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冷却CCDカメラを使ったHα撮影にチャレンジ!

モノクロ冷却CCDカメラとHαフィルターを組み合わせて、夜空で輝く星雲の写真を撮ってみましょう。 このコーナーでは、Hαフィルターの選び方から、撮影機材の選定、実際の撮影方法、画像処理についてまとめています。 各ページには、左の実践編「モノクロ天体写真撮影」の中のリンクからアクセスして下さい。

このHαモノクロ撮影のページは、天体写真撮影の経験がある程度ある方向けに記載しています。 初めての方向けには、天体写真撮影の方法ページを設けていますので、 そちらをまずご覧下さい。


冷却CCDカメラとHαフィルターを使ってモノクロ画像を撮ろう

天体専用デジタルカメラの冷却CCDカメラと、 人気のHαフィルターを使って、夜空で輝く赤い星雲のモノクロ撮影にチャレンジしてみましょう。

「やっぱりカラーじゃないと・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、冷却CCDカメラで得られたHαモノクロ画像は、階調豊かでインパクトがある美しさです。 自宅から撮影した散光星雲のプリントをご覧いただければ、 「おぉー、いいね。私も撮りたいな」と思われることでしょう・・・違うかもしれませんが。

ペリカン星雲 ところで、Hαフィルターを使うとなぜ星雲が写るのかと思われる方がいるでしょう。 それは、天体撮影に人気のある散光星雲(輝線星雲)は、Hα線と呼ばれるある特定の波長(656.3nm)を発しているためです。

夜空に瞬く星は、連続光(いわゆる虹の七色ですね)で輝いています。 しかしこうした星雲は、連続的な色で輝いているわけでなく、特定の色の波長(OIIIやHαなど)だけで光っています。 このHαの光だけを通すように作られたフィルターが、Hαフィルターなのです。

こうした特定の波長を通すだけのフィルターは、ナローバンドフィルターと呼ばれています。 ナローバンドフィルターの一種が、Hαフィルターというわけです。 こうしたフィルターを使えば、特定の波長以外の光はブロックするので、 光害がある都会の夜空からでも星雲を撮影することができます。 遠くにいかなくとも撮れるのですから、都会に住む人にとっては魔法のフィルターですよね。

Hα光で光る散光星雲はたくさんあります。 人気のペリカン星雲、カリフォルニア星雲、モンキー星雲・・・それにあの馬頭星雲だって、 Hαフィルターを使えば光害のある自宅からでも撮れるんです。 冷却CCDカメラの取り扱いに慣れる意味も含めて、どんどんHα撮影してみましょう。

右上は都会で撮ったペリカン星雲です。 天体写真ギャラリーページに大きな天体写真も載せてます。


Hαフィルターの選び方

Hαフィルターと言っても、市場にはたくさんの種類が販売されています。 一体どれを購入すればよいのでしょう。 Hαフィルターは、小さいフィルターの割に値段も結構しますし、気になりますよね。

Hαフィルターを選ぶ上で注目することは、仕様書などに書かれた「半値幅」という言葉です。半値幅というのは通す波長の幅のことで、これが広いほど広い範囲の光が たくさん通り、狭いとHα光以外の光が通りにくくなります。

初めは「広い方が光をたくさん通すのでいいのかな?」と思ってしまいますが、必ずしもそうではありません。 半値幅が広くなればHα以外もたくさん通すことになるので、光害の影響を受けやすくなります。 「じゃ、狭い方を買えばいいんだね」と言われると、 狭くなるとフィルターを通る全体の光の量がググッと減るので、コントラストはよくなるものの露出時間がべらぼうにかかってしまいます。

じゃぁ、どうすればいいんだ」と言われると、使っている機材と合わせて考えてみてはいかがでしょうか。 ご自分の持っている機材のF値がとっても明るく、F2.8とかでしたら、一度にたくさん光を集められますので、 半値幅の狭いフィルターでも十分撮影することができます。 しかし「F8のレンズしか持っていないよー」ということであれば、受ける光の量は激減しますので、 少し広めのものを使われるのがいいでしょう。

Hαフィルター

ちなみに半値幅が狭いものでは、5nm(Custom Scientificフィルタなど)ぐらいのものがありますが、 10nmぐらいのものが価格もこなれて一般的です。

私も右のような半値幅13nmのHαフィルターを使っていますが、これで撮影を十分に楽しめます。 初めはこのくらいで撮影されるのがよろしいのではないでしょうか。

最初から「超狭いフィルターで、ハイコントラスト作品を撮ってフォトコン入選!」とやると、 撮影だけで2晩、3晩にわたってしまい疲れてしまいますので。 慣れないうちは気楽に撮影を楽しみましょう。


Hα撮影に使う機材

さて実際に撮影に移る前に、どの機材を使って撮影に挑みましょう。

何も言わないと・・・

「やっぱりSDP光学系じゃないとな。」
「いや新しいFSQ-EDで決まりだろ!FSQの海外実績が物語っているぜ」
「オレはε-180しか意味ないと思うね。」

と思われるかもしれません。 まぁ理想を言えば、前の三つのどれかを使えれば最高には違いないのですが、ちょっと高価な望遠鏡ですよね。 その点、Hαフィルターは狭い波長の光しか通さないので、色収差の影響はほとんど無視することができます。 ですので、昔使っていたアクロマート屈折望遠鏡で撮ったりすることができるのです。 これは助かりますよね。

ただ、注意すべき点もいくつかあります。上にも書きましたがHαフィルターを通すと光の量がグッと少なくなります。それを補う意味でもなるべく明るい光学系が有利だ ということです。もちろん暗い光学系でも写すことはできますが、明るい光学系と同じだけの滑らかさ(SN比)を得ようとすると、たくさん露出する必要が出てきます。

ε160望遠鏡

それともう一つ。色収差はキャンセルできても、コマ収差や非点収差は無視できないということです。写真の端々まで、ピシッと丸を保った星像を得ようとすれば、この 点は気を付けていた方がよいと思います。ニュートン反射望遠鏡でしたら、コマ収差を減らす補正レンズも市販されているので、使われてみるのもよいでしょう。屈折望 遠鏡なら、補正レンズを入れなくても小さな冷却CCDチップの写野範囲なら、 収差も目立たないことも多いので、一度撮影を試してみられるのもよいと思います。

細かく書きましたが最初は失敗はつきものです。あまり考えすぎず、まずは手持ちの機材で撮影してみましょう!

右上の写真は、私愛用のタカハシε160望遠鏡です。


ガイドはどうする?

いよいよ撮影・・・の前にもうちょっと気になることがあります。 星は日周運動しているので、それを追いかける自動追尾をどうするかということです。

「オレの赤道儀は三鷹GN赤道儀だから追尾誤差は±1秒以内! ガイドなんていらねぇ〜。ノータッチガイドで大丈夫だぜ。」

という人はよいのですが、通常は赤道儀にオートガイド装置を組み合わせないと、 星が流れて写ってしまうでしょう。

SBIG製の冷却CCDカメラをお使いなら、「ST2000XMはセルフガイドチップがあるから、それで追尾させたらいいじゃない」と思われるかもしれませんが、 ガイドチップに届く光はHαフィルターを通して、微弱になっています。 明るい星がガイドチップの視野内に運良くあればよいですが、なければガイド星を見つけることができません。 これがHα撮影のネックでもあります。

解決策としては2つほどあります。

ガイド鏡とオートガイダーを使う
オフアキシス装置を使って、フィルターの前にオートガイダーを挿入する

ということです。どちらにしても別途オートガイダーは必要になりますが、仕方がありません。 事前にステライメージなどで写野を調べて、ガイドチップ内に明るい星がない場合は、上のどちらかの方法を採るのがベストでしょう。

とは言いましたが、暗い星しか見つからなくても、ガイドチップに5〜10秒程度の露光をかけてやれば、案外とセルフガイドができちゃったりします(私も面倒なのでそうやっています)。 SBIG製の冷却CCDカメラをお持ちなら、赤道儀の極軸をしっかり合わせて、まずはセルフガイドで撮影してみてはいかがでしょうか。

続きはこちら→天体撮影方法Hα編