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今月のプリント「アンドロメダ大銀河」

1枚のオリジナルプリント写真を取り上げて、その写真を撮った経緯などを作者がウンチク語っているページです。 天体写真を一枚撮るのは結構大変ですので、このサイトのギャラリーに載せている写真一枚一枚には作者の思い入れが 一杯詰まっています。自己満足的なページですが、良かったらご覧になって下さい。

今月の写真「アンドロメダ大銀河」

アンドロメダ大銀河
Andromeda Galaxy

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アンドロメダ大銀河に思いを馳せて

アンドロメダ大銀河は、一般的にも馴染みのある天体です。 私は子供の頃、パロマ-天文台にある5m望遠鏡が写したアンドロメダ大銀河の写真を本で見ました。 まだその頃はアンドロメダ大星雲と呼ばれていましたが、渦巻が見事で見とれていたのを覚えています。 それからしばらく経って、自分でもアンドロメダ大銀河を撮影してみましたが、その写りとは遠い写真でした。

それから天体写真を本格的に撮るようになり、銀塩写真で何枚も何枚もアンドロメダを撮り続けました。 機材を変えて方法を変えて撮りましたが、満足する写りにはなりません。 しばらくすると、デジタル一眼レフカメラが登場しました。早速購入したニコンD100でも写してみましたが、 やはりノイズが多く、理想とはほど遠い写りでした。

そんな試行錯誤を繰り返して、最後にたどり着いたのが、冷却CCDカメラと呼ばれる天体写真専用のデジカメです。 初めはフルサイズの冷却CCDは高価すぎて買えませんでした。 そこで、APS-Cサイズの半分くらいチップサイズの冷却CCDカメラST2000XMを購入し、アンドロメダ大銀河の撮影に チャレンジします。試し撮りした結果は想像以上の写りでした。

撮影に丸5日かかった一枚

アンドロメダ大星雲 「これならいける!」と思ったものの、アンドロメダ大銀河は非常に大きく、CCDチップ内に全景が収まりません。 焦点距離の短いレンズに変えれば収まりますが、解像度が悪くなります。 そこで、当時は珍しかったモザイク撮影にチャレンジしました。

モザイク撮影とは、写野をずらして撮影し、パソコン上でつなぎ合わせて一枚にする撮影方法です。 普通のデジカメでしたら簡単ですが、冷却CCDカメラはモノクロデジタルカメラです。 RGBフィルターごとに撮影が必要なので、総露出時間は14時間以上になりました。 なんと撮影に丸5日かかったのです。

その後の画像処理も困難を極め、こちらは3週間かかりました。 結局撮影を始めたのは夏頃。そして作品が完成したのは、年末も押し迫った真冬でした。 しかし、この写真は天文雑誌などで非常に高い評価をいただき、今でもお気に入りの一枚です。

フルサイズ冷却CCDカメラ

翌年、アメリカに住む天体写真家のお陰で、フルサイズの冷却CCDカメラを手に入れることができました。 待望のフルサイズCCDです。これならアンドロメダの全景を写野内に入れることができます。 しかし、今までと同じ撮影鏡筒では面白くありません。そこで新しい撮影鏡筒を手に入れて、 より詳細を写し出すことにしました。

撮影鏡筒に選んだのは、最も収差が少ないと言われているTOA130望遠鏡です。 自宅でテストすると、この組み合わせだと解像度が非常に高く、以前のアンドロメダ以上に細かい部分が 写りました。

アンドロメダ大銀河を綺麗に写すためには、ただ単に夜晴れているだけではいけません。 アンドロメダ銀河は細かな星の集まりなので、なるべく空気が揺らいでいない日がよいのです。 天気図の状態を確かめながら、そんな日が来るのをずっと待っていました。

夏が終わって秋の天気になりかけた頃、空が綺麗に晴れ渡って条件のよい日がやってきました。 待ちに待った好条件です。何もかも振り捨てて、新しい機材を持って撮影に出かけました。

フルサイズで捉えたアンドロメダ

現地に着くと思った通りの撮影日和です。すべての機材の動作チェックを行い、真夜中から撮影を開始しました。

写し出された画像を見て、ピントが甘いことに気付きます。初めての鏡筒なので、セッティング中に僅かに ピントがずれていたのです。ピントを切り直して撮影を続けました。

その後の撮影は問題なく進んで夜が明けます。まだ写っている画像の詳細は確認できませんが、充実した気分で した。自分でも「これは」と思える写真が撮れたときは、何かしら込み上げてくるものがあります。

インパクトのある写真

自宅に帰ってから丁寧に処理を始めます。自然でありながらインパクトがある写真を作るのが私のポリシーです。 一枚の画像と向き合いながら、じっくり仕上げていきました。

画像処理を始めた時にすぐ気付きましたが、モザイク合成したアンドロメダ銀河よりもディテールが綺麗に 写っていました。丸5日もかけた写真だけに悔しかったですが、これは仕方がありません。 前回の反省と経験を生かしながら、一枚のプリントまで仕上げました。

プリントをしあげてホームページにもアップロードすると、ありがたいことに大きな反響をいただきました。 特にアメリカの友人達からコメントをいただき、いつのまにかUniverseTodayでも紹介されていました。

この発表と同時期に写真販売を開始しましたが、今までずっと人気1位を誇っているプリントです。 また、たくさんのお褒めのお言葉も頂いて、本当に光栄に思っています。 ご購入頂きました皆様、本当にありがとうございます。

今月のプリント天の川銀河/アンドロメダ大銀河

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