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レデューサー・フラットナーの星像比較

レデューサーは、天体望遠鏡の焦点距離を短くし、光学系のF値を明るくする補正レンズで、 星雲や銀河を撮影する際によく使用されています。 フラットナーは、焦点距離は変わりませんが、像を平坦にして周辺像を改善する補正レンズです。

最近は、様々な汎用レデューサーやフラットナーが販売されています。 機材選びの参考として、主要な補正レンズをビクセンED103S望遠鏡に接続して、 その結像星像を比較してみました。


専用レデューサーと汎用レデューサー

様々なレデューサーやフラットナーレンズ 天体望遠鏡メーカーは、自社製品に適合した専用レデューサーやフラットナーを製造しています。 このようなレデューサーは、一般的に「専用レデューサー」あるいは「純正レデューサー」と呼ばれ、 そのメーカーの鏡筒と一緒に使うことで、 最高のパフォーマンスが得られるように設計されています。

一方、汎用レデューサーは、サードパーティ社から販売されている補正レンズで、 例えば、「F6〜F8のEDアポクロマート屈折用」というように、 適合する鏡筒の条件が製品に記載されています。 この条件の鏡筒であれば、メーカーを問わず使用できるので、 一般的に「汎用レデューサー」と呼ばれています。

汎用の補正レンズ(レデューサーやフラットナー)は、適合範囲が専用品に比べて広いため、以前は専用品に比べて性能が悪いと思われてきました。 しかし、最近は様々な汎用の補正レンズが登場し、性能も向上してきているようです。 汎用補正レンズは、専用品に比べて価格が安く、鏡筒への取り付け方法もシンプルで、 鏡筒を買い換えても使い続けることができるのが利点です。 このような利点があるため、天体写真ファンの間でも使われる機会が増えてきました。

なお、天体望遠鏡と補正レンズには相性がありますので、 ある汎用レデューサーを異なる望遠鏡に使用した場合、組み合わせによっては性能が大きく異なってくる場合があります。 また、専用レデューサーであっても、取り付け方法や光路長をユーザーが工夫すれば、 他社製品に使用できる場合もあります。


レデューサー・フラットナーの星像比較

実際にレデューサーやフラットナーレンズを使って撮影した星空の画像で、補正レンズの結像性能を比較しました。 撮影に使用したデジタル一眼レフカメラは、天体撮影用にフィルターを換装したキヤノンEOS60Dです。 タイトルには、使用した望遠鏡と補正レンズの名称を記載し、使用方法や印象もまとめました。


BORGマルチレデューサー0.7×DGT+BOR76EDの星像

BORGマルチレデューサー0.7×DGT BORGマルチレデューサー0.7×DGTは、株式会社トミーテックが製造しているレデューサーレンズです。 使用する望遠鏡の焦点距離に合わせて、レデューサーレンズの位置を前後できるように作られているので、 様々な望遠鏡に使用できる設計になっています。

今回は、以前発売されていたボーグ76ED望遠鏡にこのBORGマルチレデューサー0.7×DGTを接続し、 テスト撮影を行ってみました。 BORG76EDにBORGマルチレデューサー0.7×DGTを取り付ける場合、 標準で付属していた鏡筒ではピントが合わないため、 長さが短い鏡筒[7150]に変更する必要がありました。

補正レンズを使ったときの星像

→大きな画像

撮影画像を見ると、星像は中心から画面隅までシャープで均一なイメージです。 APS-Cサイズの一番端でも星はほぼ円形を保っていて、 レデューサーとの相性がよいことがわかります。 BORG76EDは製造が終了してしまいましたので、次回は現行機種のBORG77EDでテストしてみたいところです。


ビクセン純正レデューサー+ビクセンED103Sの星像

ビクセン純正レデューサー 右写真は、ビクセンが販売しているED(F7.7用)レデューサーレンズです。 ビクセン社のF7.7のED屈折望遠鏡用で、ED103Sの他に、ED81SII、ED115S鏡筒に使用することが出来ます。

このレデューサーを使用すると、焦点距離が約0.67倍になります。 今回使用したビクセンED103Sの場合、795mmの焦点距離は、533mm(F5.3)になります。 なお、ED103Sの上位機種であるAX103Sには、専用品が用意されています。

ビクセン屈折式望遠鏡に純正レデューサーを使用するときは、 接眼部に取り付けられている60→50.8接眼アダプターを外し、レデューサーをドロチューブに直接ねじ込みます。 そしてレデューサーの後ろに直焦ワイドアダプター60を取り付け、デジタルカメラを接続します。 ねじ込みなので、レデューサーをしっかり鏡筒に取り付けることができる点がメリットです。

補正レンズを使ったときの星像

→大きな画像

撮影画像を見ると、中心部はシャープですが、画面隅に行くほど星がいびつに変形していきます。 等倍画像を見ると、APS-Cサイズの一番端では、星は菱形に歪んでいるのがわかります。

四隅で星の流れ方が異なっているのは、平面性が悪かったためかもしれません。 スケアリングを追い込めば、星の流れ方は均等になりそうですが、収差自体は改善されないでしょう。 純正品だけに、もう少し周辺像を改善してもらいたいところです。


ED屈折用0.6倍レデューサー+ビクセンED103Sの星像

笠井トレーディングED屈折用0.6倍レデューサー ED屈折用0.6倍レデューサーは、天文ショップの笠井トレーディングから販売されている汎用レデューサーです。 外観は右写真の通りで、天体望遠鏡の2インチスリーブに差し込むようになっています。 カメラ側の接続には、一般的なM42/T2ネジが採用されています。

このレデューサーを使用すると、焦点距離が約0.6倍になります。 今回使用したビクセンED103Sの場合、795mmの焦点距離は、約477mmになります。 F値が4.6前後と非常に明るくなるのが魅力の補正レンズです。

ビクセンED103S望遠鏡に使用するときは、フリップミラーを外して、 2インチスリーブに直接差し込みます。 そしてレデューサーの後ろにTリングを介して、デジタル一眼レフカメラを取り付けました。

補正レンズを使ったときの星像

→大きな画像

撮影画像を見ると、中心部はシャープですが、画面隅に行くほど星が変形していきます。 等倍画像を見ると、APS-Cサイズの一番端では、星が回転方向に流れているのがわかります。

焦点距離が0.6倍になるので、星雲や星団の撮影には魅力的なレデューサーですが、 周辺星像が思ったより悪かったのが残念です。 ただし、今回はビクセンED103Sとの組み合わせですので、他の望遠鏡とならまた違った結果が得られるかもしれません。


ED屈折用0.8倍レデューサー+ビクセンED103Sの星像

笠井トレーディングED屈折用0.8倍レデューサー ED屈折用0.8倍レデューサーは、天文ショップの笠井トレーディングから販売されている汎用レデューサーです。 外観は右写真の通りで、天体望遠鏡の2インチスリーブに差し込む構造になっています。 カメラ側の接続には、M42/T2ネジが採用されています。

このレデューサーを使用すると、天体望遠鏡の焦点距離が約0.8倍されます。 今回使用したビクセンED103Sの場合、795mmの焦点距離は、約636mm(F6.2)になります。

取り付け方法は、ED屈折用0.6倍レデューサーと同様で、 フリップミラーを外して2インチスリーブに挿入します。 カメラマウントも、0.6倍のときと同じTリングを使用しました。

補正レンズを使ったときの星像

→大きな画像

撮影画像を見ると、画面全体として均質な星像です。 詳細に観察すると、中心部の像に比べて画面の一番端では星像が崩れていますが、ほとんど目立たないレベルに収まっています。

焦点距離が0.8倍ということで、望遠鏡の明るさがそれほど改善しない点は残念ですが、 周辺像を改善しつつ、若干は明るくなるので、じっくりと撮影するには好適だと思います。 ただこのED屈折用0.8倍レデューサーのナイロンに入れられただけの梱包はいただけません。 光学製品だけに、他の補正レンズのように、前後キャップは付属してほしいですね。


ED屈折用フィールドフラットナー+ビクセンED103Sの星像

笠井トレーディングED屈折用フィールドフラットナー ED屈折用フィールドフラットナーは、天文ショップの笠井トレーディングから販売されている汎用フラットナーレンズです。 外観は右写真の通りで、天体望遠鏡の2インチスリーブに差し込む構造になっています。 カメラ側の接続には、M42/T2ネジが採用されています。

このフィールドフラットナーは、F6〜F7のEDアポクロマート屈折用に設計されています。 フラットナーレンズなので、天体望遠鏡の焦点距離は変わりませんが、 像を平坦にして周辺像を改善する効果が期待されます。 販売店によれば、35ミリフルサイズデジタルカメラの写野をカバーするイメージサークルがあるとのことです。

取り付け方法は、ED屈折用0.8倍レデューサーと同様で、 フリップミラーを外して2インチスリーブに挿入します。 カメラマウントも同じTリングを使用しました。

補正レンズを使ったときの星像

→大きな画像

撮影画像は、画面全体として均質です。 中心部の像は鋭く、画面の端の方でも星像はそれほど崩れません。 四隅で若干星の流れ方が異なりますが、カメラの取り付け部分を調整すればもう少し改善するでしょう。

フィールドフラットナーですので、焦点距離は短くなりませんが、撮影画像全体に渡って良好な星像を結んでくれるのは魅力的です。 春の系外銀河や星雲のクローズアップ撮影の際に重宝する補正レンズだと思います。


BORGマルチレデューサー0.7×DGT+ビクセンED103Sの星像

BORGマルチレデューサー0.7×DGT BORGマルチレデューサー0.7×DGTは、天体望遠鏡メーカーの潟gミーテックが製造しているレデューサーレンズです。 元々は、トミーテックが製造しているBORG天体望遠鏡用ですが、パーツを組み合わせることにより、 他社製の屈折望遠鏡にも使用可能な造りとなっています。

外観は右写真の通りで、使用する天体望遠鏡の焦点距離にあわせて、レンズ繰り出し部分を前後させます。 レデューサーの後ろ部分には、回転装置も設けられていて、立派な造りになっています。 デジタルカメラは、システムチャートに従って、レデューサーにM57→M49.8ADSS[7923]をねじ込んだ後、 BORG製のカメラマウントを介して取り付けました。

ビクセンED103Sへの取り付けは、望遠鏡のドロチューブにM60→M57/60AD[7901]をねじ込み、 その後ろにBORGマルチレデューサー0.7×DGTを取り付けました。 下がその接続部分の外観です。

BORGマルチレデューサー0.7×DGT+ビクセンED103

BORGの高性能レデューサーということで、今回のテストの中で最も期待していた組み合わせだったのですが、 残念ながらピントが出ませんでした。 ピント位置は、もっと対物レンズ寄りのようですので、 このBORGマルチレデューサー0.7×DGTをビクセンED103Sに使おうと思えば、 鏡筒自体をもう少し短く切断加工する必要がありそうです。

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