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今月のプリント「天の川銀河」

毎月1枚のオリジナルプリント写真を取り上げて、その写真を撮った経緯などを作者がウンチク語っているページです。 天体写真を一枚撮るのは結構大変ですので、このサイトのギャラリーに載せている写真一枚一枚には作者の思い入れが 一杯詰まっています。自己満足的なページですが是非ご覧になって下さい。

今月の写真「天の川銀河」

天の川
MilkyWay Galaxy

天文ファンなら一発でわかる天の川の写真です。 一般の方も写真を見ただけでは、天の川の写真とわからないかもしれませんが、天の川の名前はご存じでしょう。 七夕の時、織り姫と彦星が渡っていくというアレです。もちろん水が流れる川ではなくて、星の集まりが 白っぽく見えているわけです。英語のMilkyWayはその白っぽい流れがミルクの流れに見えたことから 来たといわれています。

ところでこの天の川の写真、日本から撮った写真ですが、よく見ると異常に南の方が写って いることがわかります。本州だと普通はこんなに南の天体まで見えませんものねー。 実は日本と言ってもこの写真は、南の果ての島「波照間島」で撮ったんですねー。機材一式を最果ての島に 持ち込んで、まわりからよくやるよといわれても仕方がないほど大変な撮影行でした。

波照間島に向かう

天の川を日本で誰よりも綺麗に撮りたいなとずっと思っていたところ、雑誌に波照間島の写真が載ってるの を見つけました。その写真には南の天体がよく写っています。「自分が撮ればもっと撮れるだろう」に自己 中心的に思いこんで、波照間島に行ってみようとその年の3月に心に決め、その次の月には出かけていたとい うお馬鹿な写真家です。

波照間島に着いたら、星がばんばん綺麗に見えていい写真が沢山撮れるだろうと思っていたら全然晴れない。 考えたら大洋の中に浮かんだちっぽけな島で晴天率が高いはずはなく、一度目の遠征は曇りばかりで ほとんど成果と呼べる写真もなく泣く泣く帰ってきました。

再チャレンジで巡り会った最高の星空

次の年、性懲りもなくまた波照間島へ。今度こそはと昨年より1日長い日程でチャレンジ。 しかし相も変わらず昼間は晴れても夜は曇ってばっかり。嫌になっていたら現地で体調を崩してダウンして しまいました。うんうん魘されながら最後の日、沈みゆく夕空を見上げてみたらなんだか晴れそうな気配。 重い機材を背負って撮影場所へと移動して夜を待ちました。

波照間島での撮影機材 初めは雲が多かった空が夜が更けるに連れてだんだんと晴れてきます。それも晴れただけじゃなくて、すっご く透き通った夜空がそこに広がっています。元々波照間島は無光害の真っ暗な空が広がる星見には最高の環境。 それに透明度が抜群の空ときたものだから、超満天の星が夜空いっぱいに広がりました。

おぉーっと感動していると東の空からなにやら怪しげな雲が「また曇ってくるのか・・」と落胆していると なかなか雲は流れてきません。よく見るとその雲と思っていたのは天の川。天の川を初めて見ると 雲と間違るよねと天文ファンの間ではよく言います。さすがにこれだけ星を長い間見ていると今まで間違うこと はなかったのに、波照間の天の川の白さには思いっきり間違ってしまいました。

ほんとにビックリ仰天した波照間の天の川の輝き。国内最高の天の川でしょう。友達を呼んでこの感動をわけてあ げたいくらいでした。

いよいよ撮影

迫力の天の川で時間を忘れて見入ってしまったけど、ハッと気づいて撮影の準備。ここは冷静にならないと いけないと自分に言い聞かせて、はやる気持ちを抑えて一つずつ行程をチェックしながら撮影体制へ。 そしていよいよシャッターを切るときです。

このときの撮影デバイスは、ブローニー銀塩フィルムを入れたペンタックス67。波照間島での撮影は初めて なので、最適な露出時間が割り出せません。今回失敗すればもうこんな最高の条件は巡ってこないでしょう。 そのため、まずは10分露出で天の川を撮影。もちろんこのコマは捨てるつもりで撮影です。

そしてその後、3コマほどカラ撮りした後に本撮影。こちらは自分の勘で露出を設定し慎重に撮影を行います。 なんだかいつもの撮影よりドキドキします。「こんなにドキドキする撮影は今までになかったなぁ〜」と思いながら、 雄大な天の川を撮影終了まで見ていました。

薄明が始まってすべての撮影が終わり、ものすごく充実した気分になりました。大洋の向こうから昇ってくる 朝日はとても綺麗で一晩の疲れを癒してくれます。いつのまにやら体調も良くなっているのだから、都合がいい ことばかりです(笑)。

宿に帰って宿主さんにこの話してみると、そんなに綺麗な夏の天の川が見れるのは一年に数回あるかないか だとか。確かに晴天率が低い波照間島で、夏の天の川が見える新月頃にちょうど晴れるなんて滅多にないのかも しれません。

驚きの写り

自宅に帰ってきて早速フィルムをラボへ現像に出しました。まずはテスト撮影したフィルムをテストで増感現像 し、その写り具合から最適な増感度を考えて本撮影したフィルムを現像しました。 上がってきたポジフィルムは「おぉ!」と思わず唸ってしまうほどの写り具合。ポジ自体でもう作品が仕上がって しまっています。コントラストも抜群で天の川がポジの中で輝いています。 早速プロラボでスキャンしてもらって、そのフィルムとデーターを大事に持ち帰りました。

そうしてやっと仕上がったのが上の天の川の写真。撮影から仕上げまでものすごく手間がかかりましたが、 素晴らしい写り具合だと自負しています。国内では最高の写りだと思います。またいつの日か波照間島に行って、 あの時と同じ素晴らしい天の川を見ながら写真を撮りたいです。

今月のプリント天の川銀河/アンドロメダ大銀河

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