反射望遠鏡の光軸調整
天体望遠鏡の光軸調整は、面倒で手間のかかる作業ですが、良好な像を得るために避けて通れない関門です。 このページでは、ニュートン反射望遠鏡の光軸調整方法についてまとめています。
光軸調整が必要な反射望遠鏡
屈折望遠鏡は、レンズに付いたゴミをブロアーで吹き飛ばす程度でよく、ほぼメンテナンスフリーで使用できます。 それに比べてミラーで光を集める反射望遠鏡では、主鏡や斜鏡の清掃や再メッキのメンテナンスの際、 ミラーを鏡筒から取り外さなければなりません。
水で洗浄した反射望遠鏡のミラー
ミラーを外すのはそれほど難しくありませんが、再度ミラーを組み上げたときに光軸調整が必要になります。 面倒に感じたり、自分で行うのが不安な場合は、メーカーのメンテナンスに出すこともできますが、 多少の光軸調整は、自分で行えると便利と思います。 そこで、以下に光軸の説明を交えながら、反射望遠鏡の光軸調整方法について、順を追って説明しています。
光軸が合った状態とは
光軸とは、レンズ等の曲率中心が通る仮想の軸(線)のことで、この軸を基準に光軸の判定を行います。
屈折望遠鏡の場合
屈折望遠鏡をまず例に取ると、光軸は対物レンズの中心から、接眼部へと伸びた線とみなされます。 この線が対物レンズの中心と、接眼部の中心を通っているとき、光軸が合っている判定されます。
対物レンズのセルに光軸調整ネジが設けられている
もし対物レンズが傾いて取り付けられていると、光軸は接眼部の中心を通らなくなってしまいます。 こうした場合は、対物レンズのセルに付いている光軸調整ネジを使ってレンズの傾きを補正します。
本来は、対物レンズの中心と鏡筒の中心が一致しているかどうかも調整する必要がありますが、 こうした調整機構(レンズのセンタリング調整機構)は、市販されている望遠鏡にはありません。 おそらく、メーカーは、組み立て行程で十分に許容値内に入っていると考えているのでしょう。 また、最近は、レンズセルに光軸調整機能がそもそも備えられていない屈折望遠鏡も増えています。
反射望遠鏡の場合
反射望遠鏡の場合は、主鏡と斜鏡という二つのミラーで光を集めるので、光軸調整は少し複雑になります。
ニュートン反射望遠鏡で光軸が合っているというのは、 下図のように、主鏡の光学中心を通る光軸の延長線上に、ミラーが傾いた斜鏡が置かれていて、 その斜鏡が主鏡で受けた光を適正に集め、接眼部に光を導く状態と言えます。
ニュートン反射望遠鏡の光軸調整が難しいのは、 主鏡と斜鏡の両方の傾きを調整して、光軸を合わせる必要があるためです。屈折望遠鏡の光軸調整は対物レンズの傾きだけを変えて調整できますが、ニュートン反射望遠鏡の場合は、 斜鏡と主鏡の二つを少しずつ動かして調整していく必要があります。
光軸調整の方法
ニュートン反射望遠鏡の光軸調整について説明してきます。 最初は、光軸調整の下準備と基礎知識、それに必要なツールを紹介しています。
センターマーク
まず、主鏡に中心点(センターマーク)が打たれているか確認しましょう。 最近の機種なら、ほぼ間違いなくセンターマークが打たれていますが、古い望遠鏡はセンターマークがない場合も多いです。
センターマークがないと、光軸調整器具(センタリングアイピース)を使った光軸調整ができません。 まず、センターマークを主鏡ミラーに入れることをお勧めします。
透明シートに描かれた円を参考にしてセンターマークを入れている
主鏡のセンターマークの打ち方の一例としては、主鏡を取り外して、それを型にして同じ大きさの円を紙に描きます。 円を切り抜いた後、その紙を折り曲げて円の中心を見つけ、その紙を主鏡に載せて、 マジックペンなどで中心点を書き入れるのが最も簡単と思います。
他には透明なシートや薄い紙に主鏡と同じ大きさの円を描き、 それを主鏡に重ねてセンターを割り出す方法もあります。
主鏡のセンターマークは何色でもよいのですが、赤以外の夜でも目立つ色がお勧めです。 いずれにせよ、このセンターマークの位置が光軸調整の精度に関わりますので、なるべく正確にセンターを割り出すようにしましょう。
斜鏡のマーク
斜鏡のセンターマークは、必須ではありませんが、 マークがあった方が客観的にわかるので、最近の反射望遠鏡には付けられている事が多いです。
斜鏡にセンターマークを打つ場合は、イラストレーターなどのドローイングソフトで斜鏡と同じ大きさの楕円を描き、 その中に中心点とオフセットされた点を書き込みます。 それを等倍に印刷してから切り抜き、斜鏡に重ねて点を打てば、 比較的簡単で間違いなくセンターマークを打つことが出来ます。
なお、主鏡は斜鏡が光を遮るので多少大きなマークでも問題ありませんが、 斜鏡はなるべく小さな黒い点を打つようにしましょう。
斜鏡にセンターマークを入れるのは緊張する
もし、斜鏡がオフセットされている場合には、斜鏡のセンターマークは鏡の中心ではなく、 光軸が通る点に打つ必要があります。斜鏡に傷を付けないよう、注意して行いましょう。 斜鏡は主鏡に比べて注意が必要なので、難しく感じられる場合は、メーカーに問い合わせるのが無難です。
※主鏡が集めた光を効率よく接眼部に導くため、斜鏡が中心よりも若干奥(接眼部から見て)に、 設置されていることがあります。 これをオフセットと呼んでいて、F値の明るい天体撮影用の反射望遠鏡によく採用されています。
光軸調整作業の準備
センターマークが付けられて、光軸調整の準備が整ったら、反射望遠鏡を寝かして作業を行います。 望遠鏡を立てて行う方が主鏡の調整がしやすい面もありますが、工具などを筒内に落として、主鏡を傷つける恐れがあります。 慣れないうちは、望遠鏡を寝かせて光軸調整を行うことをお勧めします。
反射望遠鏡の開口部は、明るい白い壁や青空などに向けましょう。 こうすると、センタリングアイピースを使った時、センタリングアイピースのマークや斜鏡が見やすくなります。 但し、太陽に直接向けるのは危険なので、絶対にやめてください。 私は開口部の前にライトボックスを置いて、作業するようにしています。
光軸調整用のツール
反射望遠鏡の光軸調整には、光軸調整用アイピースと呼ばれる、真ん中に小さな穴が開いた接眼レンズを用います。
光軸調整アイピースは、様々なメーカーから販売されています。 タカハシ製の反射望遠鏡には、高橋製作所が製造している、 センタリングアイピースとセンタリングチューブのセットが人気があるようです。
左がCATSEYEツール、右の二つがタカハシ製
海外では、CATSEYEという名前のコリメーションツールが人気があります。 私も所有していますが、アイピースが2インチですので、接眼部が1.25インチの日本の望遠鏡には使いづらいかもしれません。 その他、笠井トレーディング社等からも光軸修正用アイピースが販売されています。
このページでは、これらの光軸修正アイピースを使って、 光軸調整を行っていきますが、他社製のツールとほぼ同じですので、参考にしていただけると思います。
なお、光軸調整ツール自体に狂いがあっては、光軸を正しく合わせられませんので、 センタリングチューブに糸を取り付けるときは、ノギスなどを使って正確に張りましょう。
斜鏡の光軸調整
斜鏡は、主鏡で集められた光を、接眼部に導くための平面鏡です。 接眼部から覗いたときに、斜鏡が回転していて、あらぬ方向に主鏡の光を導いたり、 斜鏡の傾きが狂っていて、接眼部の中心からずれた点に光が収束していてはいけません。 これらの位置不良を修正するのが、斜鏡の光軸調整です。
斜鏡は、前後左右に加えて回転も出来るので、光を筒外に導くには非常に便利な反面、 光軸を合わせるのが難しいミラーです。 立体的な斜鏡の動きをイメージしながら調整すると、目的の位置に動かしやすいと思います。
斜鏡の光軸調整には、十字線が張られた光軸調整アイピース(タカハシの場合は、センタリングアイピースとセンタリングチューブ)、 それにレーザーコリメーターを使用しています。
光軸調整アイピースの中央には、非常に小さな穴が開けられていて、ここから覗いて光軸の良否を確認します。 なお、タカハシのセンタリングチューブの先端は、十字線を張るようになっていて、 センタリングアイピースと一緒に用いることで、この十字線の交点が接眼部の中心を示してくれます。
斜鏡の動き
まず、斜鏡の光軸調整ネジの動きを確認しましょう。 ニュートン反射望遠鏡の斜鏡は、写真のように、スパイダーに4つのネジで固定されています。 真ん中の大きなネジが引きネジで、周囲の3つのネジが押しネジです。
引きネジを緩めると、斜鏡を穴の中心に沿って回転させることができます。 押しネジを締めると、その部分が押されて、斜鏡全体が傾きます。
3つの押しネジはそれぞれ役割を担っています。 上の望遠鏡の場合、接眼部から一番遠いネジは、押すとと斜鏡が接眼部の方に傾き、緩めると、接眼部の反対側に傾きます。 残りのの2つの下側のネジを押すと、接眼部から覗いていると、斜鏡は上へと傾きます。 上側のネジを押すと、逆に下へと傾きます。
実際に光軸の調整に入る前に、調整ネジを回したときに、斜鏡がどのように動くかを覚えておくと、光軸調整が楽になります。
斜鏡の前後位置確認
光軸調整アイピースを反射望遠鏡の接眼部に取り付けて、斜鏡を見てみましょう。
光軸調整アイピースを覗くと、十字線の向こうに斜鏡が見えるはずです。 まずは、光軸調整の手際をよくするため、十字線が鏡筒と直角・平行になるように回転させましょう。
白い線がセンタリングチューブの十字線
黒い線は主鏡に写ったスパイダー。斜鏡のセンターマークは見えづらい
斜鏡のセンターマークが見えるはずですから、十字線の交点と、センターマークが一致しているかどうかを確認します。 交点とセンターマークが鏡筒の前後方向にずれている場合は、 斜鏡の前後の位置を以下のように調整します。
斜鏡が主鏡側に寄ってしまっている場合
→押しネジ3本を緩めて、引きネジを締めることで、
斜鏡の位置を筒先へと移動させます。
逆に斜鏡が筒先側にある場合
→引きネジを緩め、押しネジ3本を締めて、斜鏡全体を主鏡側へと動かします。
斜鏡のセンターマークは見づらいので、光軸調整アイピースを外したり付けたりして 目の焦点を動かして確認します。 どうしても分からないときは、斜鏡の後ろに紙を置いたり、主鏡を一旦外すとすぐに見つかります。
斜鏡の回転方向の確認
まずは、斜鏡の回転方向のずれを調整します。 斜鏡をよく見ると、斜鏡に映った主鏡のセンターマークが見えるはずです。
このマークを光軸調整アイピースに張ってある、鏡筒と平行の線に沿うように斜鏡を回転します。 これで、斜鏡の前後位置と、回転方向の向きはおおよそ合いましたので、引きネジを締めて仮止めしておきます。
一旦、光軸調整アイピースを接眼部から外して、肉眼で斜鏡の位置を確認します。 斜鏡が視野内で上や下に寄りすぎていないか、また、斜鏡に映った主鏡が上や下に寄っていないかを確認します。
レーザーコリメーターを使用した斜鏡の傾き調整
次に斜鏡の傾きを調整します。 斜鏡の傾きは、レーザーコリメーターを使って合わせると、わかりやすいと思います。
センタリングアイピースを外して、接眼部にレーザーコリメーターを取り付けてレーザーを照射します。 接眼部からレーザーを照射すると、光が斜鏡で折り曲げられて、主鏡の上に赤いドットを生みだします。 この主鏡上のレーザーの点が、主鏡のセンターマークの中心に来ているかを確認します。
このレーザーの点がずれている場合には、斜鏡に付けられている押しネジと引きネジを使って、斜鏡の傾きを調整します。 レーザー光が主鏡のセンターに当たるようになったら、 今度はレーザーコリメーターを取り外して、センタリングアイピースを取り付けます。 センタリングアイピース越しに、主鏡のセンターがセンタリングアイピースの中心に来ているかと、 斜鏡に映った主鏡が上や下に寄っていないかを確認します。
この時、斜鏡に映る主鏡が上や下に寄っている場合は、斜鏡の引きネジを緩めて斜鏡の傾きを回転します。 回転さすと斜鏡の傾きがずれるので、またレーザーを取り付けて斜鏡の傾きを調整します。 これを何度か繰り返して、斜鏡の傾きと回転を調整します。
レーザーコリメーターの代わりに、光軸調整アイピースを使っても同じ作業が可能ですが、 レーザー光を使う方が感覚的にわかりやすいと思います。
最後に、光軸調整アイピースを取り付け、アイピースの中心と斜鏡のセンターマーク、 それに十字線の交点が一致しているか確認します。 なお、斜鏡の光軸調整ネジは、強く締め付けすぎると斜鏡セルに凹みができてしまうので、ほどほどの力にした方がよいでしょう。 引きネジが緩みにくい場合は、押しネジ3本を先に緩めると回しやすくなります。
主鏡の光軸調整
斜鏡の光軸調整が終わったら、次は主鏡の調整を行います。
もし、望遠鏡を購入して一度も主鏡を外したことがない場合は、主鏡の光軸調整が必要かどうかを確認した方がいいかもしれません。
主鏡がしっかりしたセルに入っていれば、簡単にずれないので、斜鏡を調整するだけで光軸が合うためです。
主鏡の光軸は、主鏡のセンターマークが光軸調整アイピースの中心と一致しているかどうかで判断します。 光軸調整アイピースを覗いて、マークが重なっていれば問題ありません。 もしずれている場合は、主鏡セルに付いている光軸調整ネジを使って作業を行います。
主鏡セルは3カ所で固定されており、それぞれのネジを動かすことで、主鏡の傾きを変えることができます。 具体的には、写真のように3カ所に光軸調整のネジが設けられており、 ネジを締めると、その部分が筒内側に傾き、逆に緩めると筒後ろ側に傾きます。 ある点だけ強く締めると主鏡セルが歪んでしまうので、1点を締めたら、あとの2点を緩めるという作業が必要です。
ところで、主鏡を調整する際、鏡筒を寝かしたままでは、主鏡セルが浮いてしまい、上手く作業できない場合があります。 その場合は、主鏡側に座布団などを引いて、望遠鏡全体を少し傾けると作業がやりやすくなります。 ちなみに、私は天体望遠鏡を赤道儀に望遠鏡を取り付けて、筒先を斜めに向けて行うこともあります。
主鏡のネジを押し引きして、主鏡の中心と斜鏡の中心が一致すれば、光軸調整は完了です。 最後にもう一度、光軸調整アイピースの中心と十字線の交点、それに主鏡のセンターマークと斜鏡センターマークが一致しているか確認するとよいでしょう。 お疲れ様でした。
反射望遠鏡の光軸調整について
通常、上記の作業を終えればほぼ光軸は合った状態になりますが、 さらに光軸が正確に合ったかどうかを確認したい場合は、もう少し細かい作業が必要になります。
天体望遠鏡の光軸調整の問題
さらに細かい光軸の確認を行う前に、市販されているニュートン反射望遠鏡の光軸調整について、 思い当たる問題点を挙げてみます。
ニュートン反射望遠鏡は、薄い鉄板で作られた鏡筒の横から接眼部が出ているので、
接眼部の強度が弱い場合があります。
重いカメラを取り付けた際、天体望遠鏡の向きによってこの接眼部が歪んだりすると、光軸がずれてしまいます。 また、この接眼部が大きく傾いて取り付けられていると、正確に光軸調整するのが難しくなります。 ユーザー側で傾き調整などができる機構が欲しいところです。
望遠鏡によっては、接眼部が回転できるようになっているモデルがあります。 これを使って接眼部を回転させると、光軸がずれることがある製品もあります。 こうした場合は、光軸調整を行った後に、この回転装置を使うのはなるべく避けた方がよいでしょう。
本来、完璧な光軸調整を行うなら、ミラーには傾き調整だけではなく、センタリングなどを行える機構が必要です。 しかし、主鏡セルには傾き調整用のネジは設けられていますが、センタリング調整のための機構は通常備えられていません。 例えば、主鏡セルを鏡筒に取り付けたとき、望遠鏡によっては若干の「遊び」がある機種があります。 遊びが大きすぎる場合、ミラーが鏡筒のセンターに位置しないため、光軸に悪影響を及ぼす可能性があります。
斜鏡を釣っているスパイダーは、主鏡の光軸に対して直交していて、 スパイダーの中心は主鏡の光軸上にあるのが理想です。 スパイダーには長さ調整機能があるので、ある程度の調整は可能ですが、完全に一致させるのは難しいところです。
鏡筒の両端には、主鏡と斜鏡という重いミラーが取り付けられているため、鏡筒自体がたわんでしまうことがあります。 これは鏡筒の向きによっても変わります。 正確に光軸を合わせた鏡筒でも、たわみが生じると光軸ズレとなってしまいます。
デジタル一眼レフカメラを取り付けるカメラマウントには、スケアリング調整機能などは設けられていません。 よって、このアダプターの平面性が損なわれていたら、望遠鏡で覗いたときは光軸が合っているのに、 写真を撮ると片ボケということになってしまいます。
センタリングアイピースやレーザーコリメーターなどの光軸調整器具の精密性の問題もあります。 これらの器具の精度に問題があれば、そもそも完璧な光軸調整はできなくなってしまいます。
更に細かい光軸の確認方法
上記の点を踏まえた上で、ユーザーが行えるもう少し細かい光軸の確認方法について記載します。 なお、この方法は私なりに考えて行っている方法ですので、あくまで一例としてご覧いただければ幸いです。
スパイダーの位置確認
スパイダーが鏡筒に対して、均等に張られているかどうかを確認します。
まずはスパイダーの中心が鏡筒の中心に来ているかを確認しましょう。
スパイダーの長さを測って中心を確認し、スパイダーの中心が鏡筒の中心に位置しているかどうかを確認します。
また、もしスパイダーの中心が主鏡のセンターマークの上に来ているかどうかを確認したい場合は、 斜鏡を外して、スパイダーの中央の穴から主鏡のセンターマークが見えるか確認します。 穴が大きい場合は、小さな中心穴を開けた厚紙などを貼ってそこから覗きます。 鏡筒を水平な場所に置いて、右のように糸を垂らしてみるのも目安になるでしょう。
ところで、スパイダーの中心が望遠鏡の中心軸からずれていた場合は、スパイダーの長さを調整しますが、 スパイダーの長さが均等になっていれば、主鏡のセンタリングを疑い、 主鏡セルを外して主鏡の位置(センタリング)を確認します。 主鏡セルがずれている場合は、隙間にアルミ板などを挟んで中心軸を合わせます。
接眼部の確認
反射望遠鏡の接眼部が、主鏡の光軸に対して垂直になっているか等も確認することもできます。
まず水平な場所に鏡筒を立てて、スパイダーの中心から主鏡中心にヒモを垂らします。 そのつるしたヒモを、センタリングチューブを付けた接眼部分から覗きます。 覗いたとき、センタリングチューブの中心と、垂らしたヒモが重なっていれば、 接眼部の中心は、鏡筒の横方向に対して直交しているとおおよそみなせます。
さらに鏡筒を水平な場所に立てて置いたまま、スパイダーの上に水準器を置き、
スパイダーが水平に釣られているかも確認できます。
※どちらの場合も鏡筒内にモノを落とさないように注意が必要です。
斜鏡を外した状態で、接眼部にレーザーコリメーターを取り付けます。 レーザーを照射すると鏡筒の反対側にレーザー光が当たるので、その場所に印を入れます。 印を入れた場所から、鏡筒先までの距離を測り、接眼部の中央から鏡筒先までの距離と比べます。 鏡筒自体の長さが歪んでいたらどうしようもありませんが、およそ同じだったら、接眼部の直角は保たれていると見なします。
その他の確認
鏡筒を横向きにして、斜鏡の調整押しネジをほぼ同じ長さにした後、斜鏡を取り付けます。 スパイダーが水平に釣られていれば、斜鏡を鏡筒の前後方向に移動させてやれば、 ほぼ斜鏡マークとセンタリングスコープの十字線の交点が一致します。 一致させた後は、前述の通常の光軸調整を行い、斜鏡センターとセンタリングアイピースセンターマークを一致させます。
鏡筒の主鏡側を上げて斜めにし、筒先にライトボックスを置きます。 その状態で主鏡の傾き調整を行います。 主鏡の調整が終わったら、接眼部にレーザーコリメーターを取り付けます。
レーザーコリメーターを付けた状態で、鏡筒をいろいろな方向に向けてみます。 向ける過程でレーザーの位置が変わったら、どこかが緩んでいる可能性があります。 もし、丸型スパイダーをお使いなら、このときにレーザーがずれてしまうと思います。 天体写真撮影をされるなら、羽根型の強化スパイダーに交換されることをお勧めします。
光軸調整のポイント
ニュートン反射の基準となる光軸は主鏡の中心軸です。 この軸を基準と考え、斜鏡や接眼部やスパイダーを調整するのが理想ですが、 個人が利用できる光軸調整ツールや、反射望遠鏡の調整機能では、 主鏡の軸だけを基準にして調整するのは、難しいと思います。 そのため、主鏡の軸も考慮に入れつつも、鏡筒が理想的な円柱形と仮定して、調整するのが現実的と思います。
この仮定に基づき、光軸調整時にチェックすべきポイントを列記しました。
1.スパイダーの中心は鏡筒の中心軸と一致しているか
2.接眼部は鏡筒の軸に対して垂直に取り付けられているか
3.斜鏡は接眼部に正しく向いていて、鏡筒中心軸とセンターマークが一致しているか
4.主鏡のセンターと鏡筒の中心軸は合っているか
5.主鏡の傾きが合っているか
光軸調整については、ミラーの傾きとセンタリングを別々に調整できる機構が各部に備えられていれば、 もう少し正確な光軸調整が可能だと思います。 ただ、望遠鏡の価格との兼ね合いを考えると、実現は難しいかもしれません。
斜鏡のオフセット
明るい写真撮影用のニュートン反射望遠鏡の中には、斜鏡が中心からオフセットして取り付けられているものがあります。
天体写真撮影に人気のタカハシε-180EDもこの一つで、斜鏡の位置が中心からかなりずれています。 なぜオフセットが必要なのでしょう。
望遠鏡の光路図を書いてみると気づきますが、斜鏡は斜めに取り付けられているため、 接眼部の奥側に行くほど主鏡に近くなります。 近くなるということは、主鏡の光束が太いということで、逆に斜鏡の手前部分は光束が細くなります。 主鏡からの光をもれなく接眼部に導くには、この光束が太い部分を見込んで、大きめの斜鏡を取り付ける必要があります。
F値の暗い鏡筒なら、主鏡が作り出す光束が細いので、オフセットしなくてもそれほど問題になりませんが、 短焦点ニュートン反射のように、明るさがF3〜F4前後の明るい鏡筒の場合は、光束が太いので支障が出てきます。
そこで、このような天体望遠鏡では、接眼部の反対方向に斜鏡をずらして取り付けるのが一般的です。 このように斜鏡をずらして取り付けることを、「斜鏡のオフセット取り付け」と呼んでいます。 これにより、撮影画像の左右の光量がほぼ均等になります。
オフセット取り付けされた斜鏡には、オフセットを勘案した位置に斜鏡のセンターマークが打たれています。
例えば、イプシロン180ED望遠鏡(右写真)は、5.5mm程度オフセットして斜鏡が取り付けられていますので、 斜鏡のセンターマークは、中心から約7.8ミリ外れた点に打たれています。 もしオフセットされている望遠鏡をお使いで、斜鏡のセンターマークをこれから打つ場合には、 オフセット分を考えて打つようにしましょう。
斜鏡のセンターマークを、オフセットを勘案して打つことができれば、通常の反射望遠鏡と同じように光軸調整を行うことができます。 接眼部からセンタリングアイピース越しに見ると、斜鏡に映った像が少しずれているように見えますが、これはオフセットされているためです。 センターマークを目安にして合わせるとよいでしょう。
レーザーコリメーターを使った光軸調整
レーザーコリメーターは、便利な光軸調整ツールです。
赤いレーザーがミラーに反射する様子が目で確認できるので、感覚的にわかりやすく、私も愛用しています。
レーザーコリメーターだけを使った光軸調整方法は以下の通りです。
レーザーコリメーターを接眼部に取り付け、レーザーを照射します。 レーザー光が主鏡の中心に当たるように、斜鏡の傾きを調整します。
主鏡の中心に当たったレーザー光が、レーザーコリメーターの照射点に戻るよう、 主鏡の傾きを調整します。
以上です。 レーザーコリメーターを使えば、簡単にある程度光軸を合わせることができますが、 斜鏡の中心と接眼部のセンターが合っているかどうかがわからないなど、いくつかの問題があります。 よって、なるべく正確に光軸を合わせたい場合は、センタリングアイピースなどと併用した方がよいでしょう。 レーザーコリメーターは、正確に光軸調整をした後の確認用とした方が良いと思います。
星像で光軸を確認
光軸調整が終わったら、星を使って光軸が合っているかどうか確認してみるとよいでしょう。
まず、筒内気流を防ぐため、天体望遠鏡を外に出して外気にしっかりとなじませます。 また、なるべく気流の落ち着いた日に行うことをお勧めします。
筒内気流が収まったら、天頂付近の2等星〜3等星ぐらいの星を視野に導入します。 まずは、100倍程度のアイピースを使って、星に焦点を合わせます。 焦点があったら、ドロチューブを少し動かして、焦点内外像を確認します。 光軸がずれている場合には、下の右図のようにディフラクションリングがずれて見えます。
中倍率で分かりにくい場合は、もう少し倍率を上げると確認しやすいかもしれません。 光軸が合っている場合は、ディフラクションリングは同心円になります。 もしディフラクションリングが変形している場合は、鏡が圧迫されている可能性があります。 主鏡セルのネジの締め付けを点検してみて下さい。
最後に
反射望遠鏡の光軸調整について長々と書いてきましたが、光軸調整は大変な作業で、面倒に感じる方も多いと思います。 私自身も子供の時に反射望遠鏡をはじめて手にして以来、何度も光軸調整をしてきましたが、この作業は一向に好きになれません。 ずれたときに仕方なく調整しているというのが実際で、何度も屈折望遠鏡だけにしようかと思ったほどです。
それで私自身は、反射望遠鏡の光軸については、それほど神経質にならないようにしています。 遠征撮影のために反射望遠鏡を車で運ぶと、振動のために光軸がずれてしまうことがよくあります。 このようなときは現地で微調整を行いますが、100%合わせることは難しいので、90%ぐらいでOKと割り切るようにしています。
以上、長々と光軸調整の仕方について書いてきました。 ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。 このページが何かのお役に立てれば幸いです。 逐次内容を見直していきますので、これからもよろしくお願いいたします。
![]() |
光軸調整便利グッズ
主鏡セルの光軸調整ネジを回すときに使用しているドライバーです。 この光軸調整ネジは、マイナスドライバーで回すことができますが、 ネジに切っている幅が広いため、 普通のドライバーを差し込むと大きな遊びが出てしまいます。 そのため、力が入れづらく、ネジにも良くないので、何か良い製品はないかと探していたところ、 このドライバーを見つけました。 元々は水栓金具を回すためのドライバーで、全体の長さは短くコンパクトです。 実際に使ってみると、先端の幅がワイドなのでタカハシ望遠鏡の主鏡セルのネジミゾにぴったりで、光軸調整時には大変重宝しています。 もしこうしたドライバーをお捜しなら、一度使って見てはいかがでしょう。 |