ダイオウイカ星雲

Flying Bat and Squid Nebula,Sh2-129,Ou4

ダイオウイカ星雲

Takayuki Yoshida

ダイオウイカ星雲とフライングバット星雲

Sh2-129に包み込まれるように写っている青い星雲が「ダイオウイカ星雲(Giant Squid Nebula)」や「イカ星雲(Squid Nebula)」の愛称で知られる天体です。 ダイオウイカ星雲は、2011年にフランスの天体写真愛好家によって発見された、まだ新しい星雲です。 非常に淡いので、肉眼で見ることはもちろん、通常のブロードバンド撮影で写し出すことも困難な天体です。

Sh2-129は、656nm付近の光を発しており、写真に撮ると赤く写りますが、 ダイオウイカ星雲は、波長が500nm付近の光を発し、青っぽく写ります。 500nm付近の光は市販されているデジタルカメラでもよく写りますが、 ダイオウイカ星雲は非常に淡いため、500nm付近の光だけを通して背景とのコントラストを上げる、OIIIナローバンドフィルターが必要になります。

一方、Sh2-129は、Hαナローバンドフィルターを使えば、明るく写し出すことができます。 Sh2-129は、写真に撮ると、赤く半円状に広がった姿に写ります。 その形から「フライングバット星雲(Flying Bat)」や「コウモリ星雲」と呼ばれています。

ナローバンド撮影では明るい光学系の方が有利なので、 ビクセンVSD100 F3.8にレデューサーを取り付け、F値が3の光学系で撮影を行いました。 使用したナローバンドフィルターは、HαとOIIIの光を通すChroma社の半値幅5nmです。 撮影した画像は、一旦、AOO(HOO)カラー合成の写真に仕上げた後、 他の鏡筒で撮影したRGB画像を重ね合わせて、恒星を自然な色調に調整しました。

夜空の暗い場所で、合計4時間以上、撮影しましたが、ダイオウイカ星雲の部分はノイズが多く、まだまだ露光不足のようです。 星雲を明るく滑らかに表現しようと思えば、この3倍程度の露光時間は必要だと感じました。 機会があれば撮り増しして、滑らかな作品に仕上げたいと思います。


Imaging information

撮影鏡筒:ビクセンVSD100 F3.8 レデューサー使用、ビクセンFL55SS(RGB画像)

望遠鏡架台:タカハシ EM-200 Temma2 Jr赤道儀

使用カメラ:ZWO ASI2600MM Pro 冷却CMOSカメラ

冷却CMOS用色分解フィルター:Chroma社 Hα、OIIIフィルター(半値幅:5nm)

露出時間:Hα=15分×6枚、OIII=15分×10枚、RGBはデジタル一眼レフカメラによる別撮り

画像処理ソフト:ステライメージ9、PhotoshopCC 2020

撮影場所:岡山県備前市八塔寺、2021年撮影