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星空撮影時の結露対策

晴れた夜、星空撮影を楽しんでいると、いつのまにかカメラレンズに夜露が付着し、 レンズが結露してしまうことがあります。 結露すると像はぼやけてしまい、星々を鮮明に写し出すことができなくなります。

こうした夜露を避けるため、天文ファンは様々な結露防止の対策が考えてきました。 ここでは、それら結露防止の対策や方法についての情報をまとめています。

夜露と結露

結露したガラス 露とは、夜半又は早朝、屋外にある物の表面に付く小さな水滴のことです。 天体撮影は夜間行うので、これを夜露とよく呼んでいます。 この夜露が物体の表面上で水滴になることを結露現象と言います。

結露の原理は次の通りです。 冷たい物体の表面に水蒸気を含んだ空気が触れると、その空気の温度が下がります。 温度が下がると飽和水蒸気量が減るため、その部分の湿度が100%以上になり、 水蒸気が凝結して物体の表面上で水滴となります。 これが結露現象です。 冷たいコップの表面に水滴が付く様子を想像するとわかりやすいと思います。

星空撮影の際には、外に出して冷たくなった天体望遠鏡やカメラレンズの表面が結露します。 結露するとレンズや望遠鏡の性能が発揮できないだけでなく、カビ発生の原因にもなりますので、 天体撮影時は結露対策が必須です。

夜露が降りやすい場所

夜露は空気中の水蒸気が凝結する現象ですので、空気が十分に乾燥していれば夜露は降りてきません。 ですので、荒野のような乾燥した場所で撮影する場合は、結露対策は必要ありません。 しかし、日本は温暖湿潤な気候のため、たいていの場所では夜露対策を施した方がよさそうです。

また、経験上、アスファルトやコンクリートの路面の場合に比べて、土や芝生の場合は夜露が降りやすいです。 寒い冬だけでなく、春から夏にかけても夜露は発生します。 観測場所の近くに湿地や池がある場合、空気中の水蒸気量が多いため、夜露の量が多くなります。 また、風がない晩も夜露が落ちやすくなります。

兵庫県には砥峰高原という湿地帯がありますが、 ここで一晩天体撮影を行うと、機材は雨に打たれたようにびしょ濡れになってしまいます。

結露防止の方法

結露する原理を考えると、自ずと結露の対策が見えてきます。 つまり、冷たい物体に当たった空気が冷えて水滴を発生させるのですから、 その物体を温めてやれば、結露しにくくなるわけです。

こうしたことを踏まえて、様々な結露対策が考えられています。 以下に私が使用している結露防止の方法をご紹介します。

フードを取り付ける

夜露防止フード レンズにフードを取り付けると、レンズの結露をある程度防止することができます。 なるべく懐の深いフードの方が結露防止という意味で有利ですが、光を遮ってしまっては元も子もありません。 適した長さのフードをレンズ、もしくは天体望遠鏡に取り付けるようにします。

フードには結露予防だけでなく、迷光を防ぐ意味もあります。 安価なカメラレンズのフードは、別売りのオプション設定になっていることもありますが、 迷光や結露防止のことを考えると、星空撮影時には、レンズフードを付けることをお勧めします。

フードの中には、吸湿性の高い素材を使って、結露防止効果を高めた製品もあります。 右上がその一つで、段ボールで作られたFTフードと呼ばれている製品です。

汎用性はなく、天体望遠鏡毎の専用フードとなりますが、夜露が多い場所で撮影を行うなら、 こうした製品を使ってみるのもよいでしょう。 ただし、使用後はフードの紙素材が湿気を吸って柔らかくなりますので、 形を崩さないように日干しする必要があります。

ヒーターを巻く

タイプ5L横田ヒーター レンズの結露防止で一番ポピュラーなのは、レンズ(鏡筒)の周囲に電気ヒーターを巻くことでしょう。 ヒーターでレンズを温めてやれば、空気が冷えて凝結するのを防ぐことができるので、 レンズの結露を防ぐことができます。

天体撮影時の結露防止ヒーターとしては、 カナダのケンドリック社のDC12Vで駆動する電気ヒーターが、天文ファンの間でよく使用されています。 ヒーター本体と別売りのコントローラーで温度調整できるのがメリットですが、 天文用ヒーターとしては少々高価で、長い製品は断線しやすいのがネックです。

星空撮影時の結露防止ヒーターとして人気があるのが、 ヒーターの横田で知られている横田さんが製造販売されている天文用ヒーターです。

横田さんのヒーターは、長さや使用する電源によって、いくつかの種類が販売されています。 右上は私が使用している「タイプ5L」というヒーターで、電源にはエネループを8本使用します。 その他にモバイルバッテリーが使用できるタイプもあります。 ストラップもしっかりしていて、カメラレンズに使いやすいヒーターです。

レンズを少し温めさえすれば結露を防げるので、このような電気ヒーターを使わなくても結露予防は可能です。 携帯カイロはすぐに冷えてしまうので、こうした用途には使えませんが、 昔ながらの桐灰カイロやエネループヒーターでしたら、電気ヒーターの代わりを果たしてくれるはずです。 ただし、丸いレンズにこうしたカイロを固定するのはなかなか難しいので、 これから末永く星空撮影を楽むご予定なら、電気ヒーターを購入された方が快適だと思います。

乾燥空気を送る

乾燥空気送付装置 結露を防止してくれる魅力的な電気ヒーターですが、 ニュートン反射望遠鏡にヒーターを巻くのは手間がかかります。

主鏡ならまだしも、筒内の中央にスパイダーで固定されている斜鏡にヒーターを付けようとすると、 光路上にヒーターのケーブルを渡さなければなりません。 そこで、私が反射望遠鏡の夜露対策として使用しているのが、乾燥空気を送付する方法です。

乾燥空気送付装置というと、なんだか大層な物のように聞こえるかもしれませんが、 シリカゲルを通した乾燥した空気を、筒内に送る簡単な装置です。 反射望遠鏡にフードを取り付けて、乾燥空気を望遠鏡の底や側面から送ると、 砥峰高原のような高湿地域でも夜露を防ぐことができています。 反射望遠鏡の夜露対策に困っている方は、試してみてはいかがでしょうか。

乾燥空気の作り方や空気の循環方法などは、 乾燥空気送付装置の作り方ページに載せていますので、参考にしてください。

レンズのくもりを素早く取る方法

夜露で曇ったレンズ 今夜は湿度が低いと思って、ヒーターを巻かずに撮影をはじめたり、 乾燥空気を鏡筒内に送るのをうっかり忘れていると、撮影途中でレンズが結露してしまうことがあります。 星空撮影中に結露した時、素早くレンズの曇りを取り除くにはどうすればよいでしょう。

一番手っ取り早い方法は、レンズを一度カメラから外して、 車のエアコンの風を結露したレンズ面に軽く当てることです。 こうすれば、レンズの曇りはあっという間に取れてきます。

簡単に持ち運べない大きな光学系の場合は、レンズに乾燥空気を当ててみてはいかがでしょう。 曇ったレンズを見ていると、乾燥空気が当たっている部分から曇りが取れてくるのがわかります。 また、出力を変更できるヒーターをお使いなら、出力を上げてみてはいかがでしょう。

自宅で撮影しているならドライヤーを使う方法もありますが、遠征地では難しいと思います。 そこで、DC12Vで駆動するマメドラという製品が以前販売されていました。 私も念のために撮影時はマメドラを持参していましたが、思ったよりも出力が弱く、 なかなかレンズの曇りを取ることができませんでした。 他の方法の方が早いかもしれません。

一度レンズを結露させると取り除くのは思ったよりも大変で、貴重な撮影時間を無駄にしてしまいます。 湿度が低いと思う夜でも、星空撮影に入る前には、結露対策をしっかりと行っておいた方がよいと思います。

結露防止ヒーター
PROTAGE 結露防止 レンズヒーター

amazonで主に販売されている、USBモバイルバッテリーを使用するタイプのヒーターです。 ヒーター部分が短いため、口径の大きな天体望遠鏡には使用できませんが、 カメラレンズには便利なヒーターです。

温度調整機能が付いたタイプもありますが、星景写真撮影の用途なら、 特に調整機能は必要ないと思います。 また、冷却CCDカメラで撮影する場合は、温度調整機能の影響で画像にノイズが乗る場合があるので、 避けた方が無難です。

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露除けヒーター
ビクセン露除けヒーター2

天体望遠鏡メーカーのビクセンから発売されている露除けヒーターです。 ラーバータイプのヒーターで、ヒーター部分の長さが655mmもあるので、 口径が20センチ前後の大きめの天体望遠鏡にも使用できます。

私はこのビクセン露除けヒーターの初期型を所有していますが、ヒーター部分が長いため、 シュミットカセグレン望遠鏡には便利ですが、カメラレンズに使用するには不便です。 また、抵抗値がそれほど大きくないためでしょう、ヒーターを触っても温まっているかどうかわからない程度の発熱量でした。

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