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天体観測入門 小口径望遠鏡で楽しむ星空

天体望遠鏡があれば天体観測の準備はOKです。 早速天体観測を始めてみよう・・・と言っても、初めのうちは天体望遠鏡を使って何を見ればいいのかよくわかりません。 そこで、口径6センチ程度の天体望遠鏡で楽しめる天体を以下にまとめてみました。

すっきりと晴れた夜は外に出て、天体望遠鏡で夜空の散歩にでかけてみませんか。


月はどんな望遠鏡でもよく見える

月のクレーター どんな大きさの天体望遠鏡でも楽しめるのが月です。 肉眼でも月はもちろん見えますが、どれだけ目が良くてもクレーターは見ることができません。 しかし、天体望遠鏡を使えば、月面のクレーターを楽々観察することができます。

月の観測を楽しむポイントは、月齢ごとに根気よく観察し続けることです。 月は欠けたり太ったりと、その形を日々変えていきます。 その都度光の当たり方が変わり、クレーターの見え方が変わってきます。 特に明暗境界周辺は月面が立体的に見えるのでお勧めです。 そのあたりを中心にじっくりと月を観察してみましょう。

月を見たときに注意して観測しておきたいクレーターは、 コペルニクス、アルフォンスス、ティコ、ケプラー、アリスタルコス、ガッサンディなどです。 これらは以前に発光現象が観測されたこともあり、月を観察したときには特に注意深く観察してみてはいかがでしょうか。


惑星は神秘的

6センチの天体望遠鏡と言えども、侮れない性能を持っています。 土星を50倍程度の倍率で観察すれば、簡単に土星の環を確認することができます。 月を見たら次は惑星観望にチャレンジです。

まず惑星観望する前には、この時間にどの惑星が見えているのか、ということを調べておかなければなりません。 惑星はそれぞれ太陽の周りを公転していますから、全く見えない時期があります。 例えば、2014年の夏休み頃ですと、土星は観測好期ですが、木星は西空に沈んで見えません。 惑星を観測する前には、そういった天体観測情報を前もって調べておきましょう。 こうした情報は、天文雑誌に載っていますし、国立天文台のWebサイトなどでも発表されています。


太陽系最大の惑星木星

木星 天体望遠鏡を使って木星を見てみましょう。 木星が夜空で光っていれば、とても明るいのですぐにそれとわかります。 まずは低倍率のアイピースを使って、木星を天体望遠鏡の視野内に導入しましょう。

木星が望遠鏡の視野に入ると、木星の横に小さな星が3〜4個見えると思います。 これが木星の月であるガリレオ衛星です。 しばらく見ていると、位置が変化していく様子が観測できます。 まるで太陽の周りを回っている、惑星のようですね。

倍率を上げていくと、木星の縞模様が見えてきます。 口径6センチの望遠鏡でも、赤道付近の濃い縞模様とその上下の模様はかすかにみえるでしょう。 木星で有名な大赤斑も、夜空の条件が良ければ確認できるかもしれません。 なるべく風のない気流の落ち着いた日に観測してみましょう。


土星は環が神秘的

土星 天体観望会で一番人気があるのがこの土星です。 初めて見ると、天体望遠鏡を覗いた瞬間「おー!」と歓声を上げるほどです。 大きな環がとっても神秘的な土星の姿です。

土星は木星よりも少し暗く、0等星から1等星くらいの明るさです。 天頂から南側の夜空で、黄色っぽい星を探すと良いでしょう。 星座早見盤に載っていない明るい黄色い星があれば、それがたいてい土星です。 見つかったら天体望遠鏡を向けてみましょう。

土星が天体望遠鏡の視野内に入れば、その星がすぐに土星かどうかがわかります。 環は50倍程度でもわかりますが、100倍くらいにした方が綺麗に見えます。 アイピースを交換して、環をじっくり観測してみましょう。

土星の環は一つに見えますが、A環、B環、C環・・と分かれています。 特にA環とB環の間は、カッシニの隙間と呼ばれて有名ですが、6センチの小型望遠鏡では見ることができません。 これを見るには、口径13センチくらいの天体望遠鏡が欲しいところです。


手強い真っ赤な火星

火星 地球のお隣さんと言えば火星です。 NASAの探査機もたくさん飛んでおなじみの火星ですが、小さい惑星なので天体望遠鏡で観測するには手強い星です。

火星は約2年ごとに地球に接近します。 この時が観測好機で、それ以外の時期は見掛けの大きさが非常に小さく、 天体望遠鏡を使っても赤い丸い点にしか見えません。 火星を観測するなら地球に接近する時期を狙いましょう。

火星表面には大シルチスと呼ばれる大きな模様があります。 最接近時には、そうした模様も見やすくなりますので、天体観測にチャレンジしてみてください。 でも本音を言うと、6センチクラスで火星観測するのはちょっと辛いと思います。


一番星の金星

金星 明けの明星、宵の明星の呼び名で有名なのが金星です。 金星はマイナス4等級と非常に明るいので、空に出ていればすぐそれとわかります。 ですから昔から一番星として知られていて、自然とこの呼び名が付いたのでしょう。

そんな金星を天体望遠鏡で覗くと、月のように満ちかけてしているのがわかります。 右の画像でも半月のようですよね。 これは、金星が地球よりも内側の惑星だからです。 形と共に少しずつ見かけの大きさも変わりますから、 連続して観測しておくと貴重な観測レポートになるでしょう。 夏休みの自由研究(夏休みだけでは終わりませんが)にも適した観測対象かもしれませんね。

参考までに金星が半月状になったときが一番地球からは見やすく、この時の状態を最大離隔と言います。 紙に地球と金星の公転軌道を書いて照らしあわしてみると、その理由がわかると思います。 ご興味があれば調べてみてはいかがでしょう。


遙か遠くの天王星と海王星

天王星 6センチの天体望遠鏡でも、天王星や海王星も確認することができます。 と言ってもこの二つの外惑星あまりに遠いため、表面の模様などはわからず、パッと見ただけでは恒星と変わりない見え方です。 でも太陽系最遠の星を見るのは、気分がいいものです。 天体望遠鏡をお持ちなら、是非観測してみましょう。

天王星は6等星ぐらいの星です。 双眼鏡でも見えますので、位置を事前に調べて注意深く探せば、見つけることができます。 天体望遠鏡なら100倍以上の倍率で見ると、小さいながらも円盤状に見えてきます。 綺麗な緑色をした星で、苦労の末に見つけると感慨深いものがあります。

冥王星が惑星から外されたので、海王星は太陽系最遠の惑星になりました。 8等星と暗いので見つけるのは困難ですが、望遠鏡で見ると青っぽい星が見えてきます。 少し高い倍率で見ると、恒星とは違って瞬かないことがわかるでしょう。 それが青っぽい星なら、それが海王星に間違いありません。太陽系の果てで輝く惑星を観察してみましょう。


美しい重星

二重星 重星とは、見かけ上一つにしか見えない星が、天体望遠鏡などを使うと二つに見える星です。 その名の通り、二つの星がとても近づいているため、重なって見えている星のことです。

有名な重星としては、北斗七星を形作るミザールという星があります。 このミザールは2等星ですが、すぐ隣にアルコルという4等星の星が輝いています。 目の良い人なら肉眼でも二つの星に分かれて見えることから、古代アラビア人が視力検査に使ったと言われています。 二つの星に分解できるかどうか、チャレンジしてみましょう。

星の美しさでは、はくちょう座のβ星「アルビレオ」が有名です。 全天一美しい二重星と呼ばれ、天体望遠鏡で見るとルビーとサファイア色の星が寄り添っていて、うっとりする美しさです。 6センチの天体望遠鏡で簡単に見えますから、是非観察してみましょう。

その他にはアンドロメダ座のγ星「アルマク」が有名です。 アルビレオに勝るとも劣らない美しさで、天文ファンを魅了してくれます。 個人的には、アルマクの色合いの方がアルビレオよりも好きです。 アンドロメダ銀河が見える秋の頃になったら、アルマクを観測してみましょう。


星が集まった星団

天体望遠鏡や双眼鏡で夜空を眺めていると、夜空のあちらこちらに星がかたまるようにして輝いているのが見つかります。 このような星の固まりを「星団」と呼んでいます。

星団にはボールのように星が集まった球状星団と、星がまばらに集まった散開星団があります。 どちらも小口径の天体望遠鏡で楽しめる天体ですから、是非観測してみましょう。 なるべく星空の綺麗なところで見るのがこつです。


散開星団

ペルセウス座の二重星団 もっとも有名な散開星団は、おうし座の「すばる」です。 肉眼でもそれとわかる美しい散開星団は、平安時代の書物にも記載されているほどです。 望遠鏡の低倍率で覗くと、とても美しいですから一度は観測してみましょう。 双眼鏡で覗いても美しいすばるの姿です。

ペルセウス座の二重星団も大変美しい散開星団です。 この星団は言葉の通り、二つの散開星団が接近しています。 本当に息を飲むほど美しい姿をしていますので、望遠鏡で観望してみましょう。 場所はカシオペア座のδ星とペルセウス座のβ星の中間当たりにあります。 少しわかりづらいので、まずは双眼鏡で探してみるとよいでしょう。


球状星団

M13球状星団 北天で球状星団と言えば、ヘラクレス座のM13球状星団です。 3万個以上の星が集まった美しい球状星団で、肉眼でも存在がわかります。 天体望遠鏡の倍率を少し高めにして観望すると、星のつぶつぶがわかって綺麗でしょう。 春から夏が見頃の星団です。

その他にはあまり知られていませんが、いて座のM22星団もM13と並ぶほど美しい球状星団です。 天の川の中に位置しているので、星が背景までびっしり埋まっていて、M13より綺麗と感じる人もいます。 天の川が見える南の視界がよいところで、観望してみてください。


ガスが輝く星雲

夜空を写真に撮ると、ところどころに色鮮やかなボーッとした雲のようなものが写っていることがあります。 これは星雲と呼ばれているもので、宇宙のガスが輝いている姿です。

星雲には大きく分けて、星間ガスと呼ばれる宇宙の塵が輝く散光星雲と、 恒星が一生終えるときに放出したガスが輝いている惑星状星雲があります。 どちらも淡くて見づらい天体が多いのですが、中には小さな天体望遠鏡でも楽しめる天体があります。 下で少しご紹介してみましょう。


色鮮やかな散光星雲は難しい

オリオン座の大星雲 写真に撮ると赤色やピンク色をした色鮮やかな散光星雲ですが、天体望遠鏡を使っても肉眼で見るのは難しい天体です。 実はこうしたガス星雲は特定の波長で光っているのですが、人間の目はその波長の光をよく見ることができないからです。

でも中には非常に明るく輝いているので、肉眼でも観察できる天体もあります。 代表的な星雲は、オリオン大星雲です。 都会でも天体望遠鏡を使えば、中心部分で生まれたばかりの星々が輝く様子を見ることができます。 夜空の暗い郊外で観望すると、鳥が羽を広げたような淡いベールのような姿が表れてきます。 倍率を変えて観望すれば、見え方が違ってきてより楽しいと思います。

その他には、夏の天の川の中で輝く干潟星雲、三裂星雲も明るいので見やすい天体です。 天の川の中で輝く星団と共に、こうした星雲も忘れずに観望してみましょう。


変わった形をした惑星状星雲

亜鈴星雲 惑星状星雲という名前は、その姿が惑星のように見えることから名付けられました。 ですので、これらの星雲はボールのような形をしているものが多く、 中には木星状星雲、土星状星雲と呼ばれる星雲も実在しています。

最も有名な惑星状星雲は、亜鈴星雲と呼ばれているM27です。 この星雲は、形が鉄アレイに似ていることから名付けられました。 かなり明るい天体ですので、小さな天体望遠鏡でも十分見ることが可能です。

その他には、こと座の環状星雲M57が有名です。この星雲は非常に小さいのですが、 明るいので倍率を少し上げてみてみましょう。 倍率をあげていくと、白いドーナツ状に見えてきて興味深いです。


遠くの宇宙で浮かぶ銀河

夜空で輝く星や星団・星雲は、私たちの住む天の川銀河系の中で輝いています。 つまり遙か遠くに見える星でも、実は同じ銀河系で住む仲間というわけです。

でも宇宙は果てしなく広いですから、銀河系の外にも宇宙はずーっと広がっています。 そんな宇宙の中には、私たちの銀河系と同じような星が集まった固まりがいくつもあります。 これを系外銀河と呼んでいます。


系外銀河は春が見頃

M51銀河 系外銀河は何百万光年も離れているので、小さな望遠鏡では見えないと思いがちですが、そんなことはありません。 明るい系外銀河なら確認することができます。

といっても写真のようには見えませんので、あまり期待しすぎずに探してみましょう。 「何百万〜何千万年も前に放たれた光を今見ているんだ」と考えながら眺めていると、 ドキドキしてくるかもしれません。

まず一番有名な系外銀河は、アンドロメダ大銀河です。 これは肉眼でも見えるほどの明るさですから、双眼鏡でも余裕で確認することができます。 天体望遠鏡なら、なるべく星空の綺麗なところに出かけて、低倍率で見てみましょう。 ボンヤリと広がった雲のように見えるはずです。

その他の系外銀河は、春が見頃になります。 M81銀河やM51銀河は明るいので、小さな天体望遠鏡でも見ることができます。 星座のガイドブックを片手に、一つずつ遠くの銀河を探してみるのも楽しいものです。 春先の夜はまだ寒いですから、しっかり防寒対策をして銀河ウォッチングを楽しんでください。

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天体観測を始めたばかりの方向けに、星雲や星団の探し方から、実際の見え方までを解説している本です。 派手な天体写真を使っていない分、星雲や星団を実際に観察したときのイメージがわきやすい構成になっています。

全体の構成としてはわかりやすい書籍ですが、 星図が小さくて、全天の中での目的天体の位置関係がつかみづらいことがあります。 この本と共に星座早見盤や星図を用意しておくと、 天体観測がより楽しくなるのではないでしょうか。

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