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STVを使ったオートガイド方法

オートガイダーSTVを使ったオートガイド撮影の方法を記載しています。 他のオートガイダーでも設定項目などはほぼ同じですので、 参考になる部分があると思います。 少し専門的な内容ですが、何かにお役立ていただければ幸いです。


オートガイダーの取り付け

オートガイダーSTV まずはSTVオートガイダーの電源が切れていることを確認します。その後、CCDガイドヘッドケーブル、 電源ケーブル、オートガイドケーブルを接続します。

STVと各種ケーブルの接続が終わったら、CCDガイドヘッドを(望遠鏡)ガイド鏡に取り付けます。 取付は31.7スリーブを用いるのが一般的です。 CCDガイドヘッドはガイド鏡にしっかり取り付けておかないといけません。この部分が緩んでいると、 オートガイドの精度が悪くなってしまいます。

STVオートガイダーや最新のWebカメラガイダーは、CCDガイドヘッドやWebカメラが、赤緯赤経方向に 対して斜めに取り付けられていてもオートガイド可能です。 しかし、ガイドヘッドが斜めに取り付けられていると、赤道儀やオートガイドソフト上の パラメーターを用いてガイド量の調整を行うことが難しくなります。 なるべく、CCDガイドヘッドやWebカメラは、赤経と赤緯方向と水平垂直に取り付けるようにしましょう。


STVオートガイダーのセットアップ

STVオートガイダーの電源を入れます。電源を入れた後、STVオートガイダーはCCDヘッドの温度を 下げていきます。この間にSetUpボタンを押して、日付や時刻を合わせます。なお、特に必要なければ 、日付や時刻を合わせなくてもオートガイダーとして問題なく使用できます。


ピント合わせ

STVオートガイダーでもWebカメラ型のオートガイダーでも、ガイド鏡のピント合わせが次に必要になります。 撮影地でピントを合わせるのは時間がかかるので、自宅で一度ピントを合わせておいて、ガイド鏡の ドロチューブにマークしておくとよいでしょう。なお、撮影望遠鏡ではありませんから、それほど シビアにピントを合わせなくても大丈夫です。

STVオートガイダーのピント合わせでは、「Focus」モードを使用します。Focusボタンを押すと、STVは 設定モード画面を表示します。感度や、拡大率を変化できますから、コントロールノブを使って 好みの値に設定します。ピントを合わせるときは、高い感度で広い視野を持ったモードが使い易いでしょう。


キャリブレーション

キャリブレーションとは、赤道儀のモーターの動きと、ガイド鏡に取り付けたCCDガイドヘッド、または Webカメラ上の星の動きを関連づける作業です。具体的に言うと、赤道儀の赤経モーターを動かしたとき、 CCDガイドヘッド上で星はどう動いているかをオートガイダーに覚えさせる作業です。

キャリブレーションは、どんなオートガイダーでも必須の作業となります。毎回ガイド鏡やCCDヘッドの取り付け 角度が微妙に違ってきますから、撮影に行くごとにキャリブレーションが必要です。


キャリブレーションの方法

まずは赤道儀を動かして、ガイド鏡が天の赤道方向に大凡でよいので向くようにします。 これは天の赤道方向が一番星の動きが大きいので、キャリブレーションに使うのに向いているためです。

天の赤道方向の星が画面中央付近に現れたら、STVオートガイダーの「Calibration」ボタンを2回押します。 ボタンを2回押すと、STVはオートモードでキャリブレーションを行ってくれます。 何度か画面が切り替わった後、画面に矢印が表示されるはずです。こうなればキャリブレーション成功です。

キャリブレーションに失敗すると、STVの画面にエラーが表示されることがあります。 「NoMove」と表示された場合は、赤道儀のモーターが動いていません。赤道儀とオートガイダーを繋いでいるオートガイドケーブルの接続を確認しましょう。 「Star?」という表示の時には、オートガイダーがガイド星を確認できていません。あまり暗い星だと キャリブレーション失敗するので、明るめの星を使うか、設定でCCD感度を上げてやりましょう。

使っている赤道儀によっては、STVオートガイダーはキャリブレーションを何度も失敗することがあります。 これはたいていの場合は赤道儀の赤緯、赤経方向の移動速度が大きく異なるからです。 STVオートガイダーでは、キャリブレーション時間は設定できますが、赤緯、赤経方向独立には設定できません。 この時は赤道儀のモーター側で、移動速度を調整してやりましょう。


キャリブレーションのコツ

STVオートガイダーでもWebカメラオートガイダーでも、キャリブレーションがまず第一の難関のようで なかなかキャリブレーションが上手くいかないというお話を伺います。ここでは私が気をつけている点を 紹介いたします。

まず、キャリブレーションに用いる星は、1等星以外のなるべく明るい星を用いることです。 大抵のオートガイドソフトは、画面内によく似た明るさの星があると誤作動してしまいます。 画面の中には、他の星に比べて明るい星が一つあるように赤道儀を動かしてやりましょう。

キャリブレーションする前に、キャリブレーションに使う星を画面中央に置くようにします。 一番明るい星が画面端に位置していると、キャリブレーション動作中に画面から消えてしまいます。 こうなりますと、オートガイダーは星を見失いエラーを起こします。

キャリブレーション時間は、ある程度の長さが必要です。急いでいるからと言って数秒に設定していると 赤道儀の動きをオートガイダーは拾ってくれません。特に、反応の悪い赤道儀の場合には、長めの値に 設定しておきましょう。

キャリブレーションはなるべく2回行うようにしましょう。これは赤道儀にはバックラッシュという 誤差があるため、1回目はその誤差がキャリブレーション結果に大きく出てしまいます。 二度キャリブレーションを行うと、その誤差も少なくなって正しい値がオートガイダーに記憶される ようになります。


反応係数の設定

STVオートガイダーは、Agressivenessと呼ばれる反応係数を設定できる画面があります。 これは、オートガイダーから赤道儀に送る信号を、どれだけ強く送るかを設定する画面で、値を1にすると オートガイダーが動けという信号を出した分だけ、赤道儀は反応することになります。

天球を動く星の動きは、赤緯座標によってその速度が変わります。天の赤道付近は最も移動速度が速く、 北極星の周りはゆっくりと動きます。そのため、本来はキャリブレーションは撮影座標の近くで毎回 行う必要がありますが、それは大変面倒なことです。 そこで最も移動量が大きな天の赤道付近でキャリブレーションをして、後はオートガイダーの パラメーター設定でガイド信号量を調整してやります。なお、市販のWebカメラオートガイダーには、 赤緯座標を入力する項目があります。これらのソフトの場合には、この値を参考にして信号量を調整している ものと思います。

STVの場合には、Agressiveness(反応係数)がその信号量調整の役目を担います。 まずは赤緯、赤経軸とも反応係数を0.5に設定します。これは、ガイド星が細かく動いても赤道儀に反応を 送らないようにする、という意味もあります。気流の揺らぎによるガイド星の動きまで追っていては、 あまり意味をなさないからです。

撮影望遠鏡を撮影対象(アンドロメダ銀河など)に向けた後、その近くでガイド星を探します。 この時に大凡の赤緯座標を星図やステラナビゲーターなどで確認します。

高緯度の天体ほど移動速度が遅くなりますから、撮影対象の赤緯座標に応じて赤経方向の 反応係数を変えてやります。目安としては、赤緯座標が45度付近では0.7、60度以上の北天の天体の 場合には1に設定します。

もしタカハシEM200などの赤緯、赤経軸を独立にモーター速度を変えられる赤道儀をお使いならば、 赤道儀の微動モーター速度を変えることでも、同じことが実現可能です。 オートガイダーのパラメーターは変えたくない場合などは、そちらで調整するのがよいでしょう。


オートガイド開始

キャリブレーションや各種設定が終われば、「Track」ボタンと「Value」ボタンを押して、 オートガイドを開始します。その後撮影鏡筒に取り付けたデジカメのシャッターを切り、撮影を 開始します。

やれやれと言ったところですが、なるべく始めのコマはオートガイドの調子を見るよう にしましょう。過修正が頻繁に表示されるようであれば、一度ガイドを停止して反応係数を 下げてみましょう。また、星がなかなか戻ってこない場合には、逆に反応係数が小さすぎる場合が あります。こちらの場合には、反応係数を大きくしてみましょう。

最初のコマはオートガイドのエラーが出やすいものですから、最初の10分間は時折 オートガイド状況をチェックするようにしましょう。私も撮影を始めて10分間は、 オートガイダーの画面を見るようにしています。

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