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タカハシP2Z小型赤道儀

タカハシP2Z小型赤道儀 タカハシP-2赤道儀は、高橋製作所が1979年に発売開始した小型赤道儀です。

タカハシP-2赤道儀は、タカハシのNJP赤道儀と並ぶ高橋製作所を代表する赤道儀として知られ、 長い期間製造が続けられていました。 2010年2月に生産が終了してしまいましたが、追尾精度がよいので、中古市場では未だに人気がある小型赤道儀の一つです。

私は、この小型赤道儀を主に銀塩中判カメラと組み合わせて使用してきました。 追尾精度が非常に良いので、200ミリの望遠レンズを使って30分の露出を行っても、 星像は真円を保ってくれ、重宝していました。

現在はP-2赤道儀のモーターを純正品から、K-Astec製のAMD-1モーターに交換し、 デジタル一眼レフカメラとカメラレンズでの星野写真撮影に主に用いています。


スプリングスクリュー部分微動の赤緯軸

赤経軸は全周微動ですが、赤緯軸は昔ながらのスプリングスクリュー部分微動になっています。 また、モーターは赤経モーターのみがオプションで用意されています。 なお、望遠鏡のカスタマイズショップK-ASTECでは、赤緯モーターを一時発売していました。 これを使えば、両軸を使ったオートガイド撮影も可能でした。

P2-Z用のメーカー純正モーターは、恒星時追尾と2倍速、停止が可能なHD-5モータードライブしか用意されていませんでしたが、 2007年5月に、新しいタイプのTG-HDモータードライブが発売されました。 TG-HDモータードライブは、恒星時駆動の他に恒星時の0.7倍、0.5倍、0.3倍の追尾速度が選べるのが特徴です。 この新型モータードライブを地上の風景を入れた星景写真撮影に使えば、 恒星時追尾とはひと味違う撮影を楽しめそうです。


小型赤道儀の搭載重量

P2Z赤道儀の搭載重量は約6キロとなっています。 小型の赤道儀としては剛性が高いので、6センチくらいの撮影望遠鏡とガイド鏡を並列に同架しても安定感があります。

しかし赤道儀には1.4キロウェイトしか付属してきませんので、追加でバランスウェイトを用意する必要があります。 タカハシ純正のバランスウェイトは高価ですので、天文ショップオリジナル品を利用するのがお勧めです。 私は誠報社製の3キロバランスウェイトを使用して、極軸回りのバランスを取っています。


倍率の高い極軸望遠鏡

タカハシP2Z小型赤道儀の極軸望遠鏡 タカハシP-2Z赤道儀には極軸望遠鏡が内蔵されています。 極軸望遠鏡は固定内蔵式の9倍のもので、小型赤道儀としては高い倍率のタイプが使われています。 一つ上位機種のタカハシのEM11赤道儀の極軸望遠鏡が6倍ですから、それよりも高い倍率の極軸望遠鏡です。

極軸望遠鏡のスケールは、NJP赤道儀と同じ時角計算が必要なタイプです。 そのため、極軸を合わせるには、前もって北極星の位置を調べておく必要があります。 せっかくコンパクトな小型赤道儀なのに、この点は残念です。 また、極軸望遠鏡自体も少々見づらく、この点がこのP2Z赤道儀のマイナスポイントと言えるでしょう。

また、極軸の設定には赤道儀の水平出しが必要になりますが、リングレベルを購入すればこれは解消されます。 極軸望遠鏡内の視野照明もありませんので、Pライトが別途必要になります。 こういった点を含めて、極軸設定回りはNJP赤道儀と全く同じですね。


P2赤道儀のピリオディックモーション

赤道儀には多数のギアが使われているため、このギアの偏心や加工精度によって回転に小さなムラが出てきてしまいます。 この進み遅れの量を角度の秒で表したのが、ピリオディックモーションです。略してPEモーションとも呼ばれます。 PEモーションが少ないほど回転ムラが少ないので、高精度な赤道儀と言えます。

タカハシP2シリーズには、P2、P2S、P2Zといろいろなバージョンがありましたが、 どれもピリオディックモーションが少ないことで有名でした。 私のP2Z赤道儀を使ってウォームギア2回転分(20分)のPEモーションを実測したところ、下のような結果になりました。

P2赤道儀のピリオディックモーション

左端に写っている星はりょうけん座のコルカロリで、離隔約20秒の二重星です。 これと比べると、このP2赤道儀のピリオディックモーションは、±5秒前後と読み取れます。 軌跡も滑らかで、精度の良いパーツが使われていることが伺えます。


完成度の高い赤道儀

この小型赤道儀P2Zは完成度の高い赤道儀だと思います。 よく見れば、極軸望遠鏡が覗きづらいなど、使い勝手が悪い点がありますが、剛性も高く、 基本的な性能が高い赤道儀です。

星野写真には、ケンコースカイメモRSをはじめとしたポータブル赤道儀がよく使われていますが、 望遠レンズで撮影するなら、こうした小型赤道儀の方が使い勝手がよいと感じています。

通常、ポータブル赤道儀は一軸しかないため、カメラの向きによっては無理な体勢になりがちです。 しかし、P2Zのような小型赤道儀ならば、赤緯軸を回して安定して撮影することができるからです。 特に望遠レンズで撮影するときには、こうした赤緯が付いたタイプの小型赤道儀の方が使い勝手がよいでしょう。 このクラスの赤道儀は、一台持っていると撮影時に重宝する機器だと思います。


AMD-1 モータードライブ

AMD-1モータードライブ P2Zの純正HD-5モーターは、撮影ごとに赤道儀に取り付けて使用していたので、 以前からその取り付け作業が面倒に感じていました。 また、モーターの固定部分のネジが撮影中に緩んでギアの当たりが悪くなり、 気づかない間にモーターが空回りしていることも希にありました。 そこで、K-ASTECさんで発売しているAMD-1モータードライブを導入することにしました。

AMD-1モーターをP-2赤道儀に付けた様子は右写真の通りです。 取り付けは至って簡単で、赤道儀の加工などは必要なく、付属していたネジを使って固定するだけでした。 外観からも赤道儀とモーターの一体感が出た上、モーターを取り外す必要がなくなったので手際が良くなりました。 また、電池ボックスがモーター下に付けられているのも嬉しい点です。

このAMD-1モーターは、恒星時駆動の他、0.5倍速恒星時でも駆動できます。 星と景色を止めた星景写真にも効果がありそうです。もちろん南半球にも対応しており、モーター逆転スイッチも設けられています。 また、一緒に購入した極軸望遠鏡の視野照明装置は、モーター本体に取り付けると照明の明るさを調整できて非常に便利です。 価格は、AMD-1と照明装置がセットで4万円弱と少々高価でしたが、満足感の高い買い物でした。

下にAMD-1モーターのギア部の写真を追加しました。 左側がギア部のカバーを取り付けた状態で、カバーを外すと動力伝達用のギアが表れます。 どちらのギアもAMD-1モーターに標準で付属していました。 ギアの当たり調整は、AMD-1モーターの取り付けビス部で調整するようになっています。

P2用AMD-1モーターギアカバー部 P2用AMD-1モーターギア部

レボルビング装置の取り付け

K-Astecレボルビング装置 デジタル一眼レフカメラで星座写真を撮る時は、P2赤道儀の赤緯体に自由雲台を取り付け、カメラを傾けることで構図を合わせていました。

赤道儀の赤緯体に自由雲台を取り付けると、横だけでなく、自由な構図を取れるのが便利ですが、どうしても重心がずれてしまいます。 そのような問題を解消できるのが、カメラのレボルビング装置ですが、従来から販売されている製品は強度が天体用としては弱く、 また価格も高価なため、手が出ませんでした。

そんなときに、K-Astecさんから天体写真用のレボルビング装置RR-110が発売されました。 実物を店頭で触ってみると、レボルビング部分の動きはスムーズで、ロックも確実でしたので、すぐに手に入れて撮影に使い始めました。 右上の写真のように、AMD-1モータードライブと合わせて使用すると、使い勝手がとてもよいです。 レボルビング装置は、最近人気のあるポラリエなどのポータブル赤道儀と組み合わせてみてもいいかもしれませんね。


海外遠征で活躍したP2赤道儀

K-Astecカーボン三脚 ニュージランドのテカポ湖での星空撮影では、このタカハシP-2赤道儀が活躍しました。 オセアニア路線は荷物制限が厳しいので、純正の木製三脚の替わりに、K-Astec製のPTP-Carbon軽量カーボン三脚を使用しました。 右写真は、ニュージーランドでの撮影の様子です。

このK-astec製のPTPカーボン三脚は、軽量にもかかわらず強度が高く、とても使い易い製品です。 三脚の脚が伸縮できないタイプなので、大型のスーツケースにしか入らないのですが、 その分、安定感があります。 PTPカーボン三脚の重さは、約1.2キロ。タカハシ純正のSメタル三脚の約半分の重さです。 重さ制限が厳しい海外遠征に適した製品だと思います。

南半球での撮影では、オートガイダーは使用せず、P-2赤道儀任せで撮影を行いました。 P-2赤道儀は追尾精度が高いため、ガイド流れも目立たず、ノータッチガイドで撮影を楽しむことができました。 南半球の星空写真ページに、この組み合わせで撮影した写真を掲載していますので是非ご覧下さい。 また、ニュージーランドテカポの様子は、テカポ星空旅行記のページをご参照ください。


AMD-1で一軸オートガイド仕様

P-2赤道儀を一軸オートガイド改造 P-2赤道儀に使っているAMD-1モーターに、オートガイド端子をK-Astecさんにて追加していただきました。 右は改造後のAMD-1の写真ですが、黄色い矢印の先にオートガイド端子が追加されました。

オートガイド端子改造後、早速、SBIG社のST-iオートガイダーを使用して、天体撮影を行いました。 ノータッチガイドだった以前は、200ミリレンズで5分露光すると、数枚に1枚程度の確率で、 星が極僅かに流れて写ることがありましたが、それがなくなり、撮影の成功率が上がりました。

ドリフト調整法やPole Masterを使用して、今まで以上に極軸をしっかりと追い込むことができれば、 500ミリ前後の焦点距離の撮影でもP-2赤道儀を使用できそうです。 ディザリング撮影の実現などを考えると、理想は赤緯モーターを追加して2軸でオートガイドすることですが、 P-2赤道儀の赤緯軸は部分微動なので、一軸オートガイドが現実的なのかもしれません。

タカハシP2-Z赤道儀のスペック

タカハシP2Z赤道儀の仕様を以下に示します。

本体重さ 6kg
搭載重量 6kg
赤緯軸 スプリングスクリュー部分微動
赤経軸 全周微動(144歯)
モータードライブ装置 TG-HDモーター(オプション)
極軸傾斜角度 高度0度〜45度
極軸望遠鏡 固定内蔵式、据付精度約3分

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