オートコリメーター Autocollimator
オートコリメーターは、反射望遠鏡の光軸調整に使用するツールです。 日本ではあまり馴染みがないようですが、海外ではドブソニアンユーザーが光軸調整の確認によく使っています。
光軸調整にはレーザーコリメーターとタカハシのセンタリングアイピースを主に使用していましたが、 F値の明るい望遠鏡が増えてきたので、最終確認用としてオートコリメーターを購入しました。 それ以来、反射望遠鏡の光軸調整によく使用しているツールです。
このページでは、そのオートコリメーターの使い勝手などを、調整中の画像と共にまとめています。
オートコリメーターとは
オートコリメーターという名前から想像すると、このツールが勝手に光軸調整をしてくれそうに思ってしまいますが、 そんなことは全くありません。 他の光軸調整ツールと同様、自分で光軸調整用のネジを回して調整する必要があります。
外観はタカハシのセンタリングアイピースのような形状をしていて、アイピースの中央に小さなのぞき穴が空いています。 しかしオートコリメーターの裏側は鏡のようになっていて、このミラー部分がこのツールの大きな特徴になっています(右下写真参照)。
オートコリメーターの動作原理は、合わせ鏡の原理に基づいています。 平行に向かい合わされた2枚の鏡の中には、永遠に続く反射像が写り込みます。 しかし2枚の鏡が平行からずれると、この無限に続く反射像は消滅し、反射像は斜めに流れたように見えます。 この原理と同じように、オートコリメーターは、主鏡とオートコリメーター裏の鏡の間で鏡像を作り出します。 この2枚の鏡が平行であれば、反射した像は何重にも重なって見えるというわけです。
天体望遠鏡の光軸が合っていれば、オートコリメーターの視野内で、主鏡のセンターマークが何重にも重なって見えます。 実際には、反射を繰り返すと光が減衰して像が見えづらくなるので、3〜4重までのセンターマーク像しか見えません。 オートコリメーターの使用説明書でも、この4つのマークを合わせるよう説明されています。
ところで、オートコリメーターを使用する場合は、反射したセンターマークを見やすくするためにも、 主鏡のセンターマークをわかりやすいものに変えておく方がよいと思います。 私のMT200望遠鏡のセンターマークも、ホームセンターで売っている赤い蛍光テープを加工したものに交換しました。
私のオートコリメーターはアメリカのCatsEye製の2インチモデルです(右上写真)。 ε180は接眼部が細いため、1.25インチモデルが適していますが、Catseyeの製品は2インチモデルのみとなっています。 Astrosystems社からは両方のサイズが販売されていますが、2インチモデルの方が反射像が見やすいということでこちらに決めました。 なお、私のオートコリメーターは少し前に購入しましたので、現行モデルとは若干形状が異なっているかもしれません。
オートコリメーターの使い方
オートコリメーターの使い方については、海外のフォーラムなどでいろいろと議論されています。 私は光軸調整の最終確認と微調整用として、このコリメーターを使用しています。
具体的には、センタリングアイピースとレーザーコリメーターを使って、 斜鏡の位置・回転・傾きと主鏡の傾きを調整して、ほぼ光軸を合わせた状態にします。 それから、このオートコリメーターを接眼部に挿入して、今までの調整で光軸が十分に合ったかを確認します。 ここまでの時点で光軸を追い込んでいると、オートコリメーターの視野内で4つの反射像はほぼ重なっていて、 あとは斜鏡の傾き・回転をわずかに調整するだけで事足ります。 もし反射像が大きくずれていた場合は、センタリングアイピースに戻って、行程に問題がなかったかをチェックしています。
海外のフォーラムでは、オートコリメーターを接眼部に取り付けた後、 わざと主鏡の光軸を少しずらして斜鏡の傾きを調整するというテクニックも紹介されています。 現在は自分なりの方法で使っていますが、いずれはそうした方法にもチャレンジしようと考えています。
オートコリメーターの動き
オートコリメーターを接眼部に取り付けて光軸調整用のネジを締めたり緩めたりすると、 主鏡のセンターマークの見え方が変わってきます。 どのネジを調整したときにどのような見え方になるかをわかった方が調整しやすいので、 オートコリメーターの見え方を一覧にまとめてみました。
なお、撮影の仕方やネジの緩め具合によって、オートコリメーターの見え方が若干異なる場合がありますので、 その点はご了承ください。
斜鏡のネジを調整したときの見え方
まずは斜鏡を動かしたときに、オートコリメーターから見える様子がどう変わるかを見てみましょう。
斜鏡のネジについて
斜鏡に取り付けられている傾き調整ネジです。上側が接眼部で、中央部の大きなネジが引きネジ。 外側に設けられた3つの小さなネジが押しネジです。 動きが分かりやすいように、下から反時計回りに@〜Bの番号をつけています。 |
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斜鏡のネジ@を緩めたとき
反射望遠鏡を横に寝かし、接眼部を上にした状態でコリメーターを取り付け、覗いた様子です。 画面左側が望遠鏡開口部、右側が主鏡側になります。 以下の写真も同様です。 |
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斜鏡のネジ@を締めたとき | |
斜鏡のネジAを緩めたとき | |
斜鏡のネジAを締めたとき | |
斜鏡のネジBを緩めたとき | |
斜鏡のネジBを締めたとき | |
斜鏡の引きネジを緩めて、時計方向に回転させたとき | |
斜鏡の引きネジを緩めて、反時計方向に回転させたとき |
主鏡の光軸調整のネジを回したときの見え方
斜鏡に続いて、主鏡の傾きを変えたときにオートコリメーターの視界がどう変わるかを調べてみました。
主鏡のネジについて | |
主鏡のネジ@を押したとき | |
主鏡のネジ@を引いたとき | |
主鏡のネジAを押したとき | |
主鏡のネジAを引いたとき | |
主鏡のネジBを押したとき | |
主鏡のネジBを引いたとき |
センタリングアイピースだけのときと比べて
オートコリメーターを使用すると、主鏡と斜鏡のずれが映像としてわかるので、 センタリングアイピースだけを使用したときと比べて、光軸のズレが感覚的に分かりやすいと思います。 ただ、このオートコリメーターだけで、全ての光軸を調整するのは難しいように思います。 他の光軸調整ツールを使った後の、最終調整用というところではないでしょうか。
残念なのは、オートコリメーターが日本では手に入れづらい点です。 Astrosystems社とCatseyeがオートコリメーターでは有名ですが、どちらも個人輸入しなければなりません。 できたら、タカハシのような天体望遠鏡メーカーに、明るい撮影用望遠鏡の最終調整用ツールとして、オートコリメーターを製造・販売して欲しいところです。