くはなく、高感度に設定するほど、ノイズが増えてしまいます。

デジカメのISO感度を上げる(ゲインを上げる)ことによって発生するノイズは、高感度ノイズと呼ばれています。 一般写真の世界では、長時間ノイズよりも、高感度ノイズの発生量の方が注目されているようです。

天体写真の世界では、ISO800〜ISO3200程度のISO感度が、撮影によく使われています。 最近のデジカメは、画像処理エンジンの進化のお陰で、高感度ノイズがグッと減ったので、 ISO6400を使用することも珍しくないでしょう。 一般的にも注目度の高いのが高感度ノイズですから、 新機種が出るたびに、感度上昇に伴うノイズは減っていると考えられます。

なお、最近のデジカメには、この高感度ノイズの低減機能が備わっています。 高感度ノイズの低減機能をオンにすることで、ある程度、ノイズを目立たなくすることが可能です。 しかし、画像のシャープネスが失われることが多いので、ソフトウェア上で低減する方が良い場合もあります。

特に、星空の写真に高感度ノイズ低減を強くかけると、 写った星をノイズと間違えて、微恒星がかき消されてしまうことがあります。 星空撮影時は、この高感度ノイズ低減機能の設定に注意が必要です。

高感度ISOでの撮影は露光時間を短くできて魅力ですが、ダイナミックレンジが狭くなりがちです。 高クオリティの元画像を得ようと思えば、一般の被写体の場合でも、カメラ三脚などを併用して、 なるべく低ISO感度に設定して撮影する方がベストでしょう。

ブロックノイズ

ブロックノイズは、JPEG撮影時によく出てくるノイズです。 JPEG画像はファイルサイズを小さくするために、色情報などを圧縮しています。 たいていの場合は、8x8ピクセルを1ブロックに区切って圧縮しているので、 この境界線上でノイズが発生しやすくなります。

ブロックノイズを目立たなくするためには、画像の圧縮率を高めるほどノイズは多くなりますので、 なるべく圧縮率の少ないモード(Fineモードなど)で撮影するのがお勧めです。 また、デジタル一眼レフカメラなら、RAWやTIFFモードで撮影することで、このノイズ発生を防ぐことができます。

アンプノイズ、熱カブリ

アンプノイズ 熱カブリ デジタルカメラを使用して天体写真を撮影していると、 「このデジカメはアンプノイズが多いな」とか「熱カブリが全く出ないカメラだよ」という言葉を耳にします。

アンプノイズ(アンプグロー)や熱カブリというのは、デジカメの内部回路に起因する読み出しノイズで、 電子回路の熱が主な原因と考えられています。 熱やデジカメの電子回路が発生要因のため、このような名前で呼ばれるようになったのでしょう。

アンプノイズの発生するデジカメで長時間露光すると、液晶モニターに右のようなピンク色のカブリが発生します。 このピンク色の部分がアンプノイズで、発生量はカメラの機種によって大きく異なります。 全くカブリが出ないデジカメもあれば、画面全体を覆うようなものもあります。 また、気温が高いとアンプノイズが目立つ機種もあります。

アンプノイズもデジカメのノイズリダクション機能をオンにすれば、低減することが可能ですが、 リダクション後も、ノイズが発生していた部分の画像は、データーが少ない(階調が少ない)状態となってしまいます。 そのため、画像処理を進めていくと、そのアンプノイズを補正した部分だけが、 ザラザラした仕上がりとなってしまい、写真に不自然さが残ってしまいます。

アンプノイズは、綺麗な天体写真を得るうえで、最も厄介なノイズと言われており、 アンプノイズが少ないカメラを天体写真ファンは買い求めます。 これからデジタルカメラを天体写真用に購入されるなら、チェックしておきたいノイズです。

ところで、デジタル一眼レフカメラの動画撮影機能が注目されるにつれ、 デジカメ内部の熱の処理方法が、メーカーの新たな課題になっています。 4K/60P撮影に対応したキヤノンEOS-1DX MarkIIでは、 デジカメ内部にヒートパイプを設け、画像処理エンジンが発生する熱を外部に放出するような機構が設けられています。 今後は、パソコンのCPUに用いられているような排熱システムが、 デジカメにも搭載されるようになるかもしれません。

ランダムノイズ

その名の通りランダムに出てくるノイズで、正確な言葉の定義はなく、 読み出しノイズもこのノイズの中に入れられることがあります。

また、宇宙線によって発生したノイズもこの中に含まれ、撮影してみないとどこに出てくるのかわからないノイズです。

ランダムノイズを取り去るには、画像の重ね合わせ(コンポジット)が必要です。 何枚も同じ画像を撮り続け、パソコン上で画像処理を行うことで軽減することができます。 一般的に4枚の画像をコンポジットすれば、シグナルとノイズの比率は2倍に向上すると言われています。

色ノイズ、偽色

色ノイズや偽色と呼ばれるノイズは、デジカメに用いられているCCDセンサーが、 カラーCCDやカラーCMOSであることから生じるものです。 元々のノイズ自体には色が付いていませんが、撮影後にデジカメが、 RGBフィルターの情報を元に現像処理を行うことで、ノイズにも色がついてしまいます。

そのため、できあがった画像を拡大してみると、 赤や緑、それに青といった原色のノイズが出ていてビックリしてしまうわけです。 元々のノイズに色があるわけではありません。

天体写真の間では、星の色が本来とは異なる色で表現されることを、偽色と呼ぶことがあります。 市販されているデジカメには、RGBセンサーが用いられていますが、 撮影画像をデジカメ内部の電子回路でRGB画像に変換するときに、星に不自然な色が載ってしまう機種が存在しています。 これが「偽色」と呼ばれるようになり、天体写真ファンから、偽色が出るカメラは敬遠されるようになってしまいました。

今後のデジカメは

現在、デジタル一眼レフカメラは、2,000万画素オーバーが標準となり、5,000万画素クラスも市販されるようになりました。

画素数が増えると解像度が増して、写真の細かいところまで分解するようになりますが、 画素一つずつに入射する光の量が減ってしまいます。 そのため、ノイズやダイナミックレンジの面で、高画素化は辛いところです。

しかし最近では、カメラ内部のノイズ処理回路が高度化しており、特に高感度ノイズは目を見張るほど改善しています。 この技術を用いて、1200万画素クラスのデジタル一眼レフカメラをもう一度作ったら、 どのくらいのノイズ特性になるか興味深いところです。

天体写真撮影用として、一眼レフデジカメを冷却改造したモデルが登場し、天文ファンの間で人気を博しています。 これは、撮像素子の温度が下がれば下がるほど、ノイズの量が減る特性があることに注目して生み出されたカメラです。 冷却ユニットを動かすため、カメラ本体とは別に外部バッテリーが必要なのが難点ですが、 市販のデジタルカメラが、冷却CCDカメラ並みの低ノイズカメラへと生まれ変わります。

デジカメの高画素化はどこまで進むのかはわかりませんが、ノイズの発生量は、今後も確実に減っていくのだろうと思います。 夏の夜、常温でもノイズが全く発生しないデジタルカメラが、遠くない未来にきっと登場するでしょう。 そうなれば、誰もがもっと手軽に星空の撮影を楽しめるようになりますね。

キャノンEOS6D
キヤノンEOS6D

2012年秋に発表されたのが、キャノンのフルサイズデジタル一眼レフカメラ、キヤノンEOS6Dです。 画素数はEOS5DMarkIIやEOS5DMarkIIIよりも若干少ないものの、 高感度ノイズが大変少ないので、星景写真ファンに高い人気があります。 キヤノンEOS5DMarkIIIと比較すると、販売価格もこなれていているのもEOS6Dの魅力です。 現在、星空撮影に最も適したデジタル一眼レフカメラの一つだと思います。

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