惑星を撮影してみよう

銀塩フィルムがカメラの主流だった頃、シャープな惑星写真を撮影するのは難しく、 フィルムを何枚も無駄にしたものでした。 しかし、デジタルカメラの登場と共に、惑星は手軽に撮影できる対象になりました。

動画の撮影方法が広まってからは、惑星写真のクオリティは一気に向上し、 まるで探査機で写したような惑星の写真を、アマチュアの機材で生み出すことが可能になりました。 このページでは、デジタル機材を使った惑星の撮影方法について説明しています。


惑星は動画で撮るのが主流

Webカメラ デジタルカメラが登場した頃は、コンパクトデジカメやデジタル一眼レフカメラを使って、 静止画として惑星を撮影し、Photoshop等で処理して仕上げるのが一般的でした。

その後、火星が地球に大接近した2003年頃、WebカメラのToUcamProが惑星撮影用のデバイスとして注目を集めました。 ちょうどフリーの天体動画処理ソフトRegistaxが登場したこともあり、惑星をToUcamProやWebカメラで動画撮影し、 Registaxで処理するという手法が天文ファンの間で瞬く間に広まりました。 それ以来、惑星は動画で撮影することが主流となりました。

動画撮影のメリットは、静止画撮影では不可能だった、何枚もの静止画を連続した映像として得られることです。 そして、得られた多数の静止画の中から、シャープな静止画を選び、 それらをコンポジット(重ね合わせ)してから画像処理を施すことで、 詳細な惑星画像を得られることができるようになりました。 大気の気流が悪く、惑星像が揺れているときでも、シャープな像を得られる確率が高まりました。

また、動画撮影の場合は、デジカメを使った撮影のときと異なり、 ミラーショックやシャッターブレの心配がないこともメリットです。 惑星の撮影は非常に高い倍率で行っているため、僅かな揺れやブレも像の劣化に繋がります。 動画撮影はシャープな惑星撮影を得るうえで、最も適した方法と言えるでしょう。


惑星撮影用のカメラ

ZWO社ASI天体用カメラ 昔は、ToUcamProをはじめ、Webカメラを惑星撮影用に改造するユーザーが多かったのですが、 現在、惑星撮影に主に使用されているのは、天体撮影用の高感度CCDカメラ、高感度CMOSカメラです。

具体的には、ZWO社のASIシリーズや、セレストロン社のSkyris(スカイリス)シリーズのカメラが、 惑星撮影用として人気があります。 ASIシリーズは、幅広いラインナップを有しており、星雲星団撮影に適した大型センサーモデルも用意されています。 一方、スカイリスは惑星撮影に特化したカメラで、センサーの種類やフレームレートが異なる8種類のタイプが用意されています。

惑星撮影用としてカメラを選ぶ場合は、大きなサイズのセンサーは必要ありません。 センサーのサイズは、天体望遠鏡の焦点距離にもよりますが、5ミリ×4ミリ程度で十分だと思います。 センサーのピクセルサイズ(一画素の大きさ)は、現在はサイズの小さいセンサーが人気です。 ピクセルサイズが小さいほど、高詳細の画像を狙えますが、感度が低いこともありますので、 量子効率特性(感度特性)をチェックしてから購入することをお勧めします。

なお、惑星撮影用カメラには、モノクロセンサーが用いられた機種と、カラーセンサーの機種があります。 モノクロセンサーの方が解像度や感度が高く、最終的に滑らかな作品が得られますが、 最終的にカラーの写真を得ようと思えば、カラーデーターを別途撮影しなければなりません。 撮影システムが複雑になりますので、はじめての方は、カラーセンサーモデルをお勧めします。


デジタルカメラの動画撮影機能

デジタル一眼レフカメラで撮影した木星 惑星撮影用のカメラとしては、上記のASIシリーズやスカイリスシリーズが理想的ですが、 デジタルカメラの動画撮影機能でも惑星写真を撮影することが可能です。

右上は、キヤノンEOS60Dの動画撮影機能(640×480クロップ)を使って撮影した木星の写真です。 約2分間撮影して得られた動画を画像処理して、一枚の静止画として仕上げた作品です。 このように、デジカメの動画機能でも、高詳細の惑星写真を撮影することが可能です。

惑星撮影用にデジタルカメラを選ぶ場合は、一般用途とは少し違った視点から選択する必要があります。 最近のデジタルカメラは動画機能が強化され、4K画質にも対応したモデルが発売されています。 しかし、惑星撮影にはこうした動画機能は不要で、 センサー中央部のピクセルだけを使用して動画を撮影するクロップモードの有る無しがポイントです。

今回、木星の撮影に使用したEOS60Dには、「640×480クロップ」という中央読み出しモードがあります。 しかし、最近機種のEOS80Dでは、全体的に動画機能は洗練されましたが、この機能は省かれてしまいました。 一眼動画の分野で人気のキヤノンEOS80Dですが、惑星の動画撮影には使いづらいと思います。

惑星撮影用のデジカメとして、昔から人気があるのは、パナソニックのルミックス一眼カメラです。 ルミックスには「EXテレコン」というモードが装備されていて、EOS60Dと同じように中央のピクセルだけを使用して、 惑星の動画の撮影が可能です。 探せば、他にも同様の機能が装備されたデジカメがあるかもしれません。


惑星撮影に向いた天体望遠鏡

惑星撮影用天体望遠鏡 惑星は小さく、単位面積当たりの明るさが暗いため、大口径の天体望遠鏡が有利です。 惑星の詳細を撮影しようと思えば、口径20センチ以上の天体望遠鏡を用意したいところです。

天体望遠鏡の種類の中では、大口径という点から、反射望遠鏡が惑星撮影に向いているでしょう。 タカハシTOA-130をはじめ、最近のアポクロマート屈折望遠鏡は、非常にシャープでコントラストもよいので、 惑星の観望には適していますが、撮影となると光量が不足してしまいます。

反射望遠鏡の中でも、中心像のシャープなニュートン反射望遠鏡が、惑星撮影に昔からよく使われています。 しかし、ニュートン反射は口径が大きくなると、鏡筒が長く重くなってしまうため、 望遠鏡を載せる架台も大型の製品が必要になってしまいます。 最近は、惑星撮影に魅力的な大口径ニュートン反射が、手に入れやすい価格で販売されていますが、 大きさや重さの問題を考えてから購入されることをお勧めします。

他に、惑星撮影用としてよく使われているのは、カセグレン式の望遠鏡です。 シュミカセの愛称で親しまれているシュミットカセグレン式は、ニュートン式に比べると中心像は甘いですが、 軽くてコンパクト、そして大口径が比較的安価で手に入ることで人気があります。 手軽に惑星撮影をはじめるなら、口径の大きなシュミカセがお勧めだと思います。

主鏡に楕円面、副鏡に凸面鏡を用いたドール・カーカム式も惑星撮影に使われています。 コマ収差が激しいドール・カーカム式ですが、中心像はニュートン反射並にシャープです。 ただシュミカセに比べると、価格が高いのがネックですので、その点が気にならなければお勧めの望遠鏡です。

なお、どんな天体望遠鏡でも言えることですが、光軸が合っていないと本来の性能を発揮することができません。 光軸をしっかり合わせて撮影に使用するようにしましょう。 特にシュミカセは、ユーザーが光軸調整できる部分が限られていますので、 できるだけ信頼できる製品を選ぶことがポイントと思います。

惑星撮影に適した天体望遠鏡の一例

望遠鏡名 メーカー 口径 実勢価格 お勧めポイント
C8AL-XLT セレストロン 20センチ 100,000円前後

口径20cmのシュミットカセグレン式反射望遠鏡。口径の割にコンパクト。 中心像のシャープさはニュートンやドールカーカムに及ばないが、コストパフォーマンスに優れている。

NERO-200N 笠井トレーディング 20センチ 145,000円前後

口径20センチのニュートン反射望遠鏡。 惑星用のF6という口径比が魅力の天体望遠鏡だが、大きく長いので丈夫な架台が必要。

μ-180C タカハシ 18センチ 190,000円前後

口径18cmのドールカーカム式反射望遠鏡。口径の割にコンパクト。中心像は極めてシャープで惑星撮影に向く

C11-XLT セレストロン 28センチ 300,000円前後

口径が大きいので、昔から、惑星撮影に人気がある天体望遠鏡。 筒内気流が収まりにくい欠点があるため、電動ファンを後付しているユーザーが多い。 コストパフォーマンスの高さが魅力。

Mewlon-250CRS タカハシ 25センチ 700,000円前後

惑星から星雲・系外銀河まで撮影を楽しめる万能機。 25センチの割に軽いので、観望用途ならEM200にも搭載できる。 価格は高いがタカハシらしい品質の高さが魅力。

C14-XLT セレストロン 35.5センチ 900,000円前後

C14は、市販されている中で最大口径の天体望遠鏡。 圧倒的な集光力を生かして、フレームレートを上げることができるのが魅力。 本格的な惑星撮影者に人気がある。


惑星の撮影システム

惑星は月や星雲に比べて視直径が小さいため、天体望遠鏡の直焦点では小さくしか写りません。 大きく映し出すためには、接眼レンズやコンバーションレンズを使用して、天体望遠鏡の像を拡大する必要があります。

天体望遠鏡の像を拡大する方法には、いくつかありますが、惑星撮影で主に使用されているのは、 接眼レンズを使った拡大撮影方法と、バローレンズを使って対物レンズで出来た像を引き伸ばす方法です。

惑星撮影システムその1

上の写真は、接眼レンズを使った惑星撮影システムで、TCA-4と書かれたカメラアダプターの中に接眼レンズが入っています。 銀塩フィルムの頃から使用されている拡大撮影システムで、昔から天体撮影をされていた方には馴染み深い組み合わせだと思います。 カメラアダプターの後部には、カメラマウントが取り付け用のネジが切られているため、 デジタル一眼レフカメラ向きの撮影システムです。

惑星撮影システムその2

一方、上は、バローレンズを使った惑星撮影システムです。 惑星を眼視で観望するときと同じように、31.7ミリの接眼部にバローレンズを指しこみ、 その後ろに惑星撮影用のカメラを取り付けています。 31.7ミリスリーブが付属している惑星撮影カメラ向けの撮影システムです。

上記は私の撮影システムですが、この他にも様々な組み合わせがあります。 撮影デバイスに合う撮影システムを工夫するのも、惑星撮影の楽しみの一つだと思います。 なお、モノクロセンサーが用いられたカメラを使用する場合は、 フリップミラーを光路の途中に入れて、後ろ側にモノクロCCDカメラを、上側にRGBカメラを取り付けて撮影を行っています。


バローレンズと接眼レンズ

パワーメイトと接眼レンズ 銀塩フィルムカメラの時は、接眼レンズで像を拡大して、惑星を撮影するのが主流でしたが、 現在では、バローレンズを使う方が一般的になりました。

短焦点の接眼レンズを使用した方が拡大率を上げられるのですが、 現在のデジタル機材の場合、バローレンズで十分な拡大率を得られるためでしょう。

デジタルカメラは、銀塩カメラに比べて、ピクセルサイズ、センサーサイズ共に小さくなりました。 カメラの解像度が向上したので、昔のような拡大率が得られなくても高詳細な画像が得られます。 また、拡大率を高くしすぎると、像が暗くなってしまい、動画のフレームレートを上げられないため、 バローレンズを使うユーザーが増えたのだと思います。

バローレンズの中で人気が有るのが、テレビュー社のパワーメイトです。 他社製と比べて高価なバローレンズですが、同社のアイピースと共に高品質な製品として親しまれています。 他に惑星撮影用としてよく用いられているのは、笠井トレーディングのショートバローです。 ショートバローは、コストパフォーマンスが高い製品です。

拡大撮影用の接眼レンズは、銀塩フィルムの頃は、ペンタックスやタカハシから高品質な製品が販売されていました。 しかし、現在は月や惑星の拡大撮影に接眼レンズが使われる機会が減ったためか、 撮影用をアピールした製品は減ってしまいました。 ただ惑星撮影用としては、周辺像歪曲などは大きな問題にならないので、 通常のアイピースでも問題なく使用できると思います。


色分散を補正するプリズム

ウェッジプリズム ADC 光は波長によって屈折率が異なるため、分厚い地球の大気を通ってきた惑星の光は、色が分散して滲んでしまいます。 惑星の高度が低いほど通過する大気の層が厚くなるため、その影響は顕著に表れます。

惑星の高度が高ければ、色分散はそれほど気になりませんが、 気流が落ち着く日本の夏の時期は、惑星の南中高度が低くなるため、大気差による色分散が目立ってしまいます。 その影響を補正するために考え出されたのが、「ウェッジプリズム」と呼ばれる補正ツールです。

ウェッジプリズムは、元々、レーザーなどのコヒーレントな光を偏角するために用いられていた研究用のプリズムです。 昔はユーザーが自作するしかありませんでしたが、 現在では「ADC(Atmospheric Dispersion Corrector)」という名称で市販されています。 右上は、私が使用しているZWO社の大気色分散補正プリズム(ADC)の写真です。

ZWO社のADCには、プリズムの角度を可変させるレバーがついています。 色分散の度合いは惑星の高度により変化するため、このレバーを動かして、 プリズムの角度を変更して色分散を補正します。 撮影時に使用する場合は、まず、ADCにアイピースを差し込んで、肉眼で色分散の補正を確認すると、 調整のコツが掴みやすいと思います。


デジタルカメラでの撮影方法

デジカメの設定画面 デジタル一眼レフカメラを使った惑星撮影のポイントです。

まず、はじめて惑星を撮影する方は、天体望遠鏡とファインダー(望遠鏡のファインダーです)の軸を正確に合わせておきましょう。 惑星は拡大して撮影するため、デジタルカメラの写野内に惑星を導入するのに結構手間取ります。 ファインダーを使えば、すばやく惑星をカメラの視野内に導入できるでしょう。

撮影システムの後ろにカメラを取り付け、惑星がデジタルカメラのファインダー内に入ったら、 まず大まかにピントをあわせます。 次にカメラの撮影モードを動画撮影モードに切り替え、惑星像を液晶モニターで確認し、ピントを追い込みます。

液晶モニターに映し出された惑星像が暗い場合は、ISO感度を上げましょう。 逆に明るすぎる場合は、ISO感度を下げます。 設定できるISO感度の幅で対処できない場合は、接眼レンズやバローレンズを交換するなどして、拡大率を変更しましょう。

ピントが合ったら、動画撮影ボタンを押しましょう。 時計やストップウォッチで経過時間を確認しながら、数分経過したところで、動画撮影を終了します。 自転速度が速い木星の場合は、2分前後が適正の撮影時間だと思います。

@望遠鏡のファインダーの平行出しをしておく
A撮影システムを望遠鏡に取り付ける
Bデジタルカメラのファインダーを見ながら惑星を導入し、大まかにピントをあわせる
C動画撮影モードに切り替え、ピントを合わせる
DISO感度を変更して惑星が適正な明るさに表示されるようにする
E録画開始ボタンを押して撮影を開始する


天体用カメラでの撮影方法

天体用カメラ 惑星撮影用のASIやSkyrisカメラには、液晶モニターやシャッターボタンが設けられていませんので、 パソコンに繋いで使用します。

デジカメの場合と同じように、パソコンの液晶モニターを見ながら惑星を導入しましょう。 デジカメのような視野の広いファインダーがないので、少し手間取るかもしれません。 分かりづらい場合は、アイピースを差し込んで、惑星を中央に導入してから、 カメラに交換するとよいでしょう。

ピント合わせも、パソコンモニターを見ながら行います。 パソコンモニターは、デジカメの液晶モニターよりも大きいので、ピント合わせは行いやすいかもしれません。 ゲイン(ISO感度)とシャッター速度を変更しながら、適当な明るさになるようにカメラの設定も同時に行いましょう。

デジカメの場合、動画撮影時のフレームレートやシャッター速度は一般的に固定ですが、 惑星撮影用カメラの場合は、ユーザーが設定することができます。 できるだけ速いフレームレートの方が、気流の乱れの影響を受けづらくなり有利ですが、 パソコンのマシンパワーが必要になります。

ピントを合わせられたら、撮影を開始しましょう。 できれば、ゲインやフレームレートを変更して、いろいろな設定で撮影しておくと、 次に惑星を撮影するときの参考になると思います。

@望遠鏡のファインダーの平行出しをしておく
A撮影システムを望遠鏡に取り付ける
Bパソコンの液晶モニターを見ながら惑星を導入し、ピントをあわせる
Cシャッター速度やゲインを調整して、適正な明るさに表示させる
Dピントが合ったら、フレームレートとシャッター速度、ゲインをもう一度調整する
E動画ファイル形式を確認して録画を開始する


火星の撮影

火星の撮影 火星は地球のすぐ外側を、公転周期687日で回っています。 地球からの距離は近いのですが、火星は地球の半分ほどと小さいため、 地球に接近したとき以外は、観測や撮影が難しい天体です。

火星は、地球に約2年2ヶ月ごとに接近しますので、その時期に撮影するようにしましょう。 特に、地球に大接近したときは、火星の視直径は20秒を超えますので、小型の天体望遠鏡でも撮影を楽しめます。 次の大接近は2018年7月31日ですから、その前後2ヶ月ほどが撮影のチャンスです。

火星は視直径が小さいため、撮影が難しいと思われていますが、 土星や木星に比べて輝度が高いため、拡大率を上げても速いシャッターを切ることができます。 思ったより写しやすい対象ですので、是非撮影にチャレンジしてみてください。

2018年7月に地球に接近する火星については、 特設ページ「火星大接近 2018」をご覧ください。


木星の撮影

木星の撮影 惑星撮影ファンの中で、最も人気がある惑星は、縞模様が特徴的な木星でしょう。 木星は太陽系最大の惑星で、地球の約11倍の大きさがあり、夜空で明るく輝きます。

木星は視直径が大きく、比較的明るいので、小口径の天体望遠鏡でも撮影を楽しむことができます。 しかし、表面の縞模様を詳細に写すには、口径15センチ以上の天体望遠鏡を使いたいところです。

木星の自転速度は速く、約9時間56分で一回転しているため、 時間をかけてじっくりと観望していると、縞模様の様子が移り変わっているのに気づきます。 長時間にわたって動画撮影を行うと、画像処理の時に縞模様がずれてしまうので注意が必要です。 木星の撮影は、手早く行うようにしましょう。


土星の撮影

土星の撮影 土星は環が魅力的な天体です。 天体観望会などで、子供たちに一番人気があるのが土星ですが、 惑星の中で最も撮影が難しい天体です。

その理由は暗いからで、土星は木星の4分の1ほどの明るさしかありません。 そのため、拡大率を上げすぎてしまうと、とても暗い画像に仕上がってしまいます。 土星を撮影するときは、木星を撮影するときよりも、拡大率を下げるように心がけましょう。

土星も木星と同じく自転速度が速い惑星で、約10時間40分で一回転しています。 しかし、土星は木星と比べて目立つ模様が少ないため、 撮影時間を気にする必要はそれほどありません。 ただ土星本体の白斑などを抽出したい場合は、木星と同じように撮影時間を調整する方がよいでしょう。


惑星撮影のコツ

惑星の撮影で最も難しいと感じるのは、ピント合わせではないでしょうか。 合成F値が大きいので、明るい望遠レンズのようなピントの浅さはありませんが、 逆にそのピント深さと気流の悪さが相まって、最適なピント位置を判断しづらいです。

気流の良い日は、ピントの最適位置がわかりやすくなるので、 そのような夜にしっかりとピントを合わせて、ピントの位置をドロチューブにマークしておきましょう。 今後の撮影が楽になると思います。

惑星の撮影で最も重要なのは、気流です。 気流はシンチレーションとも呼ばれますが、上空の大気の揺らぎのことで、星が瞬くのはこのためです。 一般的に夏場は気流がよく、冬場はよくありません。 言われてみると、冬の星はキラキラと瞬いているイメージがありますね。

気流の悪い日は、惑星撮影のエキスパートでもよい惑星写真は撮影することができません。 逆に気流の良い日に撮影できれば、初心者でも驚くほど詳細が写った写真を撮影することが出来ます。 惑星を上手に撮影する秘訣は、良い気流を見逃さずに撮影することです。 撮影回数を増やせば、きっと素晴らしい写真が撮れるようになると思います。

ちなみに、日本は上空にジェット気流が流れているため、世界的に見て気流が悪い場所です。 気流の落ち着いた諸外国に比べ、撮影条件は悪いのですが、 国内から海外に負けない惑星写真を撮影されている方もいらっしゃいます。 このページをきっかけにして、高詳細の惑星写真の撮影にチャレンジしてみていただければ幸いです。


惑星観望も楽しもう

惑星の観望 画像処理した惑星の写真と比べると、自分の眼で見た惑星の像は、 どこかボヤッとしていて、模様も鮮明には見えません。 しかし、時折、落ち着いたときに見せる惑星の姿には、ハッと驚かされることがあります。

また、惑星をアイピースを交換して見比べるのも楽しいひと時です。 惑星の撮影に熱中すると、惑星像を見るのは液晶モニター越しになってしまいがちですが、 是非、惑星撮影するときには、ご自分の眼で惑星の観望も楽しみましょう。

惑星を肉眼で見ることは、惑星の撮影の上達にも有効だと思います。 惑星を何度も観望していると、気流が良くなる兆候が自然とわかるようになりますし、 自分の眼で惑星を見ておけば、撮影した惑星の色合いや、模様の善し悪しの判断もできるようになります。 写真の仕上げの面でも、惑星を実際に見ているかどうかは、大きな違いとして表れると思います。


まとめ

惑星撮影というと難しいイメージがありますが、撮影システムを作り上げれば、それほど高度なテクニックは必要ありません。 「晴れたら撮影する」を根気よく繰り返すうちに、徐々に素晴らしい画像を撮影できるようになると思います。

惑星は明るいので、淡い星雲や銀河の写真と異なり、都会でも撮影することができます。 星空が綺麗な郊外に出かけなくても、仕事を終えて帰宅した後、 自宅で気軽に撮影を楽しめるのも、惑星撮影のメリットです。

また、星雲や銀河とは異なり、惑星は地球と同じように自転しているので、 毎日、異なる姿を見せてくれます。 特に火星や木星は、表面の模様の変化が興味深く、毎日、撮影しても飽きることがありません。 上空の気流も撮影日や撮影時刻によって変わるので、惑星の見え方は刻々と変化します。 静的な天体写真の中で、惑星撮影は、最もダイナミックな写真分野かもしれません。

惑星撮影は、個人的に楽しむだけではなく、継続的に記録された画像は、 天文学的にも貴重な資料になります。 木星の模様の移り変わりや、火星表面のマップ、土星の環の傾きの変化など、 テーマを持って惑星撮影を楽しめば、より深く惑星の撮影を楽しめるのではないでしょうか。

なお、動画撮影した惑星の処理方法については、惑星の画像処理方法のページをご覧ください。

2019年4月更新

過去の記事は「惑星撮影の方法 2005年版」をご覧ください。

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